キース家出陣
王都に着くと丁度軍の一つが出る所だった。
俺らより遥かに多い兵数で全員の鎧は赤く揃っておりかっこいい。
じっと見ていると見覚えのある人がいる。
ナルドの兄、シングさんだ。
俺らは顔を見合わせてから向かった。
「シングさん」
「やあ」
俺らを見つけると進軍の列から離れてくれた。
「もしかして援軍かい?」
「はい、こっちは片付きましたので」
俺らの言葉にシングさんはやや目を瞬かせながら苦笑いを浮かべる。
「流石はローファス家。狂公ハヤトさんをリーダーとした武闘派集団を抱えてるんだもんね」
「あの、その称号は荷が重いっていうか……」
「ハヤトさん達は自慢の家臣団ですから」
リア様が言葉を遮るように前に出る。
その表情は誇らしげだ。
シングさんはそれを見てやや意外そうな顔をしてから柔らかく笑った。
「イズールド公がいなくなったからその言葉は頼もしいね。でもナルドは本当に役に立ってるの?」
「僕だって役に立ってるよ! なあ!?」
そんな不安げな顔でこっち向かなくても。
「勿論です、うちの副領主ですよ? 兵の指揮や作戦看破などうちの頼れる参謀ですよ」
「以前の戦いでもナルドさんの気づきのおかげで私は助かりましたから」
「ハヤト……リア様」
シングさんはそれを聞いて嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ふふ……それなら良かった。愚弟をよろしくお願いしますね」
一礼だけして軍に戻っていった。
王都に入りそのまま王宮へ向かう。
謁見の許可を頂くと早速中に通された。
てっきり大広間に連れていかれると思いきや、実際に案内されたのはとある一室だ。
中にはリーゼと付き添いの騎士数人が立っていた。
「お久しぶりですリーゼ様」
挨拶をするとリーゼは騎士達に目配せをする。
騎士達は少々難色を示したが、リーゼが首を横に振ったので大人しく部屋の外に出た。
部屋の中に誰もいなくなったのを確認してからリーゼは笑みを浮かべた。
「お久しぶりです皆さん、有事に来ていただけるとは」
「いえいえ、援軍のつもりだったのですがもしかして要らなかったですか?」
「いえ、キース家が出陣しましたので王都の警備が薄くなっていたのです。ちょうど良かったです。……ですがローファス領はもう良いのですか? 二か国に攻められていたはずですが」
「大丈夫です、もう敵の総大将をそれぞれ捕まえていますので。多分今ナルドが引き渡し手続きを行っているのでもうすぐ……」
「失礼します」
言った傍からナルドがやってきた。
「ルウ、あなたも来てくれたのね」
「こちらが片付いたんだから当然だろう。それで、こっちは大丈夫なのか?」
「はい、それぞれの領主が抑えています。後詰としてキース家が出ましたからすぐに戦いは終わると思います」
「そうなんですか?」
「ハヤトは知らないと思うがキース家の私兵は一人一人が選りすぐりの精兵揃いで強いからね。並の軍には負けないよ。それにシング兄や父様もいるしね」
どちらも優しそうに見えたけど戦いになれば変わるんだろうか。
ありそうだなぁ、普段大人しい奴が怒ったら怖い理論で、普段優しい人が戦場だと悪鬼になるみたいな……それはそれで見てみたいけど。
「包囲網が崩れればその他様子を見ていた多数の小国も雪崩を打って従属の使者を送ってくることでしょう。そうなればルグナ王国は大陸東部を全て手中に収めることになり、私達は非常に優位に立てます」
真剣な顔でリーゼは言った。
「ん、ナトラは大陸制覇でも求めてるのか?」
「求めているわけではないけど、でも相手が相手だから」
「ガレリアの噂は聞いてるぞ、再び攻めてきた北の大国を破ったって」
「あの国は危険すぎます。本格的にこちらに矛先を向ける前に何とか対抗する力を付けなくては……」
ガレリア、ガレリアである。
いつか女神が言った世界を平和にするためにはあそこを倒さなければいけないのだろう。
多分だが、ガレリアが国を統一したところで、恐らく大陸から争いはなくならないような気がする。
むしろ反発して反乱とか勃発しそうだし。
その時、ふと思う。
あれ、そういえばミスミさんはどうしてまだこの世界にいるんだ?
俺と同じ感じで来たなら何か目的を持ってきたはず、時期的に恐らく魔王討伐だよな。
事実魔王は数百年前に死んでる、それなのに戻っていない。
違和感を感じる、好きでこの世界にいるのか、それとも隠してるだけで何か別の目的があるんだろうか……。
「ハヤトさん?」
リア様が急に黙って俺の顔を覗き込んできた。
驚いて思わずわっと声を出してしまう。
「な、何でもないですよ。ちょっと考え事を」
「そうですか、具合ども悪いのかと思いました」
「いえいえ、大丈夫です」
取り繕いリーゼとナルドの話に耳を傾けた。
「とりあえず大陸東部の統一が終わったらどうするつもりなんだ?」
「内政に勤めながら南と北と連携してガレリアに対抗するつもりです」
「そうか……まあ、何かあったら言うと良い。僕は勿論、リア様やハヤトも力になってくれるはずだ」
ナルドが俺らを見る。
「勿論です」
「微力ながら」
「ふふ……ありがとうございます」
リーゼが礼を言ったその時。
大きな爆発音が聞こえた。
「何でしょう」
兵士が飛び込んできた。
「リーゼ様、至急応接間へ」
「何があったのですか?」
「王都に侵入者です!」




