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王都からの帰還

「お前も男爵か、貴族とは随分とこの世界で出世したではないか」

「俺も驚きました、まさか眠っている間に出世しているとは」

「貴様の守りたいものは守れているようだな」

「はい、ミスミさんのおかげです」

「くふふ……何年経とうとも恩を忘れないのは貴様の美点だな。褒める所だろう」

「ありがとうございます。ミスミさんは今までどこへ?」

「わらわは根無し草。当てもなくこの世界を旅していただけだ」



 ハヤトさんが目を覚ましてから数日、事あるごとにミスミさんって方と会話をしています。

 これまではずっと私の傍にいましたのに……なんでしょう、もやっとします。


「ハヤトはまた師匠とやらと話しているのか」

「ナルドさん」

「全く、あんなに嬉しそうに話して、よっぽど尊敬しているんだろうな」

「そうだと思いますけど……」


 じっと見ていると隣でナルドさんが不思議そうな顔でこっちを見ていた。


「なんですか?」

「いえ、怒っているなと思いまして」

「私が? どうしてですか?」


 詰問のようになってしまったが、これは事実だ。

 私は理由もなく怒ったりはしない、心外である。


「ねえ、ナルドさん。私は怒ってなどいませんよ?」

「いや……いや……ああ、そういえばケルンに呼ばれてるんだった。失礼します」


 ナルドさんはわざとらしく逃げて行った。

 全く、酷い冗談です。




「くふふ……貴様は随分と好かれているようだな」

「……? どういう意味です?」

「いや。それで、いくつか頼みがあるんだったか」

「はい」


☆☆☆


 俺はミスミさんを連れてレナの部屋にやってきた。

 レナはベッドに腰かけながらぼんやりと外を見ていたようだ。


「ハヤト……とミスミ様?」

「ミスミで良い、ふむ……これか」

「え? え?」


 ミスミさんに近づかれレナは困惑の表情を浮かべながら俺を見た。


「ほら、レナのその装飾品、今は動きが無いみたいだけど今後またガレリアが動いたら不便だろ? だからミスミさんに見てもらおうと思って」


 ミスミさんが装飾品をじろじろと見て、何度か触れる。


「待ってください、これ強引に壊そうとすると首が閉まって」

「分かっている。魔道具に近いな、術式が込められているが問題ない、魔力で干渉して動作を一時的に麻痺させる。ハヤト、見ておけ。魔力をゆっくりと流し込んでいくんだ」


 言われて近づく。

 良い匂いがした。


「あの、ハヤト……近い」

「ご、ごめん」


 レナが顔を赤くする。

 女の子の細首に顔を近づけてまじまじと見るって何かエロいよね、見られる方も嫌だよね。


「ハヤト、わらわはこれを見ろと言っている。それとも今後また同じようになってわらわに泣きつくつもりか?」

「はい、すいません。レナごめん、我慢して」


 ミスミさんが魔道具を掴み、ゆっくりと魔力を流していく。


「分かるか? この魔道具には魔力の線が入っていて微弱な魔力が常に流れている。これが乱れると装飾品が作動し流れる魔力を強化し魔力の流れを強引に作ろうとするんだ。結果、暴走状態のようになる、全くもってこれを付けた奴はどうかしている」

「は、はぁ……」


 なんとなくわかるような分からないような……。


「ならばだ、魔力の線をそのまま通常状態のまま壊すんだ」

「どういう事ですか?」

「行くぞ、まず魔力を流し、同調させる」

「魔道具の魔力の質に合わせるんですか?」

「この魔道具は魔力の質なんて感知できていないからわらわの魔力で十分だ。で、正常のまま……」


 ミスミさんは一気に装飾を二つに割り、地面に投げ捨てた。

 ボン……という音と共に魔道具が爆発する。


「本来であれば首で爆発するから並の人間なら余裕で死ぬだろう。生身の人間に着けるものではない、どうかしているな……」


 やれやれ……とため息をついた。


「ありがとうございます」


 レナがお礼を言うとミスミさんは大したことないと片手で手を振り歩いて行く。

 ミスミさんかっこいいなぁ……と思いながら俺も後に続いた。




 それから数日が経過して、王都を旅立つことになった。

 もともとはもっと早く帰るつもりだったし、長居しすぎたかもしれない。

 キース家で熱いお別れ会が行われ。

 ナルドが爺さんに泣きながら頭を撫でられていた。

 煙が出そうな位の摩擦力で撫でられていたけど頭皮は大丈夫だったのだろうか?

 リーゼも来てリア様や俺にお礼を……そしてナルドに個人的に話をしていた。

 

 王都に来てすぐのパーティの時と違い、ナルドもリーゼも穏やかに笑っている。

 きっと昔のような関係に少しは戻れたのかもしれない。

 ともかく、俺達は王都を後にした。

 馬車の中は来た時より大分人が増えていた。

 ライベルとフェイルは当然として、更に。


「貴様も似た空気を感じるな、日本の?」

「はい、ハヤトとは同じ時期に」

「ほう……」


 レナとミスミさんが新たに仲間に入った。

 どうやらノーザンラントに共に来るらしい。


「賑やかになりますね」


 リア様ににこやかに話しかけたのだが。


「そうですね」


 リア様は頬を膨らませている。


「あの、何か?」

「別に何でもありません」

「ええ、でも」

「…………」


 不満げに頬を膨らませている。一体どうしたんだろう?

 結局リア様から理由を聞けずじまいでローファス領に着いた。

 道中は危険もなく、王都から帰還したのだった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

王都編はひとまずこれでおしまいです。

次の章は暫く内政とかラブコメとかキャラの掘り下げとか出来たらなぁ……と思ってますので今後ともよろしくお願いします。

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