表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/42

難易度べりーいーじー

一応気を付けてはいますが、ちょっと読みにくいかもしれません。

 ラブちゃんのおかげで支部長さんからわたしの噂について話を聞けるようになったんだけど…


「おう、じゃあお前らが聞いた噂から話せや。こっちは機密情報だからな。最低限それが筋ってもんだろ。」

「無理に決まってるじゃないですか。分かって言ってますよね。」

「あー、クソッ!姉ちゃんマジで頭が切れるな。どうだ、うちに来ねえか?」

「行きませーん。話を逸らそうとしても無駄ですよ。」

「そーかい。割と本気だったんだがな。」


 ?なんで無理なの?どうせ話すならどっちから言っても一緒じゃないの?まあ、ただ…


「こっちを騙そうとしてる相手に筋がどうの言われてもね。ちゃんちゃらおかしいよね。」

「だ、そうですよ。私も同意見ですねー。」

「ハア〜。わーった、わーったよ。言やいいんだろ言やあよ。」


 支部長さんは、なんかすごく疲れてる感じを出してるね。そんなに言いたくないのかな?まあ、騙そうとしたのも、それだけ言いたくないってことだろうからね。一体どんな噂なんだろうね。気になる。


「さて、どっから話したもんかな。…おい、お前らは教会に行ったことがあるか。」

「教会?転職の神殿とは違うの?」

「ああ、あの神殿は職神サヴァトを祀ったものだろう。教会は、プロヴィデンス教全体の信仰のためのもんだ。」

「プロヴィデンス教、ですか。聞いたことないですね。」

「…まあ、異界の旅人ならしゃあねえか。プロヴィデンス教は、この大陸最大の宗教だ。この国でも、国民は殆どプロヴィデンス教徒だな。俺だってそうだぜ。」

「へえ〜、そうなんだね。」

「ふ〜ん。なるほどなるほど。」

「ちなみに言っとくと、職神サヴァトもプロヴィデンス教の経典に出てくる女神だぜ。かの女神のもたらすジョブは、俺達の生活になくてはならねえものになってる。あの神殿が立派なのは、それだけプロヴィデンス教の持つ民への影響力が巨大であることを示している。…まあ、知り合いの僧からの受け売りだがな。」

「そんなところじゃないかと思いました。そういうことを考えるタイプには見えませんし。」


 たしかに、そんなふうには全く見えないね。天夏ちゃんとかなら違和感ないんだろうけど。


「うるせえよ。まあ、今大切なのは、そのプロヴィデンス教の神託についてだ。」

「神託…ですか?」

「しんたく?どっかで聞いたような…?」

「どっちも詳しくは知らねえようだな。プロヴィデンス教も知らねえなら当然か。まあ、ざっくりいうとだ。神託ってのは、神からのお告げだ。プロヴィデンス教のお偉方は、そのお告げを受取る力を持ってる。いや、その力があるやつが、偉くなれるんだったか。とにかく、そんなところだ。」

「あーはいはい。そういうことでしたか。」

「んー?…あ!思い出した!昨日ここのおねえさんが、異界の旅人が来るって神託があったっていう話をしてた。」

「そうだ。その神託が今言ったプロヴィデンス教の神託だ。その神託があったのは、今から一月ほど前だな。『これより一月後に、異界よりの旅人がこの世界に来る。備えよ。』ってな。」

「思ったよりも、ざっくりだね」

「備えよって、具体的なことは一切ナシですかもしかして。」

「いや、そんときは確か、旅人がこの街の中央広場に来るってえことと、最低限のことは教えてから来させるって話が追加であったみてえだな。だから、一応あの広場の辺りはきれいにしたんだぜこれでもな。」

「うむ、すごくきれいだった」

「それは確かに。知り合いもみんなそう言ってましたしね。」

「そうかい。そりゃあ頑張ったかいがあるってもんだぜ。っと、話を戻すぞ。こっからが本題だ。一週間前、教会で新たに神託が下った。『ワンダル森林にて、次の満月の夜に呪いをその身に刻んだ、魔物を統率するものが誕生する』ってな。」

