規制された国
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
「やっとだよ……。」
「ごめんごめん。でも読み終わっておこうって思ってさ。」
「それはどうして?」
「この国で売るため。」
「なるほどとはならないよ。」
そんな会話をしながら、メルとシドは入国審査へ向かった。
「だぁめだよこんな本!」
「え?」
入国審査で引っかかった理由は、その本が原因だった。
「さっきまでの時間はなんだったんだろう。」
と、シドは愚痴を言った。
本を預けて、国の中をメルが手でシドを押しながら歩いている。
「それにしてもなんでメルの持ってた本はダメだったんだろう?」
「わからないけど……私が持ってた本以外もダメそうだったよ。」
「ふぅん。例えば?」
「エッセイとかね。」
「それまたどうしてだろ。」
「さあ?でも、今向かってるところに行けば教えてもらえるかもね。」
「どこに向かってるんだっけ。」
「本屋。」
「あ〜あの人が面白い光景が見れるって言ってたからか。」
「そう。」
もう少し歩くと、本屋が見えてみた。
「ボロボロだね。」
「事実でも言っていいことと悪いことがあるんだよシド。事実でも。」
「本心は?」
「ボロボロだね。」
そのボロボロな本屋に入ると、虚ろな目をした店主が出迎えてくれた。
「ぃ……しゃ…い…。」
その一言を言い終わると、店主の女性はばたりと倒れた。
「死んだ?」
「だから。シド?」
珍しく水と食べ物をあげたメルは、大感謝されることになった。
「いや〜ありがとうございます!死ぬと思いました!」
「あれは死んでるのと同じじゃない?」
と、シドが言おうとしたが、メルに遮られた。
「なんで倒れてたんですか?」
落ち着いた店主は言った。
「本が全然売れなくて……。」
「売れていない?本棚はスカスカですけど。」
「あれは売れたんじゃなくて、奪われたんです。」
「強盗?」と、うろうろしていたシド。
「いいえ。政府に没収されたんです。」
「没収ですか。」
「はい。先月法律が制定されて。あなたたちも国に入るときに本の一つや二つ没収されたのでは?」
「確かに没収されましたね。」
すると、店の中を一通りみたシドが言った。
「有名どころの本が色々となくなってたけど、どういう理由で禁止されたか聞いても?」
「いいですよ。」
「じゃあ一つ目は……土偶モン。」
「土偶道具ってのが妄想を働かせすぎるから。」
「アウンシュタインの伝記。」
「未来へ希望を持ちすぎて現実を見てられない人が増えるから。」
「キノコの旅。」
「普通にグロいから。」
「シリカ教聖書。」
「あ、それは大丈夫。ここにないだけ。」
「クレオンシンジャ。」
「下品だって声が相次いだから。」
「政府の仕組み 東地方編。」
「国民が政府に疑問を持ちそうだったから。」
それから、幾つもの有名な小説や漫画をシドが言って、ダメな理由を店主が言ってを繰り返した。二時間くらい。
その間、「これぐらいはいいだろう」との理由で許されていた、「国王の伝記」をメルは読んでいた。
本が規制されたのは、誰かのせいではありません。




