表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

第9話 沈黙の通りで

 次の日から、僕らはさっそく行動に移した。街での情報収集には、僕とアリヤが出ることになった。ダンは、もし騎士団がまた墓を壊しに来た時に対処できるよう、おじいさんの家に残ることになった。


 僕とアリヤは外套を羽織り、街へ向かった。


 街は、ここへ来た日と変わらず静まり返っていた。大通りには住民の姿がほとんどなく、代わりに騎士たちが隊列を組んで往来している。住民にそれとなく話を聞こうと試みたが、誰に声をかけても、怯えたように目をそらされ、まともに取り合ってもらえなかった。


 街を抜けた先は、おじいさんの家の周囲と同じく荒れ果てていた。かつては畑だったのだろうが、今は雑草が伸び放題で、どこも手がつけられていない。


 何の情報も得られないまま帰ろうとしていたとき、静まり返った通りとは対照的に、ひときわ騒がしい場所が目に入った。人だかりができている。


「……なんだろう?」


「行ってみましょう」


 僕らは人だかりをかき分け、中心へ向かった。


 そこには、複数の騎士に取り押さえられた女性と、泣き叫ぶ小さな男の子がいた。


「おかあさん! おかあさん!」


「離して! お願い!」


「黙れ!」


 騎士は怒鳴ると、女性の顔を思い切り殴り飛ばした。女性は地面に倒れ込み、男の子が必死にしがみつく。


「この女で間違いないんだろうな」


 騎士は、隣に立つ別の女性に確認した。


「はいっ。この女は、王様の崇高な思想を悪だと言いふらし、その愚かな考えを広めようとしていました!」


「……よし、連れて行け」


 倒れた女性を二人の騎士が抱え、引きずっていく。


「おかあさん! 行かないで!!」


 男の子が足にしがみつく。騎士は、その子どもを容赦なく蹴り飛ばした。


 その瞬間、僕は見逃さなかった。告発していた女が、ほんの一瞬、ニヤリと笑ったのを。


 考えるより先に、僕の体は動いていた。だが、肩を強く押さえられ、前へ進むことはできなかった。


「今は堪えて。ここでわたしたちが出て行っても、何もできない」


 アリヤが小声で言った。


「くっ……!」


 無実の人が理不尽に連れて行かれ、子どもが泣き叫んでいる。それなのに、僕は何もできない。


「エリオル、行きましょう。あの女の人を救う手立ては、まだあるはずよ」


 僕は、目の前の光景から逃げるように人だかりを離れた。


 その時――

 人混みの中に、僕らをじっと見つめる視線があったことに、僕は気づかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