オアシス都市ダクフマ
ダクフマ。
大陸南の盟主とも呼ばれる大国である。
領土の大部分が乾燥地帯であり、砂漠の国とも呼ばれる。
首都はレトという豊富な地下水が存在している街であり、オアシス都市とも呼ばれており、大陸南で最も大きな街の一つだ。
同盟に関する会議は今回この街で行われる。
ーーと言うわけで俺らは大所帯でレトにやってきた。
女王であるリーゼ・ナトラゼン・ルグナを筆頭に、キース家からはシング・ロウ・キースとその側近達。
そしてローファス家からはリア様と俺、ナルド、そしてライベル、ヤクモが着いてきた。
この人選ならフェイルも入りそうなものだが、フェイルは竜王に呼ばれて妹と共に里に戻っている。
更に留守としてノーザンラントはデフが、ヒューネルはリヒトを領主代行として置いてきた。
「キース家からはシング兄が来たんですね」
「親父は国内で睨みを効かせなきゃいけないからな。ここは僕の役目さ」
馬車から降りて早々ナルドがシングと嬉しそうに話している。
それを警護の騎士に囲まれながらじっと話したそうに見ている女王リーゼ。
ナルドを連れてきて良かったな、うん。
更に隣を見ればリア様がライベルと景色を見て目を煌めかせている。
「見てください、見渡す限り砂ですよ。地面から出ている水も透き通っていて素敵ですね」
「うん、悪くない。……と、嬢ちゃんはしゃぐな、足元を見ろ、危ないぞ」
「すいません」
「……まあ気持ちは分からないでもないがな」
あれ、あの二人なんか妙に仲良くない?
リア様の隣は俺だからな……とでも言おうと思ったのだが、更に隣で涎を垂らしているイケメンが目に入った。
「一応聞くけどヤクモはどうして涎を垂らしているんですか?」
「じゅる……あ、いえ。今回はこの国を攻め落とすのかと思わず心が躍りまして」
「心躍らせないでください。そもそも攻める気なんてありませんから、涎を垂らすのもやめてください」
こいつ下手するとライベルより好戦的でやばい思考してるな。
街に置いて来なくて良かった。
その日は用意された大きな宿に泊まり、次の日会議場へ向かった。
会議場はそれは広く、華美な様相を呈していた。
宝石が産出するらしく、室内は至る所でキラキラしている。
長方形の大きな机と数十人座れる椅子。
最奥にダクフマ王国現国王、マーシャル・ロダ・ダクフマが座っている。
立派な髭を生やしたおっさんだ、眼光は鋭く確かにそれっぽい雰囲気を身に纏っているな。
それから諸国のお偉方が座り、ダクフマ国王とは対角線上に席を用意されたのがリーゼ様の椅子だ。
俺はリア様と共に壁際に立つ。
司会役であろう中年のおっさんがこほん……と咳き込んだ。
「ではこれより会議を行います」
結論から言おう。
同盟については早々と大筋合意が為された。
話を聞くとそもそもダクフマの方でもガレリアの脅威については十分に理解しており、どこかと組みたいと思っていたらしい。
すでに北のカナリアに使者を出していたそうなのだが、カナリアは絶賛ガレリアに攻め込まれており、では東? ――と考えていた時にルグナ王国から話が来たというわけだ。
リーゼの話だとダクフマはまだしも他の大陸南諸国の説得をしなければならない……という話だったのだがダクフマがすでに根回しをしていた為その必要は無かった。
敵意も存在しておらず、キース家とローファス家というルグナ王家を護る新しい双璧を見せびらかさなくても良かったレベルである。
恐らくだが思ったより早く帰れそうだ。
続けてキース家がいるから会議中の護衛は大丈夫だと女王に言われたため、途中からローファス家側からはナルドだけ会議場に置いてあとの四人は観光がてら街を散策なんかもしていた。
そんな折、リア様がある話を聞いてきた。
街から少し行った場所にアルマン遺跡という場所がある。
その場所は遺跡……という名前だが最近ダンジョン化しており、内部には魔獣が出たりして、時々そこから来る魔獣が暴れては街の治安を乱しているという。
「ハヤトさん、どうですか?」
「どう……とは?」
ワクワクした目で見てくるリア様、最近年齢相応の反応が見れて俺は嬉しいです。
「ダンジョンですよ。私一度でいいからダンジョン探索をしてみたかったんです」
「へえ、初耳ですね」
リヒトからもリア様にそんな願望があるなんて聞いたことが無かったな。
「それは言えませんよ。私は生まれながら領主か名だたる領主の妃になるべく育てられた身ですから、不必要な願望なんて持つべきじゃないです」
身分を弁えて我儘を言わないようにしていたって事か。健気だね。
「でも良いんですか? 女王陛下達は会議ですのに」
そう、大詰めとはいえ彼らは彼らで諸国と調整を行っているのだ。
「大丈夫です、ローファス家としてはナルドさんを置いてきているでしょう?」
「まあ確かに」
なら良いのか? 観光を許されている位だから大丈夫かな。
「でも危ないですよ。ダンジョンなんて」
ダンジョンについての知識はガレリアのアカデミーで学んだ位しか知らないが、少なくとも危険な魔獣や異形の者がいたり、罠があったりするため、決して好奇心で入ってはいけなかったはず。
それをやんわりと言ったのだが、リア様は口を尖らせながら俺を半眼で睨め付けてくる。
「ここにはハヤトさんもいればライベルもヤクモさんもいます。それなのに怯える必要はあるのですか?」
「嬢ちゃんの言う通り、俺がいれば問題ない」
胸を張るライベルの隣でヤクモが綺麗な所作で一礼する。
「我が主よ、私がいればたとえ冥王が来たところでたちどころに仕留めて見せましょう」
仰々しく畏まるがこんな適当な遺跡で冥王と対峙とか嫌だよ、ヤクモはともかく俺は戦う気になれない。
「ハヤトさん?」
「……はぁ、分かりました。行きますよ。とりあえず水とか食べ物の用意とか最善は尽くしましょう」
結局根負けしてしまった。




