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奴の名は

話が脱線して先に進まない……まあいいか(よくない)

「ぷは〜。落ち着くね〜」

「ホントですね〜。」

「もう復活したのか。まったく。」


 天夏ちゃんたちにいろいろと話してたけど、グダグダになったから一旦休憩中!お茶を淹れてくれるって言うから楽しみにしてたら、思ってた以上に良いお茶が出てきて超満足。


 ただ、ここまでもてなしてもらってるけど、わたしが持ってる情報がそこまでいい情報かどうか自信ないからなんか不安だね。足りないぶんは働いて返せ〜ってならないといいんだけど。


「それにしても良いお茶だね。おいしい!」

「でしょう!」

「だから何でアンタが得意げにするの?」

「なんとなくです!」

「それはもういい!まったく…」

「ふふふふ。ふたりとも仲いいね」


 なんだかんだ言ってラブちゃんに毎回反応してあげるのは、天夏ちゃんなりの優しさなのかな。そのせいでラブちゃんが止まらなくなるんだろうけど。


「うー、ごほん。ア、アヤさん。お茶が何で美味しいかでしたよね。」

「うわー、露骨に「ん?」アッ、なんでもないです気の所為でしたなのでその目はやめていただけると…。」


 ラブちゃん懲りないなあ。


「アヤさんも大概ですよ……。さて、このお茶はですね、実はβ版でゲットしたものを製品版に引き継いだものなんです。なので、現在ここ以外では多分飲めません。」

「はえー、すっごーい。よくわかんないけど、すごく貴重なんだね」

「ですです。うちのクランで農業職がいるんですけど、ソイツがお茶大好きでこれを引き継いだんですよ。畑も買って茶畑作るって息巻いてます。」

「え?このゲーム農業もできるの?知らなかったな…やんないけど」


 家の家庭菜園で十分かな。


「あらら。でも、アヤさんもそのうち自分の本拠地が必要になりますからね。最悪ほぼ土地でも用意できるのはけっこう重要ってことで、βでも畑持ってる従魔士は何人かいましたよ。ソイツらの従魔が戦い向けじゃないってのもあったんでしょうけど。」

「中には、馬の従魔に水田を耕させていた人もいましたね。運動音痴で自分は馬に乗れないからということで。」

「凄いね。本物の農家さんみたい。かなり昔のだけどね。でも、そんなに自分の土地って必要になるものなのかな?」

「ええ、実は、とても重要です。このゲームは、1パーティが6人の上限となっています。そして、従魔はパーティの枠をとるので、一度に連れていける従魔の最大数は5体となります。しかし、チュートリアルでも説明があったかと思いますが、仲間にできる従魔の数には上限が設けられていません。従魔法のレベルが上っていけば、何体でも仲間にできます。」


 ホントに?やったー!ただ、その説明はなかったね。


「それなりに辛い道のりらしいですけどね。」

「そうね。ただ、ここで重要なのが、自身の本拠地となる場所がないと、6体目以降の従魔をテイムできないということです。」

「ええっ、ホントに?初耳……」

「β版で、従魔士の一人がテイムを使用しようとしたところ、レベルが足りているにも関わらず、これ以上の従魔をテイムすることができないとアナウンスが流れたそうです。その後、自身の本拠地を手に入れたところ、またテイム可能となり、テイムした従魔は本拠地に送られたとのことでした。その方が話してくれた状況的に嘘を付く必要もなかったので、間違いないかと。」

「うーむ、そうなんだね。本拠地かー。考えてなかったなー」

「ちなみに、本拠地には土地とその土地にある家かそれに準ずる構造物が必要なようです。」

「マジですか。それは私も初耳です。あー、だからこの屋台は本拠地にできないんですね?」

「そういうこと。」

「どういうこと?」

「アヤさんは知らなくて当然なのですが、この屋台は商業ギルドに申請してあるので私たちの店舗扱いではあるのですが、ここを本拠地とすることはできないのです。なので、店としてもいくつかの機能に制限がかかっている状態なのですよ。その理由が、私たちがこの真下の土地を持っていないからです。」

