第19話 次の作戦
街で大立ち回りをした二日後、僕らは街の様子を見に行くことになった。
今回の目的は、あの騒動が作戦に悪影響を与えていないか確認するためだ。兄妹を護るためとはいえ、今の時期に作戦が頓挫するような事態は避けたい。
街へ向かうのはアリヤと数名。僕とダンは、何かあったときに備えて街の外で待機することになった。
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お昼頃にアリヤたちは街へ向かい、三時間ほどで戻ってきた。
「それで……状況はどうだった?」
不安で落ち着かなかった僕は、戻ってきたアリヤにすぐ尋ねた。
するとアリヤは、珍しくにっこりと笑った。
「状況は、想像を遥かに超えて良くなってる。詳しいことは、隠れ家に戻ってから話すわ」
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隠れ家に戻った僕らは、すぐに状況報告と作戦会議を始めた。
「街に入って最初に気づいたのは、通りを歩く騎士の数が圧倒的に減っていたことね」
「騎士の数が減ってるだって?!」
僕は思わず声を上げた。あんな騒ぎを起こした以上、警備が強化されていると思っていた。それなのに逆に手薄になっているなんて、どういうことだ?
「私たちも不思議に思ったわ。でも、街の人たちの様子を見てすぐに理由が分かった」
アリヤは少し間を置いてから続けた。
「二日前の行動が、功を奏したみたい」
「どういうことだ?」
ダンが眉をひそめて尋ねる。
「私たちが流した噂は広まっていたけど、本気で信じていた人は少なかったみたい。……でも、あの騒ぎで状況が変わった。理不尽な暴力に晒されていた子どもたちを護った姿を見たことで、噂の信憑性が一気に高まったのよ」
部屋の中がざわつく。
「街の人たちは“噂は本当だった。救世主が現れた”って口々に話していたわ」
「まさか、ここに来て運が味方してくれるとはな」
ダンは笑ったが、まだ信じられないという顔だった。
「運なんかではありませんよ」
ケセフさんが静かに言った。部屋がまた静まる。
「あなたたちが正義を貫いたからこそ、民衆の心が動いたんです」
「……僕たちは、ただ僕たちのしたいように動いただけです」
僕は照れくさくなって視線を逸らした。
「エリオルの言う通りだ。それに、俺たちだけじゃここまで来れなかった。ここにいるみんなの頑張りが、報われたんだ」
「……感傷に浸るのはまだ早いわ。私たちはきっかけを掴んだだけで、まだ何も成し遂げていないんだから」
アリヤの言葉で、熱を帯びた空気が一気に引き締まる。
「騎士の数が減っていたのは、街の人たちが騎士に対して強気に出るようになっていたから。理不尽な連行に抵抗する人も出てきている。騎士団の力は確実に弱まっているわ。……でも、この状況が続くとは限らない。強引に検挙に乗り出されたら、市民なんてひとたまりもない」
ケセフさんが頷く。
「チャンスは今しかありません。一般市民の反抗心をさらに高めつつ、短期間で王を叩く。それしか方法はないでしょう」
「でも、そんなことどうやって?」
僕は思わず口に出していた。
「今までは隠れて行動していましたが、ここからは自ら“革命隊”だと名乗り出ます」
「危険すぎるんじゃ……」
カイさんが不安そうに言う。
「確かに危険です。でも、いつまでも隠れていても状況は変わりません」
ケセフさんは続けた。
「姿を晒して活動すれば、民衆の期待はさらに私たちに集まる。そして革命隊への賛同を呼びかける。……もちろん騎士団も黙ってはいないでしょうが、そこはヒットアンドアウェイで対応します。王や騎士団の目が私たちに向いている限り、民衆に危険は及びません」
そして、ケセフさんは言い切った。
「そして、革命の流れが最高潮に達したところで、デモを行います」
部屋がざわつく。誰かが「そんなこと、本当にできるのか!?」と声をあげた。
「できます!……というか、やるしかないんです!」
ケセフさんの声は揺るがなかった。
「騎士団の戦意を喪失させるには、国民の声を集めるしかない。大規模なデモで騎士団を無力化できれば、王を引きずり出すのは容易い」
恐怖と期待が入り混じった空気が漂う。
「腹ぁ括れ! どのみち、もう戻れねえとこまで来ちまったんだ。残された道はただ一つ、この作戦を成功させるだけだ!」
ダンの声が部屋を震わせた。
その力強い声は、不思議と“できる”と思わせてくれる力があった。
部屋の空気が一気にまとまった。あちこちから「やろう」「できる」と自分たちを鼓舞する声が上がる。
僕はその声を聞きながら、拳を力強く握りしめた。




