混沌の女神ザーラ
暫く待っているとルートビッチはようやく目を覚ました。
ちなみに身体に空いた穴は自動回復機能があるのか知らないが時間経過とともに塞がった。
また暴れないようにさっきの要領で魔力の枷を両手にはめてある。
「……貴様ら、許さんぞ!」
ぎゃーぎゃー叫んでいたが、静かにしないともう一度魔力の攻撃をぶち込むぞ……と平和的な説得をしたら大人しくなった。
「で、貴様らわざわざここに来るとは我に何か用なのか」
「別に用があってきたわけじゃないですけど、俺らはただダンジョンを探索に来たのと最近魔獣が出るって話を聞いてきただけで別に用とかは無いです」
「なに? じゃあどうして我と戦った」
「それはあなたが勝手に襲い掛かってきただけです」
「…………」
「ところで魔獣はあなたが何かして増やしてるんですか?」
「知らん、むしろ寝床で暴れられて迷惑しているからわざわざ扉を付けた位だ」
「ああ、じゃあやっぱりあの扉はあなたが作ったんですね」
「いかにも、生前は錬金術師だったからな。あのくらいは余裕だ」
なるほど、それで金属を使った攻撃を仕掛けてきたのか。
通りで……と考えているとリア様が一歩前に出てきた。
「あなたが扉を作ったという事はこの遺跡の出口にも扉は作れるのですか?」
「当然作れるが」
「では作ってもらえますか? あなたが見つけたオアシスに街があるんですが被害が出ています」
「それをして我にどんな得が?」
「また被害があったらこちらのハヤトさんがあなたをまた攻撃に来るかもしれません」
そんな事しないよ!? ……と言うべくリア様の方を見るとウインクされた。
「ねえ、ハヤトさん?」
「そう……ですね。扉を作ってくれたら……」
話に乗るとルートビッチは少し考えてから。
「別にそんなもの、我は人より位の高い精霊だし怖いとかそういう事は一切ないが……後でやっておこう」
上手く転がってくれた。
これで来る前に店のおばさんが話していた被害も解消されるだろう。
――と、それより。
「そういえばルートビッチさん、戦う前に言ってた事で質問があるんですけど」
「ルートビッチ様と呼べ」
「…………」
掌に魔力を溜めるふりをするとルートビッチは、途端におどおどし始めた。
正直なものである。
「呼び方はどうでも良いが、聞きたい事は何だ?」
「混沌の神って何ですか?」
「ぬ……貴様を呼び出した者だ」
隣の三人は会話についていけていないかもしれないが、構わず俺は質問する。
ミスミさんの件も引っかかっている俺としては、どうしても聞いておきたかったのだ。
「あの女神の事ですか?」
「うむ、混沌の神……正確には女神ザーラか。恐らく貴様と我の想像している神に違いは無いと思っている」
混沌の女神ね……最初のパフォーマンスの時に俺が感じた違和感は間違っていなかったのだろうか。
ただ、
「混沌と言いますけど、あの女神は俺や他の人達に世界を統一し平和にしろって言ってましたよ?」
「ほう……貴様はそんなことを言われたのか。だが奴は魔王が跋扈していた時に人を送り込んできた、そしてそいつらが魔王達を倒し終わっても更に人同士争うようにまた人を送り込んできた。言っている意味が分かるか?」
「……ルートビッチさんは女神の行動の意味をどうお考えですか?」
「ふむ、我が考えるに奴は事あるごとに人を送り込んでは、あえてこの世界を平和にしないようにしているように思える」
「なるほど、そうなんですね」
「我がおもうには……な。それにしても、貴様は邪教徒の割に話せるな。案外悪い奴じゃないのか?」
「とりあえず敵意は無いですよ」
「そうか」
ルートビッチはゆっくりと頷いた。
うーん、話してみたらこいつ割と良い奴かもしれない。この世界の人が知らない女神についても唯一知ってるし。
流石は腐っても精霊である。
それにしてもこいつの話を聞く限りだとやはりあの女神は怪しい。
ミスミさんが未だに向こうに戻ってないのに引っかかりを感じていたが、もしかしてあの女神、俺と同じ時期に来た奴らがもし世界を統一して平和を取り戻したとしても、新たに人を連れてきて争わせる気なんじゃないか。
考えれば考える程大いにあり得そうだ。
仮説が本当になりそうで怖い。
ただ、何が目的なのかは分からないけど。
「ハヤトさんは何の話をしているのですか?」
リア様は不思議そうに見て来る。
俺は説明しようとしてやめた。
まずはミスミさんにその辺を聞いてみてからだな……。
聞きたい事は終わったため、とりあえずルートビッチの拘束を解き、出口に扉を作らせた。
そして、ルートビッチは作り終えたら再び眠りにつくそうだが、困ったことがあればいつでも来いと言われた。
話し相手位にはなってくれるらしい。
意外と寂しがり屋なんだろうか?
とりあえず気が向いたら……とだけ言っておいた。
なにせローファス領とここは話に来るには遠すぎるしね。