「この広場の土地は国が所有してて、お金を払って商業ギルドが使用権を握ってる状態らしいですね。」

「…初耳なんだけど。ソースは?」


カゴメ!もしくはイカリ。


「昨日、酔っ払った運営がそう漏らしてました。」

「やれやれ…」

「ねえねえ、結局、本拠地が必要なのは分かったんだけど、何で畑?建物もいるんでしょ?」

「それはですね、畑のランクにもよるんですけど、農具をしまうための納屋が付いてくるんですよ。なんで、一応本拠地にできるわけです。」

「納屋か、なるほどねー」


建物があるのが大事で、そこで生活できなくてもいいってことなんだろうね。本末転倒な感じもするね。


「ですです。ただ、畑を本拠地代わりにすると、自然と農家みたいになっちゃうんで、それが耐えられないやつは最初から普通の家を狙ったほうがいいですね。」

「農家みたいに?なんで?」

「畑は農業ギルドの管轄なんですけど、土地をほったらかして荒れ放題にしておくと、ギルドから没収されるんですよ。」

「うちのメンバーがギルドに説明されたところによりますと、利用できる土地には限りがあるので、使わないのであれば返してもらう、ということらしいですね。なので、そうならないために畑で農業をすることになりますが、どうせ育てるのであれば何かしら有用なものを育てたいという方が多く、こだわっていくうちに本職顔負けの畑を作った方もいましたね。先程言った馬の従魔を連れていた方ですが。」


 まあ、馬を使って耕す必要があるくらい畑が広かったってことだろうからね。さもありなんって感じかな。


「なら、わたしはやっぱり最初っから家狙いで行こうかな。…幾らくらいするの?」

「土地の広さや建物の大きさ、造りによってピンキリですが、購入となると最低でも50万Rからですね。まあ、50万Rの家は家というよりも物置のような代物でしたが。まともな家は100万Rくらいからですかね。」

「高いね。先は長そう」

「なんで、従魔士はハードル高いって評価につながってますね。従魔への愛が試されるそうです。」


 そう言われると、必ずいい家を手に入れてやるぞー!って気になってくるよね。まあ、6体以上の従魔をテイムできるようになるのはまだまだ先だろうからね。その頃にはきっと買えるくらいお金も溜まってるよ。きっと。

 

「さて、そろそろお仕事に戻りましょうか。アヤさん、いいですか?」

「いつでもいいよ!」

「あれ?どこまで話しましたっけ?」

「アヤさんが夜の森でウルフの乱獲をしていたってところまでね。」

「あーはいはい。たしか、根切りしたかったけどできなかったって言ってましたね。」

「そう!もう少しだったんだけど、ボス犬にしてやられてね……くっ」


 しょうがないところも多かったけど、一度やるって決めたことを達成できなかったのは残念だったね。だから、次こそはきっちりやるもんね!次があればだけど。まあ、しばらくはいいや。


「先程も聞こうかと思っていたのですが、ボス犬とは一体何ですか?ウルフリーダーとはまた違うんですか?」

「あ、それ私も気になりますね。あの森にそんなボス犬っぽいのいましたっけ?」

「え?知らない?あのめちゃくちゃ見づらい風魔法をバンバン飛ばしてくる極悪狼を?」

「ウルフが風魔法を!?アヤさん、その話もう少し詳しく教えていただいてもいいですか?」


 あ、なんかデジャヴ。


「いーよー。わたしも大したことは知らないけどね」

「ありがとうございます。まずはその、ボス犬と呼んでいるモンスターの正式名称を確認したいのですが……」

「わかりません!」

「ですよねー。キャラインフォ切ってたみたいですし…」

「普通はわかるもんなの?」

「ええ、キャラインフォをオンにしておけば、敵モンスターの名前はわかるようになっています。」


 じゃあ、これからは分かるんだね。うーむ、こうなると、ホントに何で天使のおねえさんは教えてくれなかったのかな。そのせいで、けっこうわたし苦労してるよね。自分は確認大事ですよって言ってたのにね。


「あ、クラマスクラマス。もしかしたら、インフォログに残ってるかもしれないですよ。」

「確かに!アヤさん、ステータス画面の中に、これまでの行動の記録を確認できる場所があります。そこにもしかしたらそのモンスターの名前も出ているかもしれません。」

「そんな物があったんだね。知らないことだらけだね。」

「うーん。それもおかしいんですよね。チュートリアルで説明があるはずなのですが。いくら従魔に夢中だからって気が付かないとも考えにくいですね。一体なぜ?」

「まあまあ、考えてもしょうがないですよ。それよりも、ログの見方を説明したほうがいいですって。」

「そうね。アヤさん、ではまずステータス画面の………」

「ふむふむ」


 天夏ちゃんの言うとおりにステータス画面を操ることしばし、お目当てのインフォログはすぐに見つかったね。説明が上手だったからだね。一人じゃ絶対見つけらんなかったね。


 インフォログは、ゲーム内時間の何時何分にわたしがウルフを倒した。とか、クロちゃんのレベルが1上った。とかそんな感じで、起こったことが時系列順に書いてあったね。


 えーっと、ボス犬関連のログはどれかな?というか、ボス犬の名前知らないからホントにボス犬のログかどうかわかんないんじゃ……ハッ、確か、ボス犬倒してからモンスター1体も倒してないから、最後にモンスターを倒したログを探せばいいんだね。わたし、頭いい!


