表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

第14話 静かな開戦

 「……まとまったところに水を差すようで悪いけど、どうやって戦うつもり?」


 盛り上がる空気の中、ずっと黙っていたアリヤがぽつりと呟いた。熱を帯びていた空気が、一気に静まる。


 「私に考えがあります」


 静寂の中、ケセフさんがそっと手を挙げた。声は落ち着いているのに、不思議と場の視線が自然と集まる。


 「今、この国の民は、捕まるのを恐れて表に出さないだけで、みんな心の内に不満を燻らせています。なので、そこを突きます」


 「どういうことだ?」


 ダンが眉をひそめて尋ねる。


 「……噂話を広めるんです」


 ケセフさんは、ほんの少しだけ口元を上げた。


 「噂話?」


 そんなことで何が変わるのかと不思議に思い、僕は尋ねた。


 「はい。手始めに、小さな噂から広めていきます。直接人と話す必要はありません。側で世間話をしているフリをするだけで充分です。最初は真剣に受け取られなくても、同じ話を聞く人が増えれば、噂は自然と広まっていきます。そして、小さな噂を少しずつ大きくしていき、革命の機運を高める。……軽いマインドコントロールみたいなものですね」


 ケセフさんはフフッと笑った。けれど、その目は冗談ではなく、本気だった。


 「……あんた、案外えげつないこと考えるなあ」


 ダンが呆れたように笑う。


 「戦力のない私たちが勝機を得るには、民衆の団結が不可欠です。……人は、誰か一人のカリスマの呼びかけより、“みんなと同じ”という理由のほうが動きやすい。それに、今の騎士団は実力者のほとんどが粛清され、入りたての従士スクワイアばかりです。……蜂起した民衆を殺しにかかるような思想も力も持っていません」


 「なるほどな。力で勝てないなら、数で押そうというわけか」


 ダンの言葉に、ケセフさんは静かに頷いた。


 「ただ、問題もあります」


 一呼吸おいて、ケセフさんは続けた。声は落ち着いているが、指先がわずかに机を叩いている。


 「この作戦には、時間と人手が必要です。最近は連行される人があまりに多いので、騎士団もみなさんの顔を覚えていないと思います。ですが、街の人たちは違う。みなさんの知り合いもいるでしょう。いくら接触はしないと言っても、素性がバレる危険性は高い。それに、噂を広げるのに時間がかかればかかるほど、この場所が見つかる可能性が跳ね上がる。みなさんにその危険を負わせるわけにはいかない」


 辺りがシーンと静まり返る。


 「そんなことを言っていては、何も始まらない」


 沈黙を破ったのは、一人の青年だった。先ほど、おじいさんの呼びかけに真っ先に答えた青年だ。


 「何をやるにも多少のリスクは伴う。今まで散々護ってもらったんだ。今度は俺たちが頑張る番だろう?」


 青年の言葉に、周囲から「そうだ」と次々に声が上がる。


 「それに、本当にヤバくなったら……また助けてくれるんだろう?」


 青年が微笑みながらケセフさんを見る。


 ケセフさんは一瞬だけ目を細め、胸を張って答えた。


 「もちろんです。私に任せてください」


 「……方針が決まったようね」


 アリヤがスッと立ち上がる。ダンも続いて立ち上がった。


 「よっしゃ。いっちょ、このふざけた国、ぶっ壊しに行くぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