ルグナ王国包囲網
「これは凄いですね」
「はい、住民皆の努力の賜物かと……」
季節がいくつか変わった頃、俺はハーゲンに呼ばれてテイズ高原奥へ来ていた。
奥地に俺が下地だけ作った耕作地は、見事な黄金色の稲穂が靡く土地になっていた。
「ハヤト様!」
ここに連れてくるきっかけになった住人、トラクが走ってきた。
「見てください、これを! 私達頑張りました」
「ええ、そうですね。頑張りましたね、見事です」
かつてはただの荒地だった広大なだけの無駄な土地が今じゃ見事な水田地帯になっている。
これは褒美を与えないわけにはいかないだろう。
「ハーゲンさん、トラクさん」
「はは」、「はい」
「期待していてください。後で俺の方から副領主に掛け合って褒美を皆さんに与えます」
「ありがたき幸せ」
ハーゲンが畏まり、トラクは困惑の表情をした。
「どうしました?」
「貰って良いのでしょうか? 困っていた私達を受け入れてくれたハヤト様にはむしろ感謝している位だったのですけど」
「頑張りに報いるのは当然の事です、謹んで受けてください」
ハーゲンは微笑みながらトラクに合図を送る。
「わ、分かりました。ありがたく」
トラクは一礼をした。
「ハヤト様」
そんな事をしていると砦から兵士がやってきた。
「どうしました?」
「至急ノーザンラントに来て欲しいと、ローファス侯爵がお呼びとの事です」
「リア様が?」
ノーザンラントの本部に行くとすでにリア様とリヒト、そしてナルド、フェイル、ライベル、ヤクモなど大体のメンツが集まっていた。
「すいません、遅れました」
「いえ、視察をしていたのでしょう? 領主の務めです」
リア様がニコリと笑う。
だがリヒトの顔が真剣な表情な事から何か深刻な話があるのだろうと分かる。
「それで用件があるんですか?」
「ハヤトさんはこの国と周辺国の事はどれくらい知っていますか?」
どれくらい……。
「正直全然……」
はっきり言うとナルドは少々呆れ気味に「君な……」と、そしてリア様は笑う。
「そうなんじゃないかと思っていました、リヒト」
「はっ」
机の上に地図を広げていく。
「これがルグナ王国です」
「かなり広いですね」
「はい、これでもルグナ王国はかつて大陸東部の覇者とも言われていましたから。それで現在周辺に七か国中小国家が存在しています」
「ウェルス公国とかですね」
「はい、理解が速くて助かります」
「それでその周辺国がどうしたんですか?」
「一つを除いて全て敵に回りました」
「…………」
「…………」
「はああああああ!?」
ナルドが叫んだ。
「一体どういう事ですか?」
「原因はイズールド公が死去したこと、女王の暗殺未遂が国外に漏れた事、そして恐らく後ろにはガレリアがいる事と思います」
「国内が乱れていてこれまで王家を支えていたイズールド家とキース家の一角が落ち、あのガレリアが後ろ盾としているとなればまず動くでしょう」
そりゃレブナント教官は死んでアカデミー上位の魔法使いがルグナ王国に味方した、となればガレリアとしても何もしないわけないもんな。
暫く静かだったのはそう見えてただけで影で動いていたのか。
「そして少なくともこのローフェス領は二か国が面していて、双方の国が攻めてくると予想されています」
「二か国ですか?」
「はい、ウェルス公国は和睦同盟を破棄してこちらへ侵攻すると思います、それと西からもレスナ共和国が来ます。そして今回は王都からの援軍はまず来ません」
「王都側も四か所から攻められる上に、イズールド家と深く関係していた家を動かせないので尚更です」
「もしかしなくてもやばいですかこれ?」
「いえ、大丈夫だと思いますよ」
リア様が頬を緩めて笑っている。
何か作戦でもあるのだろうか?
「ここ、ノーザンラントにはハヤトさん率いる強者の方々が多数いるじゃないですか。兵士数なんてお飾りだと私は考えていますよ」
「ふん、確かに」
「いざとなれば竜王に私から声を掛けます」
「主殿、私にお任せを……涎が出ます」
「ガレリアが後ろにいるなら……私頑張るからね」
フェイルとライベルとヤクモ、そしてレナがやる気だ。
そうか、前回ですらあの人数で大丈夫だったんだ。それに今回はヤクモとレナがいる。
「わらわは街を守ろう。うむ。主に自宅を」
「…………」
自宅警備員が一人、戦力にはなりそうにないな。
「ハヤトさん、勝てますか?」
リア様が試すように聞いてくるが愚問である。
「リア様の期待に応えられるように頑張るだけです」
ちらっと見るとナルドが力強く頷く。
「頼りにしています」
「はいっ!」




