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最果てのアリヤ  作者: 霜月兎灯
レヴナ公国編
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第49話 公国の主

 アリヤ、ダン、ケセフの三人は、レヴナ公国の門の前に立っていた。

 三人が近づいてくるのに気づいた門兵が槍で入り口を封じる。


「貴様ら、何者だ」


 ダンがアリヤの見つけた矢文を取り出し、門兵に向かって広げて見せた。


「!?」


 それを見た門兵は隣の兵と顔を見合わせた。


「……通りを真っ直ぐ行くと、侯爵の城館がございます。そちらまでお進みください」


 門兵はそれだけ告げ、槍を退けた。


 三人は言われた通りメイン通りを進む。川を挟んだ小高い丘の上に、こじんまりとしているが砦と塀で囲まれた堅牢な城館が見えてきた。


 橋を渡り城館の入り口に着くと、黒の上衣に白い襞襟と袖口を合わせた礼装姿の男が立っていた。髪は白く、長い顎髭を蓄えた年配の男だ。


「……お待ちしておりました。私はこの城館の執事でございます。侯爵様がお待ちです。こちらへどうぞ」


 執事に案内され城館の中へ進む。内部には鎧を着た騎士たちが多く、物々しい雰囲気が漂っていた。


「……こちらでございます」


 案内されたのは最上階の一番奥の部屋だった。

 部屋は質素だが、奥に豪華な椅子が置かれている。


 その椅子に、あどけない顔をした小さな少年がちょこんと座っていた。足を組み、肘置きに頬杖をついているが、足は床に届いていない。


「よう来たな、貴様ら」


 少年は、まだ声変わりしていない高い声で言った。


「……どうした、ポカーンとして」


 固まっている三人に、少年が不思議そうに首を傾げる。

 ダンがハッとして矢文を取り出し、少年に突きつけた。手紙にはこう書かれている。


“エリオル殿の身柄は預かった。返してほしければ、レヴナ公国まで来い。我が居城で待っている。“


 最後にはレヴナ公国の紋章が押されていた。


「……お前がこのふざけた手紙の差出人か!」


 ダンが怒鳴ると、少年はニヤリと笑った。


「いかにも。余がレヴナ公国を治める領主、ネオラである!」


 少年――ネオラ侯爵は胸を張って名乗った。


「……なんじゃその目は。何が不満じゃ」


 三人は怪訝そうな目でネオラ侯爵を見ていた。


「どんな奴が出てくるのかと思えば……こんなガキが侯爵だって?」


 呆れたようにダンが言うと、ネオラ侯爵はムッと頬を膨らませた。


「ガキで悪かったな。……だが、貴様の言うそのガキが、貴様らの大事な仲間の命を握っていることを忘れるなよ?」


 鋭い目で睨むネオラ侯爵。その目は少年とは思えない威圧感を帯びていた。


「言われた通りここに来ました。エリオルを返してもらいましょうか」


 ケセフが一歩前に出る。


「まあそう慌てるでない。まずは落ち着いて話でもしようじゃないか」


 ネオラ侯爵はパンパンと手を二度叩いた。

 すると、どこからともなくメイドや執事が現れ、目にも止まらぬ手際で三人の前に椅子とテーブル、そしてお茶と菓子を並べていく。ネオラ侯爵の横にも同じように用意された。


「さっ、かけたまえ」


 ネオラ侯爵は優雅にお茶を啜った。


「……どうした?毒など入っておらんぞ?不安なら毒味をさせるか?」


 動かない三人に、ネオラ侯爵が軽い調子で声をかける。

 思っていたよりもゆるい雰囲気に、三人の調子が狂う。


「……いやいや、エリオルを返してもらうのが先だ」


 ダンが緊張感のない空気を振り払うように首をブンブン振って言い返す。


「慌てるなと言っておろう。エリオル殿は貴様らを呼ぶための人質でもあるが、余の客人でもある。檻に閉じ込めたり、痛めつけたりはしておらん。安心せい」


 三人は顔を見合わせ、しぶしぶ席に座った。


 こうして、三人とネオラ侯爵の奇妙なお茶会が始まった。 

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