第11話 金の剣
ケセフさんとの出会いから数日経った。あの日以降も、僕らは情報収集を続けているが、状況を打開する手がかりを掴めずにいた。
そんなある日の早朝、僕らはおじいさんの家の二階で眠っていた。今では、おじいさんが簡易的なベッドを用意してくれたおかげで、ふかふかの布団に包まれて眠れるようになっていた。
その心地よさに浸っていたとき――
ドドドドドッ……!
遠くから地鳴りのような音が響いた。最初は小さかったそれが、徐々に大きく、近くなっていく。
次の瞬間ーー
「工作員どもに告ぐっ!! 無駄な抵抗はやめて今すぐ投降しろっ!!」
怒号が外から叩きつけられた。僕らは飛び起き、慌てて窓へ駆け寄る。
二階の窓から見下ろすと、複数の騎馬がナーヴさんの墓の周囲を暴れ回っていた。直したばかりの柵は、馬の蹄にあっという間に踏み潰され、アリヤが咲かせた花は泥にまみれて消えていく。
「工作員どもめ! 今すぐ出てこい!!」
「くそっ! アイツ、まさかやりやがったか?!」
「ひとり捕らえたぞー!!」
声がした方を見ると、おじいさんが騎士に押さえつけられていた。
「おじいさん!!」
僕らは階段を駆け降り、勢いのまま外へ飛び出した。
「おい! おじいさんを離せ!!」
叫びながら、僕は騎士に飛びかかった。
だが――
ドスッ!
横から殴り飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「がっ……!」
視界が揺れ、息が詰まる。その僕に、二人の騎士が剣を振り下ろそうとしていた。
動けない――!
その瞬間、鋼がぶつかる音が響いた。
ガキィン!
「エリオル! お前は下がってろ!」
ダンが僕の前に立ち塞がり、騎士たちの剣を弾き返していた。
「でも――!」
言い終わる前に、騎士たちが再び襲いかかる。ダンは応戦するが、三人目の騎士が背後から斬りかかった。ダンは身を捻ってかわしたが、その隙を突かれ、脇腹を剣がかすめた。
「ぐっ……!」
「ダン!」
「エリオル、危ない!!」
アリヤの声と同時に、僕の体が横へ押された。右から振り下ろされた剣を、アリヤがスコップの柄で受け止めていた。
「アリ――!」
左からも気配が迫る。振り向くと、別の騎士が剣を振り上げていた。僕は咄嗟に後ろへ跳んだ。
くそっ……!
このままじゃ、みんなやられる!
ダンは三人を相手にして手一杯。アリヤもそう長くはもたない。僕は武器もなく、ただ避けることしかできない。
何か……何か手は――!
ガキンッ!
アリヤのスコップの柄が折れた。騎士がすかさずアリヤへ斬りかかる。
「アリヤ!!」
その瞬間――
風を裂く音とともに、外套のフードを被った人物がアリヤの前へ飛び込んだ。その剣が、攻撃を兵ごとまとめて弾き飛ばす。
「……総員、攻撃をやめよ!」
低く、よく通る声が響く。
フードが外され、長い金髪が朝日に揺れた。
「……あ、あなたは!」
そこに立っていたのは――
この国の騎士団長、ケセフだった。




