雨の降る洞窟で In Haruka's case
注意!
自転車が喋らないけど気にしないで!
お腹がすいた私は、近くにあったお店で昼食を食べることにした。
静かで綺麗ないいお店で。
どんな料理があるのかな。とワクワクしながらメニューを見てみる。
きのこのオムライス、美味しそう。コルタッタのハンバーグ、珍しい。
この雨降り花のシチュー、これはなんだろ?
とりあえず頼んでみるか。
「すいませ〜ん。注文したいんですけど〜。」
と、店員のお姉さんを呼び止めた。
「雨降り花のシチューですね。」
「え?なんでわかったんですか?」
「なんとなくわかるんです。それで、そのシチューなんですけど。」
「在庫切らしてるんですか?」
「はい。雨降り花が……。すいません。」
これがアニメなら“がっくり”と言ってるようにがっくりしてから、
ちょっと考えた。
「取ってこれば食べれるかな?」
「いいんですか?見た感じ旅人ですよ……ね?忙しくないんですか?」
「忙しいように見えますか?」
店員さんは少し笑ってから、提案した。
「お客さん、移動手段持ってませんよね。だからお礼に、あれを差し上げます。」
店員さんの勘が凄いなって思いながら、指された方を見た。
その先は窓の外。お店の裏の庭。そこには、少し古びた小さな二輪車があった。
「あれは……バイク?自転車?」
「さあ?わかりません。でもちゃんと動きますよ。あ、でも。」
「でも?」
「喋らないんです。」
「それって……25年ぐらい前のやつじゃないですか!いいんですか?」
「お金には困ってませんから。」
「あ、でも私操縦の仕方知らないです。」
「なら教えてあげます。あれは私があなたぐらいの時にもらったやつですから、コツは知ってるはずです。」
「え、でも──」
「忙しそうに見えますか?」
静かな店内。つまり私以外お客さんがいない店内を見渡してから、少し笑った。
そういう約束をして、私は雨降り花の生息地の洞窟へ、渡された傘を片手に向かった。
◯
その洞窟は不思議な洞窟だった。
雨が降っていた。
外は晴れているのに、洞窟の中は絶え間なく雨が降り続けている。
「なんで?」と呟いてみたけど、帰ってきた返事はザアザアという音だけだった。
これが傘を持たされた理由か。
バサっと傘を差して、雨降り花を探し始めた。
「あった!」
十数分探して、ようやくその花を見つけた。
うっすらと青く発光してるチューリップみたいな花だった。
あとはそれを摘んで帰るだけ。
──ふと、この傘を閉じたくなってみた。
びしょびしょになって広い洞窟を駆け回ったらどれだけ気持ちがいいんだろ。
そう考えてるうちに、傘を放って走り回ってた。
頭から雨を浴びて、鼻歌を歌いながら、走り回った。
帰ってから、これから長い間お世話になる店員さんに心配されることも考えないで。
人が変われば、場所も変わる。




