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やっと、かけた。

 さっきまで言い争いをしていた女の子2人と一緒に、その子達がやってるらしいお店に向かうことになった。片方の子がユニちゃんを離そうとしないからね。そう言えば、まだ自己紹介もしてなかった。片方は必要ないかもしれないけど。


「一応自己紹介しておきますね。私はこの漢字で『アマナツ』といいます。そちらはアヤさん、でいいですか。」

「ええっ、なんでわたしの名前がわかるの?」


 まだわたし名乗ってないよ。ハッ、まさか超能力とか?


「んー?もしかして、キャラインフォの見方を知らないんですか?」

「『きゃらいんふぉ』ってなに?教えてほしいな。」


 天使のおねえさんは教えてくれなかったよね。もしかしたら、わたしがクロちゃんと戯れてて聞いてなかっただけかもしれないけど。……これ前にもあったね。


「そうですね。もうそろそろ私たちの店につくので、そこで落ち着いて話をしましょうか。」

「ありがとー」


 うむうむ。アマナツちゃんだったかな。すごくいい子だね。


「ねえねえ、お兄さん。その顔の模様どうなってるの?βじゃそういうの見なかったんだけど。」

「こら!他人の情報をむやみに聞くのはマナー違反だっていつも言ってるでしょ。」


 あ、そうなんだ。こういうゲームやったことないから知らなかったよ。そのへんも教えてもらえるかな。


「えー、でもやっぱり気になるじゃないですかー」

「気になるのは分かるけど、フレでもない初対面の人に聞いたら駄目でしょ!フレなら良いってもんでもないし。」


 また知らない単語が……「ふれ」ってなに?うーむ。教えてもらえると良いんだけど。


 というか、わたしの顔はホントにどうなってるのかな。話す人みんな気になるみたいだよね。わたしも気になるよ。


 そんなことを考えていると、街の中央広場にたどり着いた。1日ぶりだね。どうやら、この広場に店を出してるみたいだね。


 アマナツちゃんたちの店は、広場の北側にあったよ。店って言っても屋台みたいなものだね。店の名前は、『Die dritte Arche』?ドイツ語だね。日本語だと第三方舟かな。三番目どころか二番目があったこともないはずだけど。


 店の中に入ると、アマナツちゃんが椅子とテーブルを出してくれた。手伝おうとしたけど、お客さんだから良いですよって言われた。お金ないから、冷やかしになっちゃうけど良いのかな。


「さて、せっかくなので、ほんとになにか食べながらにしましょうか。アヤさんもどうぞ。……ここならいくら食べても太らないですからね。」

「ええっ、いいの?わたし今何も持ってないよ。」

「構いませんよ。現在進行形でご迷惑をおかけしているお詫びですので。」

「ありがとー。そういうことなら遠慮なく」


 おおー。太っぱ…雅量があるね!一瞬、スゴイ寒気がしたよ。ほんとに超能力とか持ってない?


「お、だったらわたしもうまいもの食べたいですね!ねーユニちゃん。」

「キュウ!」


 土下座の子は、ここに来るまでの間に、ユニちゃんとだいぶ仲良くなったみたいだね。良いことなんだけど……


「まったく…誰のせいでこんな事になってると……」


 アマナツちゃんは、ブツブツ言いながらも、土下座の子とユニちゃんの分まで食べるものを用意してくれるみたい。ホントにいい子だね。


「いやー、クラマス太っ腹「ふんっ!」ったー!」


 あ、自爆した。やっぱりそれが禁止ワードなんだね。土下座の子は、ついにげんこつを落とされてしまった。超痛そう。


「おまたせしました。どうぞ、大したものではないですが。」


 そう言って差し出されたのは、パンで肉や野菜を挟んだ食べ物、サンドイッチだった。食パンじゃなくて丸い黒パンを使ってるね。美味しそう。


「すご〜い!超美味しそう。いやー、このゲーム始めてから、超不味い携帯食しか食べてなかったからね。ちょっと感激。」

「大げさですよ。パンも、中の具も、そのへんの屋台で売っていたものです。なので、調理したとも言えないレベルですね。それでもスキルレベルは上がりますけど。」

「ふぁふぁふふふぁふぇふぁいふぉふぁふふぁふぃふぁふふぉ」

「ひゅう」

「ほんとにコイツは……」


 土下座の子は、既に口の中いっぱいにサンドイッチを頬張ってるね。ユニちゃんも真似して、ものすごい勢いで食べだしてる。うーむ、ほんとに仲良くなったね。


「まあ、先にお腹を満たしてしまいましょうか。そちらも遠慮せずにどうぞ。クロちゃんもね。」

「にゃあ」


 こっちも仲良くなったみたいだね。アマナツちゃんは、ええーイヤですとか言わなさそうだから安心できるね。よーし、わたしも食べよーっと。


 しばらく、サンドイッチを黙々と食べた。超!美味しい!!実際は、それなりの味なんだろうけど、比べる相手がアレだからね。アレに比べたら、何でも美味しく感じるよね。クロちゃんたちにも好評みたいだし、わたしも屋台でパンと肉を買って、作っておこうかな。


 テーブルの上にあったサンドイッチは、数分で空になったよ。いやー、もしかしたらアレがこのゲームでは普通なのかなって思ったりもしたけど、そんなことはなかったみたいで安心したね。ホントに。


「さて、腹ごしらえも済んだところで、ちょっと真面目にお話しましょうか。」

「お、その改まってる感じ似合いますね。」

「誰のせいでこの状況になってると……」


 そーいえば、土下座の子がユニちゃんを放してくれないから、ここまで来たんだったね。美味しいご飯を食べに来たんじゃなかったね。うむ。


「その前に、キャラインフォの説明をしましょうか。」

「よろしくおねがいしまーす」


 そう、なんかさっきそんなこと言ってたね。わたしの名前が分かるみたいだったし。


「キャラインフォは、その名前のとおり、他人が見ることのできるキャラクターの情報のことです。」

「そのまんまだね。何を見ることができるの?」

「基本的には、キャラクターの名前と、そのキャラがプレイヤーかそうでないかですね。」

「それだけ?」

「ええ、キャラクターの情報は、個人の財産と言っても差し支えないものですから。必要がない限りは秘密にしておくものです。」

「はえー、知らなかった。そういうものなんだね」


 あ、危なかったー。教えてもらわなかったら、うっかり他人に色々言いふらしそうだったよ。


「キャラインフォは、ゲームの設定でオンオフの切り替えができます。簡単ですよ。」

「そーなんだ。やってみよーっと」


 アマナツちゃんに教えてもらって、設定をいじってみる。キャラインフォの設定は、わたしでもわかりやすいものだったよ。これをオンにしてっと。


「あ、2人の頭の上に名前が出てる」

「ええ、それがキャラインフォです。緑色で表示されてますよね?」

「そうだね」

「緑色がプレイヤーで、青色がノンプレイヤーキャラクター、NPCと呼ばれるものになります。」

「NPCだね!覚えたよ。」


 それで、アマナツちゃんが【天夏】、土下座の子が【0-15】って出てるね。これ土下座の子はなんて読むのかな。さっきは天夏ちゃんから「ラブ」って呼ばれてたけど。


 そう思ってると、ユニちゃんと遊んでた【0-15】ちゃんが、こっちに近づいて教えてくれた。


「お!設定終わりましたか。なら自己紹介しますね。私の名前は『ラブ・フィフティーン』です。知り合いはラブって呼びますね。」

「なるほど〜、テニスだね」

「ですです。」

「わたしもラブちゃんって呼んで良いかな」

「いいですよー。」


 土下座の子はラブちゃんだね。おぼえた!


「一応この子は、杖に関してはプレイヤートップって言ってもいいくらいの職人なんですよ。β版のときの話ですけど。」

「プレイヤートップ!はえ〜、スゴイね!」

「いやあ〜、改めてそう言われると照れますね。…もっと褒めても良いんですよ?」

「きゃー!ラブちゃん、スゴイ!天才!」

「えへへへ、それほどでも〜。」

「あんまり調子に乗せすぎないでほしいんだけどなー」


 天夏ちゃんがなにかつぶやいてるけど、よく聞こえなかったね。独り言かな。


 その後、しばらくラブちゃんを褒めちぎってると、天夏ちゃんが手をパンパンとたたきながら、呆れたような様子で声をかけてきた。


「はーい、そこまで!このままだと話がいつまでも進まないから!いい加減に真面目な話をしますよ。」

「「は〜い」」

「怒られちゃいましたね。」

「ね」


 さて、せっかく天夏ちゃんが話をしてくれるみたいだから、わたしもここからは真面目な感じで行こうかな。もう怒られたくないしね。


「アヤさん。私達は、βテスターです。そして、他の知り合いのβテスター達と一緒に、クランを立ち上げました。」


 クランは知ってるよ。このゲームでの、大勢が集まったチームみたいなのをそう呼ぶって、天使のおねえさんから聞いたね。


「私達のクランの目的としては、戦闘や生産における協力ですね。みんなで力を合わせて、仲良く攻略しようというわけです。そして、もう一つ。このゲーム内での情報屋といったことを考えています。まだお客さんはいませんけど。」

