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《休》E:ternal~第二の人生は記憶の旅~  作者: 宝花 遥花
宇宙の国 アメシスト
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第11話 宇宙の国 アメシスト

日が沈み始めた頃、目的地である宇宙の国・アメシストが見えて来た。

「着いたら少し休憩して、観光しよう!」

「そうしよう。楽しみだね。」

「うん!」


「ニュウコクシンサ、イタシマス。」

身分証を差し出すと、審査官が触手をにゅっと伸ばす。

「あの!もしかしてオクトパ星の方ですか?!」

彼女が目を輝かせると、審査官はその長い触手を使って大きな丸を作って見せる。

「やっぱり!もし宜しければなんですが、握手して頂けませんか?」

「イイヨ。」

審査官は触手を2本にゅっと伸ばす。どうやら私とも握手をしようとしてくれているらしい。

「ありがとうございます!」

少しぬるりとしていて、至る所にコリッとした吸盤のようなものがある。

間違い無い。蛸だ。

「デハタビビトサン、タノシンデネ。」

こうして私達はアメシストに入国した。


専用駐車場に飛行車を停めてソファーに並んで一息つく。

「何か飲む?」

「ココア飲みたい!」

「わかった。」

私はココアとカフェラテを入れて、テーブルに運ぶ。

「熱いから気を付けて。」

「ありがとう!」

彼女はココアをふうふうと冷ましてゆっくりと口にする。

「美味しい!」

「良かった。」

彼女は嬉しそうに笑うと、何かを思い出してように手をぱんと鳴らして、リュックの中を探る。

「これ見てどこに行くか一緒に決めよう!」

そう言って彼女が見せてくれたのはこの国のパンフレットだ。

多種多様な国民が居るからか、飲食店や雑貨の種類も多岐に渡る。

「どのご飯屋さんも美味しそうだよね!あ!ここの雑貨屋さんのアクセサリー素敵!」

「このお店、宇宙中の絶品フードが集まってるって。」

「あ!本当だ!!」

彼女は食い入るようにパンフレットを見る。

そんな彼女を見ていると、観光がより一層楽しみになる。

「乙姫は気になる所ある?」

「私もその雑貨屋さんのアクセサリー、良いなと思った。」

「今日はもう閉まってるみたいだから、行くなら明日か明後日かな?」

「そうだね。」


外に出ると、国中紫色の光に照らされた幻想的な景色が広がっていた。

この国は名の通りアメシストという水晶が有名な国だ。

アメシストの輸出で宇宙と交流するようになったことで、他星人も集まるようになったらしい。

その歴史を表すように紫色の光で照らすようになったそうだ。


「乙姫。」


見ると彼女が私に手を差し出していた。

こうして手を繋ぐ回数は増えたが、やはりまだ慣れない。

けれど変に緊張する訳では無く、気持ちがふわふわしている感じだ。

「……1週間くらい滞在して、キッチンカーで旅の資金を貯めよう。」

私達の貯金は少ない。ここで少しでも旅の資金を調達しておきたい。

「うん!乙姫シェフのハンバーグ、バカ売れ間違いなしだよ!」

彼女が看板娘として呼び込んでくれれば確実にバカ売れする。

「そうだね。」

彼女はにっこりと笑った。


「着いた!」

私達は宇宙中の絶品フードが集まるという飲食店『YOU2VERSE』にやって来た。

外観は全体的に紫色で照らされていて、その中に所々白く光部分がある。

それはまるで夜空に浮かぶ星。

「宇宙みたい!」

「そうだね。」

店内はロックテイスト。レストランを想像していたがバーのような雰囲気だ。知らない言語の掛け声とグラスをカツンとぶつけ合う音が響いており、予想以上の賑わいである。

「いらっしゃいませ。カウンターにどうぞ。」

額にも一つ目を持ったウェイターに促され、私達はカウンター席に座る。

「何を飲まれますか?」

バーテンダーの女性が赤い髪を揺らしながらにこりと微笑む。

「何にしようかなあ。乙姫はどうする?ソフトドリンクはこっちにあるよ。」

ドクターに見せてもらった資料によると、私が死んだのは17歳の時。5年経った今は22歳か。多分酒は飲んだことがないだろう。メニューには聞いた事のある酒もあったが、他星の物であろう酒も多い。

「おすすめのお酒はある?」

隣に座る彼女は私の問いにうーんと唸った後、閃いたように手を叩く。

「カシスオレンジ!美味しいし、お酒も強く無いから飲みやすいよ!」

「ありがとう。カシスオレンジを一つお願いします。」

「畏まりました。」

「お姉さんのおすすめはどれですか?」

彼女がそう聞くと、バーテンダーは迷いなくメニューの一番上を指差す。

「悪魔の微笑み?」

「ええ。見た目はちょっとアレですが、甘酸っぱさがクセになります。ここで一番人気のカクテルです。」


悪魔の微笑み。それはトルトという星で作られたカクテルらしい。

「じゃあ、それください!」

「畏まりました。」

バーテンダーの表情はキリッとしたものに変わる。

まずはカシスオレンジ。これは知っての通りのものだ。

そしてお次は悪魔の微笑み。

カクテルといえばシャイカーで混ぜ合わせるイメージが強いが、バーテンダーは赤く色づいたリキュールをカクテルグラスの3分の2程に直接流し込む。

その次にバーテンダーが取り出したのは、赤黒いどろっとした液体だ。

口にするものに対してこんなこと思いたくないが、それはまるで血液のよう。

バーテンダーは赤黒いそれをリキュールの上に流し込む。

すると美しい層が完成した。

その上にさくらんぼを一つ乗せて、完成のようだ。

「悪魔の微笑みでございます。炭酸水で割っても美味しくお召し上がりいただけますので、必要でしたらお声掛けください。」

彼女はグラスを持ち上げて、あらゆる角度からそれを観察する。

なんだかこちらが緊張してきた。

悪魔の微笑みが彼女の美しい口の中にゆっくりと流れていく。

「美味しい!!」

彼女は目を丸くして私にずいっとそのグラスを差し出した。

「乙姫も飲んでみて!すっごく美味しいの!」

彼女に勧められるまま一口飲んで驚愕した。

「美味しい……!」

「でしょ!」

上のどろっとした液体の強い甘み。下のリキュールの酸味がそれを引き立てながらも甘くなりすぎないよう調和を保っている。

舌に残る甘さを酸味がすっきりとさせてくれるので、また甘さが欲しくなる。

このカクテルはその繰り返しだ。


「お姉さん!すっごく美味しいです!このどろっとした甘い液体はなんですか?」

「血液でございます。」

「え?」

バーテンダーはにこりと微笑んだ。

読んでいただき、ありがとうございます!

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今後ともよろしくお願いいたします。

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