「あー、そういう話だったんですね。」

「なっとく」

「それで、そっちの兄ちゃんがその神託で示唆されたやつなんじゃねえかってのが、俺の考えだ。」

「うーん、どうなんだろうね?」

「いや、そこで私に聞かれても…」


 一応、神託の内容とわたしの体験で、明らかに食い違うところはないよね。満月の夜に森で呪い(×2)をもらっちゃったし、魔物を統率については、クロちゃんとユニちゃんがいるからね。うーん。


「ほお、否定しねえってことは、少なくとも心当たりはあるみてえだな。まあ、そんな呪いを刻んでくるやつは限られてっからな。まず間違いなくお前じゃねえかとは思っちゃあいたがな。」

「うーん?そうかな?そうかも?まあいいや。そのうち分かるよきっと」

「相変わらず、自分のことなのに軽すぎですよね。」

「だって考えてもわかんないしね。多分なんとかなるよ!」

「…アヤさんがそれでいいなら、何も言いませんが。」

「がっはっは!いいねえ!やっぱ男なら、そうやって困難に対してどん!と構えとかなくちゃあな。」

「でしょー!どん!っとね」

「うーん、まあ、いっか。後で困るのは私じゃないし。」


 支部長さんは急に大笑いし始めたけど、なんだか認めてもらったみたい?何がどうなるのかわかんないけど、きっとなんとかるよ!…きっと、たぶん。…なるといいな!


「よーし、こっちはきっちり話したぜ。次はそっちの番だ。どんな噂だったか話してもらおうか。」

「いいですよ。じゃあ、実際に話をしたアヤさんから説明してもらいますね。どうぞー。」

「ん?わたし?…うむ!そうだね。えっとね、今日の朝ね、門のところでね、私のお顔をみてね、冒険者のおじさんが、「その顔はまるで噂の…」みたいなことをね、言ってた!」

「……それだけか?」

「それだけ!」

「らしいです!あははははは!」

「はあ〜…。マジかよ…。」


 あ、支部長さんが頭を抱えてる。まあね。今回はね、相手が悪かったよね。ラブちゃんがすごく頼りになったね。


「…おい、さっきまでのお前の態度は全部ハッタリか?」

「当たり前じゃないですか。ああいうのは慣れてますからね。」

「あ〜クソッ!全然わからなかったわ畜生!なあ姉ちゃん、…」

「お断りしまーす。」

「…まだ何も言ってねえぞ。」

「どうせさっきとおんなじ内容ですよね?」

「なんで分かんだよ…」


 ねー、なんでだろうね。わたしは、ラブちゃんが支部長さんの言いたいことを全部読んでるのはわかるけど、なんで分かるのかはさっぱりだね!天夏ちゃんもそうだったけど、やっぱり超能力でも持ってるんじゃないかな。


「まあ、神託の内容は誰にもいいませんよ。それでいいんですよね?」

「…ああ、そうだな。口外厳禁だ。話すんじゃねえぞ。」

「はーい。でも、なんで言っちゃだめなの?」

「ああ、知らねえのか。プロヴィデンス教の神託が下るときってえのは、大抵大事になるときなんだよ。おまえたちがここに来るって神託も、結構な騒ぎになったからな。」

「だ、そうですよ。アヤさん。」

「おおごと…きっと、だいじょうぶ!」


 他の人に迷惑をかけないようにすれば大丈夫だよね。きっと。…よーし、あとは何が起きてもわたしが大丈夫なようにきちんと備えておけば、きっと問題ないはず。…はず!


