第54話 語られる過去
数十分後、ネオラ侯爵に呼ばれたアリヤたちは謁見室にいた。
「では、此度の戦の詳細を説明してもらおうかの」
「では、私から」
ケセフが手を挙げ、これまでの経緯を説明した。
ネオラ侯爵は時折頷きながら、最後まで黙って話を聞いていた。
「ふむ……。正直、その娘の正体がこの時点で露見してしまったのは痛手じゃ。……だが、ようやく神のパシリどもを引きずり出せたというわけか」
そう言って、ネオラ侯爵は嬉しそうにニヤリと笑った。
「侯爵様は、こうなることを予想していたということですか?」
「帝国に教会が介入している以上、帝国だけを叩いても頭がすげ替わるだけじゃ。同じことの繰り返しよ。根本から変えるには、大元を叩く必要がある」
ネオラ侯爵はそう言うと、サイドテーブルのティーカップに手を伸ばした。
「……そのために我々を利用したと?」
ケセフが問いかける。
ネオラ侯爵はティーカップ越しにチラリとケセフを見た。
「……まあ、貴様らは多少なりとも余の期待に応えてくれたからな」
その問いには直接答えず、ネオラ侯爵は話を続ける。
「……そろそろエリオル殿に会わせてやろう」
「っ! 本当ですか!?」
ネオラ侯爵はニヤリと笑い、頷いた。
そしてパンパンと二度手を叩き、執事を呼ぶ。
「エリオル殿をここへ連れてまいれ」
執事は静かに一礼し、謁見室を後にした。
数分後、執事に連れられ、エリオルが謁見室へ入ってきた。
数週間ぶりに見るエリオルは、貴族が着るような上等な服を身にまとっており、健康状態も悪くなさそうだった。
「エリオル!」
「みんなっ!!」
エリオルはアリヤたちを見るなり顔を輝かせ、駆け寄ってきた。
*****
「感動の再会を邪魔して悪いが……話を続けてもよいかの?」
しばらく僕らの様子を見守っていたネオラが口を開いた。
「単刀直入に聞こう。……貴様、マラアフと関係があるのか?」
ネオラは真っ直ぐダンを見据えた。
「騎士から報告が上がっておる。どうやら貴様は、あのマラアフの騎士と面識がありそうだとな」
ダンは気まずそうに視線を逸らした。
「……どういうこと? 一体何があったの?」
状況が飲み込めない僕は皆に尋ねる。
すると、ケセフさんが僕がレヴナ公国へ連れて来られてから今までの出来事を簡単に説明してくれた。
「そんなことが……」
「……人間、生きていれば言いたくないことの一つや二つはあるじゃろう。だが、マラアフのこととなれば話は別じゃ。敵の情報は、たとえ些細なことでも多いに越したことはない。悪いが話してもらおうか」
だが、ダンは俯いたまま黙っている。
「……これは命令じゃ」
見かねたネオラが鋭い目でダンを見据えながら言った。
やがて、ダンは観念したように重いため息をついた。
「はぁ……わかった。……わかりました」
ダンが顔を上げ、ネオラを見る。
「ただ、聞いたところで役に立つ情報じゃありませんよ」
「それでも構わん」
ダンはもう一度ため息をついた。そして、重く暗い声で語り始める。
「……アイツの名前はラハム。十年前、俺がまだ聖エハド教会の騎士だった頃の同期だ」