「アヤさん、どうでしたか。件のモンスターの名前は判明しましたか?」

「判明しました!えっとね、ボス犬が【マナ・ガルム】で赤クマが【フレイムーン・ベア】だね!」


 ボス犬改めマナ・ガルムの一つ前に倒したのが赤クマ改めフレイムーン・ベアだからね。ついでに名前が判明したね!


「……はぁ〜。アヤさん、赤クマってなんですか?さっきの話には出てこなかったですよね?それに【マナ・ガルム】も【フレイムーン・ベア】も初耳の種族なんですが……」

「あれ?いってなかったっけ?」

「私も初耳なんで、まず間違いなく言ってないですねー。」

「よし、アヤさん。森に入ってからのことを一から話してもらってもいいですか。遠回りなようですが、それが一番早く理解できるはずです。」

「お、いいですねえ。私も聞きたいです。」

「うーん、まあいいか。時間はたっぷりあるし。」


 最終的に目標達成できずに帰ってくることになったから、あんまり他人に自慢できる内容じゃないんだけど。わたしもたくさん2人に教えてもらってるからね。なのにわたしだけ言わないってのもね。ちょっとね。


 えーっと、まず森に入って、ウルフ5体が出てきたところからだね!



わたし、説明中!



「……それでね、ボス犬の喉をこうガブッてして、地面にバーンってしたら、わたしの勝ちだったね!こんな感じかな!」

「おおー!凄いじゃないですか!よく勝てましたね!ボス犬出てきたところで、私もう駄目かと思いましたよ。」

「ほんとにねー。夜にあの風魔法は反則だよね。最初のうちは半分くらい偶然避けられた感じだったもんね」

 

 いや〜、こうも褒められると悪い気はしないね。えへへ、照れる。


「アヤさん、素晴らしかったです。ただ、いくつか疑問に思ったことがあるのですが、質問をいいですか。」

「ふっふーん!いいよ!どんとこいだよ!」


 今なら超常現象でも可だよ。


「では、最初に見たときから気にはなっていたのですが、アヤさんの左顔面はそのマナ・ガルムにつけられた傷がもとで、その様になっているのですか?」

「それ、私もめっちゃ気になりますね。そんなふうになってるの始めて見たから、かなり驚きましたよ。」

「むしろ、わたしの顔ってどんなふうになってるの?この街で鏡ってどっかにあるの?みんな顔見て驚くけど、わたしは自分の顔を見れないんだよね。」

「「あー…。」」


 ふたりとも、顔を見合わせて困った空気を醸し出してるね。これは鏡ない感じだね。


「どうします?もう木桶とかでいいんじゃないですか?」

「そうね。それくらいしかないか。アヤさん、少々お待ち下さい。準備しますので。」

「はーい」


 そう言うと、天夏ちゃんがなにもない空中を指で引っ張るような仕草をした。ん?一体何を…あ!なにか出てきたね。

 

 出てきたのは空の木桶だったね。それで何をするのかなって思ってたら、いきなり木桶の中に水が溜まった。おおー、なるほどね。この木桶に溜まった水で顔を見てねってことなんだろうね。

 

「アヤさん、こんなもので申し訳ないですが、顔の状態を見るだけであれば、これでも十分わかると思います。」

「いやー、ほんと何から何までお世話になってるから、そんな申し訳無さそうにしなくても大丈夫だよ。むしろわたしが申し訳ない気持ちでいっぱいかな……」


 さてと、いざ拝顔!自分の顔を見るだけだけど。どれどれ…

補足

βからの引き継ぎ:β版の最終時に持っていたアイテム、スキルから3枠分持っていける。ただ、一部のスキルやアイテムは1つで複数の枠を取るものもある。


天使のおねえさん:一部プレイヤーへの伝達事項に問題有りとして、上位AIによる査問会の真っ最中。

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