「ただ、さっきもいったとおり、大抵大事になるが、必ずってわけじゃあねえ。お前がそうやばい考えのやつじゃねえのも分かったからな。どうせなるようにしかならねえんだからよ、気楽にやれや。」

「よくわかんないけど、とにかく今までどおり頑張っていくよ!」

「それでいいんじゃないですかね?…さてと、用事も済みましたし御暇しますか。」

「おう、報酬の受け取りを忘れんなよ。」

「はーい」


 ラブちゃんと一緒に、支部長室をあとにして来た道を戻る。うーむ、まさか神託でわたしのことを言われてたとは思わなかったね。それにしても…


「ラブちゃん超かっこよかったね!とっても頼りになったし!」

「いや〜それほどでも〜。ありますかね?」

「あるよー!きゃーかっこいー!」

「えへへへへへ。」


 うむうむ。実際、ラブちゃんがいなかったら神託のこと何もわかんなかったからね。いてくれて助かったね。


「ふふふふふ。実は、私だけの力じゃないんですけどね。」

「へ?そうなの?」

「そうなんですよ。後で説明しますね。まずは、報酬を受け取っちゃいましょうか。」

「じゃあ、楽しみにしてるよ。さーってと、報酬はどれくらいかな〜♪」


 ラブちゃんと話してたら、さっきの報告窓口まで戻ってきてたね。さあ、ようやく報酬受取だね!わくわく。


「あら〜、ちょうどよかったですね〜。そろそろ〜、様子を見に行こうかな〜って〜、思ってたんですよ〜。支部長は〜、結構短気なので〜。」

「そうなの?まあでも、別に何もなかったよ。終始穏やかだったね!」

「穏やか?あれで?まあ、口は悪かったですけど、それだけといえばそれだけでしたね。」

「それならよかったです〜。では〜、今回のウルフ討伐の〜、報酬がこちらです〜。」



報酬:30,400R



「おおー!いっぱい!これで、残金3桁から脱出だね!」

「おめでとうございまーす。いやー、私も3桁なんであやかりたいですね。」


 昨日、冒険の準備のために色々買ってたら、いつの間にかお金がかなり少なくなってたからね。これで、また新しい武器も買えるだろうし、ポーションとかもまた買い足さなきゃね。…またすぐに無くなりそう。


「では〜、この内容でよろしければ〜、こちらにサインをくださ〜い。」

「はいはーい。問題なーし!サラサラっとね」

「へえ〜、アヤさん意外と達筆ですね。」

「でしょう!」

「では〜、確かに確認しました〜。」


『報酬を受け取りました。』


 おねえさんがそういうと、アナウンスが流れたね。おお、こうやって受け取るんだね。よーし!報酬も受け取ったし冒険者ギルドでの用事は全部終わったね!


「よし!報酬はこれでバッチリだね!」

「じゃ!美味しいものを食べに行きましょうか!」

「行こう!ふふふふふ。お金もあるし、色々付き合わせちゃってるから、おごるよ」

「えっマジですか!…はっ、いやいや、そんな悪いですよー。」

「わるくないもーん。わたしがやりたいからやるだけだもーん」

「いやーそれならしかたないですねー私は遠慮したけどアヤさんがどうしてもと言うなら仕方ないですよねー。」

「そう!そのとーり!よーし、いくぞー!」

「おー!」




 やけに高いテンションでギルドを出ていく二人の冒険者を見ながら、冒険者ギルドの報酬受取カウンター内で、私は大きく伸びをした。筋肉がほぐされ、自然と口から吐息が漏れる。


 報酬受取の客は、今の二人で一旦途切れたようだ。昨日から働きずくめであったために、一昨日までの日常だったこの緩やかな時間が、ひどく懐かしいものに感じた。

 

 異界の旅人が来るという神託を聞かされたときは、一体どうなることかと思ったが、今の所はいつもの仕事が忙しくなったぐらいで済んでいる。街の整備を担当していた人は、過労や心労で日に日に体調を悪くしていったようだった。その努力の甲斐もあって、今この街はこれまでにないほど綺麗になっており、自分が見てきた中でも一番かもしれない。

 

 それに比べれば、1日2日忙しいくらいであればなんともないのかもしれないな、と思ったりもしたが、やはりそう簡単に割り切れるものではない。こちらの世界に来る際に、守護天使から冒険者登録をするように言われた異界の旅人が多かったらしく、昨日は報酬受取の業務を外れて、ひたすら冒険者登録の手続きをしていた。

