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最果てのアリヤ  作者: 霜月兎灯
シェレト王国編
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第23話 国の総意

「カ、カイさん!……これは一体!?」


 カイさんを先頭に、大勢の人々が城の前へ押し寄せてきた。老若男女、様々な人たちがしっかりとした足取りでこちらへ向かってくる。


「カ……カイ。あなたには……みなの護衛を……任せたはず……」


 ケセフさんが掠れた声で言う。痛みで顔が青ざめている。


 カイさんはそんなケセフさんを見て、眉を下げながらも優しく微笑んだ。


「団長が……皆さんが戦ってるのに、俺だけ見てるわけにはいかないでしょう。……それに、そう思ってるのは俺だけじゃないですよ」


 そう言って、カイさんは後ろを振り返った。


「そうですよ。言ったでしょう、俺たちも戦うって!」


「この国を変えるのは、私たちです!」


 隠れ家で共に過ごしてきた仲間たちが、胸を張って立っていた。

 もう誰一人として、あの日のような絶望の顔はしていない。


「か……母様! ご無事だったのですね!」


 オレフがカイさんの隣にいた女性へ駆け寄る。


「で、でもどうして……」


「皆さんと別れてから、俺はすぐに動きました。隠れ家の皆さんと手分けして、城に集まるよう呼びかけたんです。その途中で、怪しい一団がこのご婦人を連れ去ろうとしているのを見つけましてね。僕が颯爽とお助け差し上げました!」


 カイさんが胸を張って言う。


「そうか……君が……」


 オレフはそれだけ言うと、母親の前で膝から崩れ落ちた。


「……でも、どうして? どうやってみなさんを?」


 僕はカイさんに尋ねた。

 あれほど呼びかけても、僕らは“恐怖”に勝てなかった。それなのに、どうしてこれほどの人が……?


 カイさんはゆっくり首を振った。


「俺は何もしていません。ただ、皆さんの背中を押しただけです」


 少し間を置き、続ける。


「皆さんは、僕らの行動をちゃんと見ていたんです。……どれだけ無茶でも、どれだけ傷つけられても、それでもこの国のために抗おうとする、団長の……皆さんの姿を」


「……そして学んだのです。どれだけ小さくとも、声を上げることを忘れなければ……必ず届くと」


 オレフの母親が静かに言った。


 カイさんは城の頂に立つカヴォド王を見上げ、ゆっくりと指を突きつけた。


「これが! これがお前が散々コケにしてきた国民の総意だ!この国は、ここにいるみんなの国だ! お前はこの国の王に相応しくない! さっさとその似合わない冠を返上しろっ!!」


「「そうだ!!」」


 民衆の叫びが響き渡る。


「……はっ! 何が総意だ! これだけの人数でこの国の総意とは笑わせる!」


 カヴォド王はそれでもまだ、余裕の笑みを浮かべていた。


「……やっぱりお前はこの国の王に相応しくないな」


「なんだと?」


「周りを見てみろっ!! 前も、後ろも、横も! お前に、もう逃げ道なんてありはしない!」


「なにっ!?」


 カヴォド王はキョロキョロと周囲を見渡す。すると、その顔からは余裕が消え、みるみるうちに焦りへと変わっていく。


「カイさん、どういうことですか?」


 僕が尋ねると、カイさんは誇らしげに言った。


「言ったでしょう、この国の総意だって。その言葉通り――この城はシェレト王国の全国民で包囲している!」


 キョロキョロとしていたカヴォド王が、自分の置かれた状況を理解したのか、再びこちらを見下ろした。


 そしてーー


「……クソがーーーっ!!!」


 最後にそう絶叫すると、カヴォド王は城の中へと逃げ込んだ。

 その瞬間、オレフが立ち上がり、騎士団へ号令を飛ばす。


「騎士団に告ぐっ! 国を虐げた愚か者を捕らえよ! 絶対に逃すなっ!!」


「「おぉぉぉっ!!!」」


 騎士団が一斉に回れ右をし、地響きを立てて城へ駆け込んでいく。


 その後ーー


 カヴォド王は城の抜け道から逃げようとしていたところを、あっけなく騎士団に捕らえられた。

 捕まった時、王のそばに立つ者は誰一人いなかったという。


 そして、思いがけず始まったこの革命は、カヴォド王の投獄をもって幕を閉じた。

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