「情報屋?なんで?」

「アヤさん、このゲームがβ版のときに比べて、かなり変わっているということをご存じないですか?それなりに噂になっているみたいなのですが。」


 ご存じないね!初めて聞いたよ。そもそも、わたしβ版どんなんだったか知らないしね。


「その顔は、ご存じないと言ったところですね。まあ、βテスターではないようですから、当然かも知れませんね。」


 うーむ、わたしそんなにわかりやすいかな。いや、そんなことはないはず。きっと天夏ちゃんがスゴイんだよ。うん。


「ゲーム内時間で昨日の午後0時、私はこのゲームにログインしました。その時の感動と驚きは、一言では言い表せません。肌を撫でる風。目に飛び込んでくる見知らぬ景色。耳に響く街の活気。」「鼻をくすぐる美味しそうな屋台の串焼きの匂「ふっ!」痛った!」


 また、げんこつがラブちゃんの脳天に突き刺さったね。痛そー。ラブちゃんは、この真面目な雰囲気が耐えられないんだろうね。わかる。


「とにかく、βテスターだった私たちでさえも、いえ、βテスターだった私たちからこそより驚きは大きかったと思います。」

「ですです。それはホント驚きました。」


 確かに、β版から製品版で仕様が大きく変わるなら、テストする意味ないもんね。それなら、仕様変更後にテストするべきでしょ。


「そういったこともあり、私たちはこのゲームについて、色々知りたいと思うようになりました。そこから、ゲーム内情報を取り扱う事業にも手を出していこうという選択に繋がり、情報屋をやろうということになりました。」

「なるほど〜。でも、なんでわたしにその話をしたの?」


 正直、なんとなく言いたいことは分かる気がするけどね。


「もしかすると、もう予想が付いているかもしれませんが、アヤさん、情報屋のお客さん第1号になりませんか。」


 やっぱり、そんな感じのことじゃないかなーって思ったよ。でも、なんでわたしなんだろうね。


「なんだか大事のように言ってしまいましたが、アヤさん、そう難しく考えることはありません。アヤさんはゲーム初心者のようですし、色々と知りたいことが多いですよね?」

「まあ、そうだね」

「なので、アヤさんが知りたいことについて私たちがお答えしますので、こちらもアヤさんがこのゲームでどういった冒険をしたのか聞かせてほしいのです。先程も言ったとおり、私たちはこのゲームについて、色々知りたいと考えていますので。もちろん、言いたくないことは秘密で結構ですし、売れそうな情報があった場合は、それなりの報酬を出させていただきますよ。それについても、売りたくない場合は言ってもらえばここだけの話とします。どうでしょうか。悪い話ではないと思いますが。」


 うーむ。確かに、色々教えてもらえて、その上お金までもらえるかもしれないっていうことだから、わたしにとっては渡りに船だよね。話がうますぎる気もするけど、きっとわたしの日頃の行いが良いからだよね!


「そういうことなら、お客さんになってみようかな!よろしくね!」

「はい。よろしくおねがいします。」

「おおー。ついに情報屋事業もスタートですか。私もアヤさんの話聞きたいんですけど、良いですかね。」

「わたしはいいよー」

「そうね。私だけだと見落とすこともあるかもしれないから、その方が良いかもね。でも、どういう風の吹き回し?おとなしく人の話を聞くのは苦手じゃなかった?」


「え、いやなんとなくです。なんか面白そうな話が聞けそうじゃないですか。ねーユニちゃん♡」

「キュウ?」


 うーむ。そんなに期待されても、一晩中森で狩ってただけだからね。大して面白い話ではないんだよね。まあ、いっか。私が気にすることじゃないしね。


「…まあいいか。さて、気楽に行きましょう。楽しいお話し合いを始めましょうか。」

補足

翻訳:早く食べないとなくなりますよ


クロちゃん:サンドイッチを食べて、天夏の膝の上でお休み中。

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