刺激ある国
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
門の前に、沢山の人が群がっている。
そしてその人達を門番が声を上げて整列させている。
「はい。急がないで急がないで。国は逃げませんから。」
その言葉に人達は少し怒り気味で待っている。
手にはさわれるだけで、何一つ利益を生み出さないような何かを持っていて、
それをいじっている。
しかしその中に、自分の自転車と喋っているだけの旅人もいた。
少し経つと、門番が叫んだ。
「いまから門を開けますので一人ずつお入りください〜。」
門が音を立てて開く。
すると、人達が何かをいじりながら、国の中に入っていく。
その人達につられて旅人も入っていく。
国へ一歩を踏み出そうとしたとき、
門番に呼び止められた。
「おい、嬢ちゃん。」
「……?はい?」
「嬢ちゃんは駄目だ。あいつらとは違うだろ?」
「違うとは?」
「嬢ちゃんは……あんたはあいつらと違ってこの国に入る必要がないってことだ。」
「それはどうして?」
「この国はいわゆる”刺激に飢えた奴ら”専用の国だ。」
「そう言いますとなにか刺激的な素晴らしいことがあるとかじゃですか?」
「全くの逆だ。素晴らしいものなんかじゃない、地獄だ。この国は。」
「地獄……。」
「いや、あいつらから見れば天国かもな。ともかく、嬢ちゃんがこの国に入ると苦しみ続けることになるぞ。」
門番は椅子にゆっくりと腰を下ろし、ポケットから煙草を取り出して、吸い始めた。
少し間を開けて、また話し始めた。
「あいつらは、刺激に飢えてたんだ。刺激にな。そんな奴らを救うのがこの国だ。
でも、幸福の刺激を与え続けるとどうなると思う?」
「飽きる?」
「そうだ。だが苦しみの刺激はどうなる?飽きた頃にはお陀仏さ。」
「だからこの国は苦しみを与え続けてると。」
「物わかりが早くて助かるよ。」
「具体的にどのように?」
門番は煙を吐いて、少しぼんやりと空を見上げた。
「床から常に電気が流れてんだ。そして死ぬ前に飽きないように、日に日に強さをあげてえる。そして、死んだら回収して、新しい住民を入れる。そういう国だ。」
「なるほど。」
「んまあ、だからあんたみたいな刺激のない国でも楽しめそうなやつには向いてないんだよ。逆ならいつでもウェルカムだけどな。」
また門番が煙を吐いたとき、国の中からシドが出てきた。
「みんな可笑しかったよ。でも幸せそうだったね。」
「あ、そうか。電気だから自転車のシドには効かないのか。」
「ああ、そりゃ問題だ。刺激を求める自転車やらバイクやらが来たら対応できん。改良しないとな。」
門番は笑っていた。
おそらく次に来たら電気ではなく火になっているかもしれない。
刺激に溢れている世界で、メルたちがもう一度ここに戻ることはなさそうだが。
ええ、あなた方も歓迎です。




