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最果てのアリヤ  作者: 霜月兎灯
レヴナ公国編
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第51話 初陣

 ネオラ侯爵の任務を受け、アリヤ、ダン、ケセフの三人はレヴナ公国の騎士たちと共に馬車で、公国領と帝国領の境にある村へ向かっていた。

 馬車に揺られる間、三人は騎士たちから様々な視線を浴びた。興味本位のものがほとんどだったが、中には訝しむような視線や、わずかに敵意を含んだ視線もあった。


「ついたぞ」


 半日揺られたのち、馬車が止まり、公国騎士団の副団長だという男‘’ギボル‘’がぶっきらぼうに告げた。今回の帝国軍討伐隊の指揮官はこの男らしい。


 三人が馬車を降りると、目の前の光景に絶句した。


 かつては田畑が広がるのどかな村だったのだろう。しかし田畑は無残に荒らされ、家々はすべて焼け落ちて崩れていた。

 そこら一面には村人の遺体が転がっている。切り刻まれた者、焼け焦げて性別も判別できない者――惨状は言葉を失わせるほどだった。


 村が蹂躙されてから時間が経っているのだろう。空にはカラスの群れが飛び交い、ギャアギャアと騒ぎ立てている。

 血と煙の匂いが鼻を突き、吐き気を催した。


「……間に合わなかったか」


 ギボル副団長がぽつりと呟く。


「ひでぇことしやがる」


「異端者への制裁という名目の、ただの虐殺……これじゃあどちらが“悪魔”かわかりませんね」


 ダンとケセフが顔をしかめる。

 アリヤは無表情のまま、ただ村を見つめていた。


「まだ近くに残党がいるかもしれん。第一中隊は付近の捜索。第二、第三中隊は生存者の確認と遺体の弔いにあたれ」


「「はっ!」」


 号令と共に騎士たちが動き出す。

 三人も生存者を探したが、残念ながら全員亡くなっていた。その後は騎士たちと共に弔いにあたった。


 日が暮れる頃、周囲を哨戒していた騎士たちが戻ってきた。ひとつ山を越えた先に帝国軍の野営地を発見したという。

 報告を受けたギボル副団長は、夜陰に紛れて奇襲する決断を下し、すぐに準備に移った。


 体制を整え、帝国軍の野営地を見下ろす丘に陣を構えた公国軍は、暗闇に紛れて様子を窺った。


「こちらは大隊規模。対してあちらは中隊規模か……」


 斥候の報告を聞いた副団長は、全騎士を集めた。


「奴らと我が軍の兵力差は歴然!命を冒涜し、教会の名を汚す蛮族に鉄槌を!どちらが“異端”であるか、今こそ思い知らせてやれ!!」


「「おーっ!!」」


 騎士たちが一斉に剣を掲げる。


 ダンとケセフは奇襲組に加わり、アリヤは少数の騎士と共に陣営の守りについた。


 体制が整い、ギボル副団長の合図を待つ。


「かかれーっ!!!」


 合図と共に騎士たちが丘を駆け降りる。地響きのような音が暗闇に響く。

 その様子を見ていたアリヤは、他の騎士に気取られぬよう物陰へ移動した。


「ネシャル・ルアフ。風よ、夜を裂き、駆け抜けろ」


 呪文を唱えると、丘の上から強い風が吹き降りた。風は騎士たちを追い抜き、帝国軍の野営地に到達すると、かがり火を一瞬で消し去った。


 視界を奪われた帝国軍は混乱し、怒号が飛び交う。

 その間に公国騎士団が野営地へ突入した。


――決着は、あっという間だった。


 帝国軍は壊滅。数名の騎士を捕虜として捕縛し、公国軍は陣営へ戻ってきた。


「……ダン……ケセフ……それ……」


 戻ってきた二人を見たアリヤが固まる。


「……返り血だ。俺たちは大丈夫」


 二人の顔や服には赤黒い血がこびりついていた。

 ダンの言葉を聞いたアリヤは、ホッと小さなため息をついた。


「アリヤさんもナイスサポートでした」


「……別に。二人が戦ってるのに、わたしだけ何もしないわけにはいかないでしょ」


 アリヤは俯き、左腕を右手でぎゅっと掴んだ。


「……でも……あまり気分の良いものではないわね」


 ダンとケセフは煙の上がる野営地跡を見つめた。


「……そうだな」

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