アキラ
リア様、ナルドと共に大通りに向かうと不自然な囲みが見えた。
中から兵士の声が聞こえる。
「そこでとま……」
兵士の言葉は最後まで続かなかった。
胸に氷の刃が刺さり、静かなうめき声と共に倒れる。
「はぁ……弱い弱い、簡単すぎるよ。この僕が来る必要なんてなかったと思うんだけどね。……おや」
「アキラ」
長い黒髪に低い身長の少年が俺に気付いたのか見下したような目で見てくる。
「これはこれは……雑魚過ぎてガレリアを追放されたハヤトじゃないか、こんな所にいたとは相変わらず運の悪い奴だ」
「ハヤト、知っているのか?」
「はい、彼はアキラ。ガレリアに降りた上国出身者の一人です」
「おい忘れるな、お前と違って凄腕な魔法使い、特に氷魔法の使い手だってな」
ふふん……と笑う。
「どうしてアキラがここへ?」
「レブナント教官と俺のレナが調略を失敗したって聞いたから俺様が直々に来てやったんだ。周辺国をけしかけたらどの国も動いた、最初からこれをやれば良かったのに馬鹿な奴らだ」
「……俺のレナ? レナってこいつの恋人なのか?」
不思議そうに俺に聞いてくる。
「いえ全く、彼は俺とレナがアカデミーで一緒に訓練していた頃、陰から覗いては野次を飛ばしていました。付きまとっていただけです」
「おいおい、馬鹿にするなよ、お前みたいなガレリアに来てすぐに限界を迎えた雑魚野郎のせいでレナまで足を引っ張られるのに文句言ってただけだろう、逆恨みするなよ」
「でもレナは気持ち悪いって言ってましたよ、廊下を歩いていると偶然を装って何かと話しかけて来るって」
「レナは恥ずかしがってただけだ」
それは無いと思う。
「レナさん可哀想です……」
「ん……」
アキラはリア様を見て目を細める。
「そこの女、名前は?」
「…………? 私はリア・ローファスです」
「美しいな。喜べ。レナと一緒に俺の女にしてやっても良い。ガレリアでも五本の指に入る魔法使いが相手してやるんだ。感謝しろ」
「…………」
リア様は薄い笑みを浮かべたまま黙っている。
俺は改めてアキラを見て、こいつこんなキャラだったかなと過去を思い出す。
確かに女好きではあったけどもう少し大人しかった気がする。
きっと強力な魔法を沢山使えるようになったしその……ガレリアで五本の指に入る実力者になったそうだから性格が変わってしまったのだろう。
力は人を変えるね。
それでも多分俺の方が強いと思うけど。
リア様はため息をついてから俺の影に隠れる。
「美しいという言葉は受け取りますが、あなたの女になるというのは謹んで遠慮いたします。私にはこちら……」
俺の服の袖をそっと掴む。
「頼れる護衛であるハヤトさんがいますので」
「…………なっ!」
アキラは目を見開き驚愕の顔をした。
断られるとは思っていなかったのか。こいつどんだけ自分に自信があったんだろう。
そもそもさっきのような口調で靡く女性なんていないと思うんだけど。
「ぷっ……」
ナルドが思わず吹き出す。
アキラは顔を赤くしながらナルドを睨む。
「ふ……ふふ……コケにしやがって。くそ、お前もか。レナだけじゃなくお前も俺じゃなくハヤトか。そんなろくに魔法も使えない糞雑魚野郎が良いって言うのか」
「リア様、ナルド。下がっていて下さい」
アキラが俺に対して手をかざした。
「くたばれ!」
それから沢山の魔法が飛んできた。
主に氷魔法を中心として攻撃魔法だ。
それらは周囲を凍らせ、温度も下げたりした。
――が。
「ば、馬鹿な」
「それで終わりですか?」
ただ突っ立ってる俺に傷一つ付けることは出来なかった。
一応魔力壁を身体に纏わせているのだが、そもそもアキラはそれに気付いていなかった。
よって生身の俺にダメージが通らない事に困惑しているようだ。
「ど、どうして……僕の魔法が効かない!?」
「単純に魔法の威力が足りないんじゃないですか?」
事実だ。
ライベルは俺を魔力壁ごとぶん殴って衝撃を与えて来たし、フェイルのブレスも更に防御の魔法を使わなきゃいけなかった位だ。
正直言ってこいつはフェイルやライベルより遥かに弱い、多分レブナントより弱いだろう。
「くそ、くそくそくそ。俺が、こんな奴をどうして」
そういえば俺アカデミーにいた頃、こいつにさんざん罵倒されたな。
この態度を見る限りだと完全に下に見て馬鹿にしていたのだろう。
それはともかく。
「さっき言ってましたけどアキラが周辺国を焚きつけた……みたいに言ってましたよね?」
「それがどうした」
「そうですか」
ならこいつを捕まえて吐かせればルグナ王国にいるスパイ的な奴らを見つけられるか。
多分だけどこいつ一人で調略をしたとは思えないし。
【ファイアピラー】
炎の柱がアキラの後ろに現れる。
柱は隙間なく後ずさるアキラの退路を断つ。
「逃がしませんよ」
俺は一瞬でアキラの目の前に立った。
「手加減はしますね」
それだけ言い俺はアキラの顔をぶん殴った。
アキラは近距離戦はろくに訓練していなかったのだろう、避けることなく思いっきりぶん殴られ横に吹っ飛ぶ。
「あ……が……が……」
顔がひしゃげ、口からは涎を垂らしながら地面に倒れ。
その後、起き上がる事はなかった。
お疲れ様です、いつも読んで頂きありがとうございます。
突然ですが少し更新を止めます。
次は新章入って終わりへと向かっていく形になると大まかに考えてました。
ただ元となった小説部分は実はGW位には書ききってまして、毎日考えながら書いてましたので大分ごちゃついてて整理したいって言うのもあります。
というわけですいません、少し休憩します。
ご迷惑おかけいたします。




