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帝都イルバハール

 ガレリア帝国帝都イルバハール。

 静謐な室内に国の重鎮が集まっていた。

 中でも異彩を放っている一人の男がふう……と息を吐く。


 金色の髪に金目、豊かな髭を生やした大男、ベックスは中央奥の空席を一度見てから進行係である細長い髭を生やした宰相ベツレムをじろっと見た。


「陛下は?」

「不在にございます」

「国の会議だというのにか?」

「私達を信頼しているのです」

「ふん」


 面白くなさそうにそっぽを向く。

 開いていた扉を兵士が閉めるとベツレムは周囲を睥睨してから。


「では会議を始めましょう。まず財政から……」


 滔々と説明をしてから続けて……と言いつつ目を細めた。


「東国の状況です、以前から注視していたルグナ王国ですが東の諸国を併合、統一を果たしたとの事です」

「統一?」


 ベックスが眉を顰めた。


「どうして統一なんて出来てんだ? 妨害したんじゃなかったのか?」

「……私の懸念していた事態が起きてしまいましたか……」


 白磁のような白い肌、細く病弱そうな男、イトナが何度か咳をしてから呟く。

 そのポツリと言った言葉にベックスが反応した。


「ベツレム、どういう事だ」


「報告では担当のレブナント・ノギア、協力者であるルグナ王国の大貴族ベルント・フォン・イズールド。共に死亡。補佐に付けていたアカデミー出身の上位魔法使いレナはルグナ王国に登用されたとの事。続けて周辺国に同時進行させるべく後詰めに送っていた同じくアカデミー出身の上位魔法使いアキラですが敵の魔法使いに敗北、捕縛されたとの事です。周辺国六国を焚きつけましたが全ての進行を防ぎ切り、更に彼に付けていた協力者達も次々と連絡が途絶えており……」


 報告を聞くや否やベックスは机を叩いた。


「落ち着いて下さい」

「これが落ち着いていられるか、完全敗北ではないか! イトナ、奴らは油断でもしたのか」


「いえ、ベックス殿の言う通り油断……も会ったのかもしれませんがそれだけではないと思います。名門ノギア家の俊英……それにアカデミーの上位魔法使い達。いずれも相当な実力者だったはずです。……ところで周辺国の進軍はウェルス公国もあったはずですがそちらも負けたのですか?」


「報告ではそうなっておりますな」

「あそこには戦上手と名高い将軍が一人いたはずですが」


「ふん、負けたのなら戦上手も何もあるまい、名前で戦をするわけではないのだからな」

「名前だけで西の国々を怯えさせたベックス将軍の言葉とは思えませんな」


ベツレムはくつくつと笑った。


「それで、ルグナの若い女王はそこまでやり手という事ですか?」

「いえ、話によると彼らを退けたのは全て一人の魔法使いが関与しているとの事」

「魔法使い? 奴らを倒せるとなれば……まさか放浪の大魔法使いか」


ベックスの言葉に二人は少しだけ表情を緩めた。


「ベックス殿……放浪の大魔法使いは数百年前の方ですよ……」

「ベックス将軍はかの者の伝説が大好きでしたな」

「別に良いだろう。数百年前の英雄を嫌いな者はおるまい」


 腕組み、不満げに言う。

 ベツレムは軽く笑ってから目を細める。


「ハヤト……という魔法使いです」

「……聞かぬ名だな」

「最近出てきたのですか?」

「出来る限り情報は集めてあります。この紙を確認ください」


 ベツレムは兵に命じ二人に紙を渡した。


「上国出身者か」

「はい、アカデミーでは実力不足として追放処分を受けていました、その後ルグナ王国の貴族に拾われたようです」

「多数の亜人種の実力者を従え、第一次、第二次ウェルス公国軍の侵攻を防ぎ切る、イズールド公のクーデターも阻止……本当に実力不足で追放されたんですか?」


「東国へ行ってから芽が出たようですな、聞く限りでは凄腕の魔法使いです」

「馬鹿な……なんだこの経歴は。これではまるで……」

「……英雄の冒険譚に出て来そうな経歴ですね」


 ベックスは無言でベツレムを睨み、イトナは肩を竦める。


「陛下はご存じなのですか?」

「知っていると思いますが陛下は些事だと」

「些事? これが些事だと? かつては賢帝と呼ばれた陛下はいずこに……」

「ベックス将軍!」


 ベツレムの非難混じりの呼び声にベックスは舌打ちをして黙る。


「で、どうするつもりだ。出陣は速い方が良いか」

「流石はベックス将軍……と言いたいところですがそれも難しいようです」


「先に北を殲滅してしまいましょう。東進している途中に横から突かれる恐れがあります。更に言えば帝都の西で反乱が起きていますからそちらも手を打たなければ。可能性として次に敵が手を出すのは北か南に同盟の使者を送るかもしれません」

「……厄介な。で、対抗策は出来ているんだろう?」

「は……い……!」


 イトナが大きく咳き込むと同時に机に鮮血が散る。

 そして机に突っ伏した。


「おい! イトナ!」

「…………っ! 衛兵!」


 ベツレムの言葉でイトナはすぐに兵士に連れられ会議場から出て行く。


「ベツレム、イトナは」

「……恐らく長くないでしょう。とにかく反乱鎮圧の件は私が手を打ちますので、ベックス将軍は北をお願いします」

「分かった。くそ、これからという時に……!」


 ベックスは壁を強く叩いた。

お待たせしました、今日から投稿を再開します。

最低でも数日に一度のペースで更新していけたらと思っています。

改めてよろしくお願いします。

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