あとがき
注意!
自転車が喋らないけど気にしないで!
あとがき
「あっという間だった」と言ってしまえば嘘になりますし、「長かった」と言ってしまっても、どこか違う気がします。
暑い日が続いていますが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。
厳しい暑さの中でも、少しでも文学の世界を楽しんでいただけていたなら嬉しく思います。
さて、第二期は十三話をもって幕を閉じました。
ですが、メルとシド、そしてハルカの旅は、まだ終わりません。
第三期は10月、『ドーナッツの穴』の完結後に投稿を開始する予定です。
「では、8月はどうなるの?」と思われた方もいるかもしれません。
ご安心ください。
8月は、ほぼ毎日、とても短い作品を投稿する予定です。
また、『ドーナッツの穴』は設定を一から見直し、物語も第一話から書き直しました。
そのため、初めて読む方はもちろん、以前読んでくださった方にも、新鮮な気持ちで楽しんでいただけると思います。
それでは、また次の旅でお会いしましょう。
その旅は今までより物語に近くなっているかもしれません。
じゃあ、またね。
おまけ
シドが初めて見た光景は、自分とは違った自転車が並べられた空間で、1人の人間が何かをしていたところだった。
命を吹き込まれた瞬間だったのか、はたまた……いや、それぐらいしか思いつかなかった。
まあ別にそれを考える必要はない。と、当時のシドは考えていた。
その人間が何かをし終えると、シドは箱に詰められて、大型の貨物車に乗せられた。
外からは色々な話し声が聞こえてきた。
色々と怪しさ満点の会話だったり、何かしらの儀式みたいな呪文みたいな声だったり、はたまた何かの叫び声だったり。
聞き耳を立てていると、貨物車が発車した。
ガタガタと動く振動が伝わってきた。
……。
暇だからちょっと何かを言ってみるか、とシド考えたし、声に出した。
すると、何やら返事が返ってきた。
「わたくしの他に誰かいるの?」
その声は、人の様だけど、少し違う。
自転車だからだろうか、その声の持ち主は同じ自転車だとすぐにわかった。
「いるよ。ここに。」
「あなたは……人間ですの?」
「自転車だよ。」
「そうですの。」
……少しの沈黙が流れた。
「わたくしは、どこからどこに行くのかしら。」
「さあ?変な声が聞こえてきたし、カルト教団かなんかじゃない?どこに行くかはわからないけど。」
「カルト教団……シリカ教かしら?」
「わかんない。と言うか生まれたばかりなのによく流行ってる教団の名前を言えたね。」
「それはあなたもじゃなくって?」
キィ───っと、貨物車の止まる音が聞こえた。
「誰か下ろされるのかな。」
「わたくしかあなた以外にいるのかしら?」
また貨物車が動き出した。
「おそらくいたんだろうね。」
「なんだかソワソワしますわ。いつ下ろされるのか、わからないんですもの。」
「じゃあどっちか先に下ろされるか勝負しよ。」
「望むところですわ!」
そこから、勝負の雰囲気が流れたが、あまりにも貨物車が止まらないので、くたびれて緩く会話をし始めた。
◯
キィ────っと、貨物車が急ブレーキを踏んだ音がした。
「何かしら?」
「ちょっと!わたくしの喋り方を真似しないでくださる?」
「ごめんごめん。でもなんだろ。」
「さあ?わからない。」
「おあいこってやつ?」
「そうですわ。」
戦う音と、悲鳴と、ガシャンと扉が乱暴に開いた音がした。
盗賊か何かが貨物車を襲ったのか。
乱暴に歩く音もした。
少し経った。
再び、貨物車が走り出した。
襲われた人は死んでいなかったらしい。
「なんだったんだろうね。今の。」
返ってくる音は、しなかった。




