珈琲の味
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
とある、一つの国で。
二人の付き合った男女がいた。
ある時女は子を授かった。
そして男は別の女と逃げた。
女は泣いた。
しかし、子を産むことを選んだ。
双子が生まれた。
双子にはそれぞれ名前がつけられた。
お姉様は、流行りの宗教の神様の名前、シリカ。
私は、それを少し捩って、そして生まれた季節になんで、ハルカ。
そうやって名前をつけられた双子は、
お母さんからいろいろなことを教わって育っていった。
そして、双子が5つになった時、病気を患って死んでいった。
それまでは、「シリカお姉ちゃん」と、名前で呼んでいた私は、
お姉様からの命令で、「お姉様」と呼ぶようになっていった。
まさに、生死を賭ける生活が続いた。
最初の方は盗みを働くだけだった。
お姉様が私に指示を出して、現場で私が食べ物だったりお金だったりを盗んだりする。
そうやって繰り返して日々を暮らしていた。
そんな暮らし、とても──
幸せだった。
誰かから指示されるのは悪くなかったし、
あの料理本を見て料理するのも楽しかったし、
あと、それ以上の幸せを感じたことがなかったからかな……?
別にお母さんは優しかったわけではなかったし。
まあそんな生活をし続けていた頃。
東方の国から色々な便利な物が輸入された。
監視カメラとか、金庫とか。
そのせいで盗みをしづらくなって、どんどん生活は苦しくなった。
その時のお姉様の提案が、家の中で盗みをすること。
適当な旅人を連れてきて、料理とかでもてなして油断させる。
そして寝てる間に盗みを行う。
そうすれば監視カメラにも映らないし、誰にも気づかれない。
旅人が盗まれたことに気がついた頃には、もう遅い。
お姉様は自分で完璧な作戦だと豪語してたし、案外上手く行った。
そうして元の生活を取り戻していくうちに、お姉様は足りないと思うようになった。
盗める物も少ないし、お金とか直接取ってしまうと怪しまれる。
怪しまれるならどうすればいい?
そう、旅人を殺すこと。
旅人の荷物は全部私の物になるし、旅人なんだから怪しむ人もいない。
お姉様はそうやって話した。
でも、私は上手く殺すことができなかった。
お姉様ほど知識がなかったから。
だから、殺すときだけお姉様がすり替わった。
見た目がほとんど一緒だから、バレることもなかった。
優しい私が、ただただ夜に部屋に入ってきただけ。
すっかり油断している旅人はお姉様に刺されてコロリ。
そこから1日2食も食べられる生活が始まった。
そのあと、10人ぐらい旅人が殺された頃だったかな。
20?30?……途中から数えてない。
その時メルっていう旅人が現れて。
すっごく優しかった。
だからかな?この人は殺されたくないって思っちゃった。
それに、メルさんが話してくれたおかしな国々の話を聞いて、自分も旅に出ようかなとも思った。
……今の所あんまり楽しいとはいえないけどね。
しょっぱい食べ物を食べる家族に出会ったり、人肉が作られてる国だったり。
一番最近だと……有名な教団の偉い人に出会ったり。あ、これはメルさんも知ってるか。
◯
「まあそんなところです。」
「へぇ〜。」
「シド?せっかくハルカに再開して、昔の話を聞かせてもらったのに一言で済ますのは良くないよ?」
「いえいえ、メルさんに出会えただけでも嬉しいですし、大丈夫です!」
今は、メルさんとカフェでゆっくりしてるところ。
「でさ、ちょっといい?」
「はい!なんですか?メルさん。」
「ハルカに入れてもらった珈琲、入れた人の過去の出来事の苦さで味が変わる珍しいやつで、話を聞いてる限りブラックになると思ったんだけど……。」
「はい。」
「蜂蜜ぐらい甘いんだけど?」
少しだけ、後の話です。




