本妻問題
ノーザンラントに帰還して一か月が経過した。
その間に東のテイズ高原隣の水田はどうなったのか見に行ったり、鉱石はしっかりとれているか見に行ったり、ハイフの武具作成はどうなっているのかを見に行ったりしていた。
結論から言えばどれも順調に進んでおり、胸をなでおろす形となった。
だが、安心したのもつかの間。それは突然やってきた。
それは本部でご飯を食べていた時の事。
デフがもそもそ口の物を飲み込んでからちらっと俺を見てきた。
「そういえばさ、ハヤトに聞こうと思ってたんだけど」
「なんですか?」
「お前の本妻って誰なの?」
「ぶっ!」
思わず食べている物を噴き出してしまった。
「汚いぞ!」
ナルドに怒られた。
「ほ、本妻ってどういう事ですか!?」
いきなり何を言い出したのかとデフに突っかかると。
「だってさ、お前リア様いるじゃん、それなのに今度は王都から別嬪な嬢ちゃんと健康系美少女連れて来ただろ。一体誰が本命なのかなって」
「いやいやいやいやいや、リア様は俺の主ですし、ミスミさんは師匠ですし、レナも昔の仲間ってだけですよ。ねえナルド?」
「え、うーん。。でもミスミさんにもレナさんにも家与えて住ませてるんだろ?」
「レナは住居が無いって言うので可哀そうだなって思って。あとミスミさんは家を作らされたの方が正しいですよ、あれこれ文句も言われて」
「ミスミさんよくお前ん家にいないか?」
そうなのだ、ミスミさんは手間かけて俺に家を作らせたくせに何かって言うと俺の家に来ては酒を飲んでいる。
「そうですね、まあ自由な人なので放っといてます」
「モテてんなぁ……」
デフがしみじみ言う。
「そんなんじゃないと思いますけど」
そんな話をしていると本部の扉が開いた。
長い黒髪を後ろ一本に結っている、噂の健康系美少女レナだ。
「あ、いた。ハヤト、昼から暇?」
「予定はないよ」
「そう。じゃあ魔法の練習付き合って」
「了解、どこ?」
「街の西の入り口出てすぐのところ」
「分かった」
「ふふ、待ってるね」
レナとはノーザンラントに帰ってきてからちょいちょい魔法の練習をしている。
基本的にはレナが魔法をぶっ放し、俺がそれに耐えるという事が多い。
意外にもレナは魔法の研究に熱心であり、様々な方法で魔法を変化出来ないか、魔法で出来ることをもっと増やせないかと活用法を探しているようだ。
勿論結局必要なのは威力なので、俺をサンドバックのように使っているのだが。
「いや、お前ら恋人か!」
「恋人って、どこの世界に魔法の練習をする恋人がいるんですか」
「ここにいるだろ、うわっ、なんかもう僕見ていて胃もたれしてきた」
「それ言ったらナルドだってそうじゃないですか、リーゼ様とは文通しているんでしょう?」
「ぶ、ぶぶ文通じゃないぞ、ただの定時連絡的な何かだし? 副領主として日々の業務を報告したりしてるだけだぞ。当然の事だ。」
「辺境の男爵領の副領主の仕事ぶりを王国の女王陛下が把握している必要ってあるんですかね」
「分かる、ナルドの奴も王都から帰ってきてからなんか色気づいてやがんだよな、陛下からの手紙を見てたまににやにやしてて気持ち悪いし」
「べ、別ににやにやなんてしてないぞ! 気持ち悪いとは失礼だな!」
「あーあ、俺にも浮いた話は来ないかねえ」
「あれ、でもデフって少し前に女の人と歩いてませんでした? グラマーな感じの」
「あれは飲み友達だ」
「茶髪の細い子は?」
「あれは話友達だ」
「んん?」
あれれー、おかしいぞ?
「それって……」
「止めとくんだハヤト、僕らにはまだ早い」
ナルドに止められ、デフは何でもないような表情をしている。
こいつただの遊び人じゃねえか……と思ったが言わないことにした。
「で、フェイルはそういった浮いた話は無いんですか?」
「私ですか? いえ、私はハヤト様一筋ですので」
「あ……ああ、そう」
何だろう、嬉しくない。
嫌ってわけじゃないけど男からの一途な想いは全然嬉しくないぞ。
「ん? そういえばハヤトから聞いてけど幼馴染の竜王ってのがいるんじゃなかった? あれは違うのか?」
「竜王? ああ、シュテンの事か。あれはただの喧嘩友達だ、何でもない」
フェイルは真顔で言うが、俺が見た感じだと多分シュテンは喧嘩友達ってだけの関係とは思ってないんじゃないかなぁ……と思うんだけど。
とりあえず、昼食を食べ終わった俺は街の西口に向かった。




