第9話 沈黙の通りで
次の日から、僕らはさっそく行動に移した。街での情報収集には、僕とアリヤが出ることになった。ダンは、もし騎士団がまた墓を壊しに来た時に対処できるよう、おじいさんの家に残ることになった。
僕とアリヤは外套を羽織り、街へ向かった。
街は、ここへ来た日と変わらず静まり返っていた。大通りには住民の姿がほとんどなく、代わりに騎士たちが隊列を組んで往来している。住民にそれとなく話を聞こうと試みたが、誰に声をかけても、怯えたように目をそらされ、まともに取り合ってもらえなかった。
街を抜けた先は、おじいさんの家の周囲と同じく荒れ果てていた。かつては畑だったのだろうが、今は雑草が伸び放題で、どこも手がつけられていない。
何の情報も得られないまま帰ろうとしていたとき、静まり返った通りとは対照的に、ひときわ騒がしい場所が目に入った。人だかりができている。
「……なんだろう?」
「行ってみましょう」
僕らは人だかりをかき分け、中心へ向かった。
そこには、複数の騎士に取り押さえられた女性と、泣き叫ぶ小さな男の子がいた。
「おかあさん! おかあさん!」
「離して! お願い!」
「黙れ!」
騎士は怒鳴ると、女性の顔を思い切り殴り飛ばした。女性は地面に倒れ込み、男の子が必死にしがみつく。
「この女で間違いないんだろうな」
騎士は、隣に立つ別の女性に確認した。
「はいっ。この女は、王様の崇高な思想を悪だと言いふらし、その愚かな考えを広めようとしていました!」
「……よし、連れて行け」
倒れた女性を二人の騎士が抱え、引きずっていく。
「おかあさん! 行かないで!!」
男の子が足にしがみつく。騎士は、その子どもを容赦なく蹴り飛ばした。
その瞬間、僕は見逃さなかった。告発していた女が、ほんの一瞬、ニヤリと笑ったのを。
考えるより先に、僕の体は動いていた。だが、肩を強く押さえられ、前へ進むことはできなかった。
「今は堪えて。ここでわたしたちが出て行っても、何もできない」
アリヤが小声で言った。
「くっ……!」
無実の人が理不尽に連れて行かれ、子どもが泣き叫んでいる。それなのに、僕は何もできない。
「エリオル、行きましょう。あの女の人を救う手立ては、まだあるはずよ」
僕は、目の前の光景から逃げるように人だかりを離れた。
その時――
人混みの中に、僕らをじっと見つめる視線があったことに、僕は気づかなかった。




