第16話 響く剣戟
調査を終えた翌日、いよいよ僕らは城下町での噂流しを開始した。
騎士団の巡回の目を掻い潜るため、僕らは二手に分かれて行動することになり、僕とアリヤの班と、ダンの班に分かれた。
ダンは、僕とアリヤと離れるのが心配で、最後まで反対していた。
「本当に、お前たちだけで大丈夫か?」
「大丈夫だよ。住民の皆さんもいるし、僕だって少しは戦えるんだから。アリヤのことも、僕が護ってみせるよ」
胸を張って言うと、アリヤが横で小さく笑った。
「安心して、ダン。何かあった時は私が前に出るわ」
「おう。それは安心だな」
「酷いよ二人とも! 僕は役に立たないって言いたいの!?」
僕が抗議すると、みんなが声を上げて笑った。確かに僕は弱いけど、そんな言い方しなくてもいいじゃないか。
むくれていると、ダンが僕の頭にぽんっと手を置いた。
「信じてるぜ」
その目は、とても優しかった。
僕は力強く頷いた。
* * *
その日、僕らは騎士団の監視を避けながら、なんとか作戦を進めることができた。
夕方になり、隠れ家へ戻るため、あらかじめ決めていた集合場所へ向かっていたとき――
ドーーンッ ガラガラガラガラッ!
街に大きな破壊音が響いた。
「……今の音!」
僕らは顔を見合わせ、すぐに音のする方へ駆け出した。
* * *
近づくにつれ、男たちの怒号や金属がぶつかる音が聞こえてきた。
現場に到着すると、ダンが十数人の騎士を相手に戦っていた。周囲には数人の騎士が倒れている。ダンはその騎士から奪った剣を振り回し、必死に応戦していた。
そして、ダンの背後には、抱き合って震えている兄妹がいた。
「みんなは隠れ家へ! 僕とダンも後から行く!」
僕はそう言い、隠し持っていた短剣を抜いて飛び出した。
ダンに気を取られていた騎士を後ろから蹴り飛ばし、倒れたところを短剣で首元を切りつける。
「よし……動けてる!」
おじいさんの家で襲撃を受けたあの日以来、ダンに頼み込んで稽古をつけてもらっていた。付け焼き刃だけど、なんとか戦えている。
そのとき、別の騎士がこちらに気づき、剣を振りかざして突っ込んできた。
「っ!」
僕はさっき倒した騎士の剣を拾い上げ、受け止める。鍔迫り合いになり、腕に重い衝撃が走った。
「……ぐっ!」
力では敵わない。どんどん押されていく。
僕は瞬時に腕の力を抜き、剣を滑らせてかわした。バランスを崩した騎士に、カウンターで突きを放つ。
騎士は後ろによろけたが、鎧は貫けなかった。
その隙に、ダンの元へ駆け寄る。
「ダン!」
「エリオル!? てめぇ、こんなとこで何やってんだ!」
「いいから! まずは逃げることを考えないと!」
そのとき――
「いたぞー! 反逆者だー!!」
周囲から応援の騎士が次々と集まってきた。数は二倍、三倍と膨れ上がり、あっという間に包囲される。
「クソっ! 暴れすぎたか!」
ダンが歯噛みする。なにか、ここから脱出する手はないのか……?
そう思った瞬間、あたりに濃い霧が立ち込めた。
この霧は――!
突然、僕の腕がパッと掴まれた。アリヤだった。
「逃げるよ!」
アリヤに腕を引かれ、僕は霧の中を走り出した。