 

 自分はどうも会話のテンポがゆっくり目なようで、昨日は意識して他のみんなと同じくらいの速さでしゃべるようにしていたせいで、さらに気疲れもしているようだった。そのせいで、昨日は家に帰ったら支度をしてすぐに寝てしまった。

 

 慣れないことをするものではないな、とも思ったが、そうしなければとてもではないがあの数は捌けなかっただろう。今後は、昨日ほどの忙しさは流石にないだろうが、これまでよりかは確実に忙しいはずだ。面倒なことである。

 

 そういえば、あまり異界の旅人と話をしていないな、ということに気がついた。普段は窓口に来た人と、報酬が計算される間によく話をしていたが、昨日の登録窓口ではそんな暇はなかった。混雑した時間帯を避けたのか、午後3時過ぎくらいに来たアヤさんと、少し雑談したくらいのものだろう。

 

 そんなことを考えていると、不意に頭の上から声がかかった。

 

「おう、客はいねえか。ずっとこのままでいいんだがな。」

「あ〜、おと〜さんどうしたの〜?」

 

 いつの間にか、お父さんがすぐ後ろまで来ていた。相変わらず足音が全然しないから、急に声をかけられるとちょっと驚いてしまう。そのせいで言い間違えてしまった。

 

「おい、仕事中は支部長と呼べ。」

「え〜、お客さんもいないし〜、自分もお仕事せずにこっちに来てるのに〜?」

「…それでもだ。」

「は〜い。」


 元々うっかり言い間違えただけだから、素直に言うことを聞いておく。私の言葉に少し迷うような素振りを見せたが、きっとそう言うだろうな、と思っていた。


 お父さんが、こうやってギルドの見回りに来るのはいつものことだ。椅子にじっと座ってるのが窮屈なのだろうと思う。その割に書類仕事を毎回しっかりと終わらせているのだから不思議だ。


「それで〜、アヤさんは昇格するの〜?もしかして〜、2ランク〜?」

「…何の話だ?」

「あ〜、やっぱりするんだ〜。」

「…ちっ、どいつもこいつもなんで分かんだよ…。」


 反応がわかりやすいからに決まっている。本人はこれでも上手くとぼけたつもりなのだろうが、正直なところ、腹芸は全く向いていないからやめたほうがいいと思う。


「おい、まずなんで昇格だと思った?あの部屋は防音だから、話は聞こえねえはずだぞ。」

「え〜、だって前に自分で言ったよ〜。有名になったら窮屈だったって〜。アヤさんの監視が必要だよね〜。」

「なんでこんな鋭いやつばっかなんだ?」


 お父さんは以前Aランク冒険者で、そのせいでどこに行っても皆自分を知ってるもんだから、監視されてるみたいで窮屈だったんだぞ〜、って酔っ払って話してくれたことがある。


 神託が下されたということは、大抵大事になるから、きっとお父さんは監視をつけたいはず。神託の対象が森の魔物じゃなくて、街中の人間なら尚更。でも、常に監視のために人員を割くのは効率的じゃない。ならばどうするか。


「アヤさんを有名にして〜、街の住人を〜、そのまま監視員にしちゃお〜、って作戦だよね〜。」

「……」


 噂話なんて、規制してもすぐに街中に広がるから、アヤさんが神託の対象じゃないかって話は、多分明日にはみんな知ることになるはず。そのうえで急にランクが跳ね上がれば、もう街中のみんながアヤさんの言動全てに注目して、それがまた噂という形でお父さんの知るところになるという目論見だろう。


「ハァー…。そんなに分かりやすいか俺?気ぃ付けっかぁ。」


 お父さんはそう言うと、支部長室にトボトボ引き返していった。相変わらず足音は聞こえなかった。


補足

プロヴィデンス教:多神教であり、様々な神にまつわる神話がある。


報酬受取のおねえさん:話し方は間延びしているが、頭の回転ははやい。美人で、街の冒険者から絶大な人気を誇るが、父親を怖れて口説くものは少ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