私が紡ぐ魔法(クーシュ視点
【クーシュ視点】
(聖人様が授けて下さった。私は聖人様の賢者なのだから)
導かれし力を束ね、私が紡ぐ魔法、初めての私の魔法。この喧騒をかき消すための静寂をもたらす力が欲しい。
(だってやるしかない)
「静かなる水のたゆたう陸地、水は母なる大地に還れ。ウォルトーン」
導かれし魔力は、必ず力ある言葉に変わる。魔法の節理が、その場を支配して世界に効果を及ぼして行く。
水は静けさを残したままに、突如地面から膝の高さまで湧き出し、大地と溶けあうように沈みぬるむ。
(視界が――)私の瞳が明るさを取り戻し、
「術者の精神がぶれて効果が消失したようね。それにしても、あなた3属性も親和があるの?」
トンガリ帽子の少女が、少し拗ねる様に言います。でも私は、魔法が上手く言ったことが嬉しくって、
「はい。私は聖人様の賢者ですからッ」
と、胸を張って答えます。なんたって、私は聖人様の賢者ですから――
「その聖人様ってなによ」
トンガリ帽子の少女が笑うのを見て、今度は私が頬を膨らませて拗ねて見せます。
「そこまでッ。魔力を練った者は敵対行動とみなす。負傷者の応急処置を早く」
姉様の力強い声が響くと、風月のメンバーと思われる人たちがゆっくりと近づいてきます。白いクロークに身を包み、負傷者の手当てと最後になにやら額に手をかざしています。よく周りを見渡すと、既にオース様を始め数人の冒険者が姉様の後ろに並んでいます。
「くっ」
少女もまた気付いたのでしょう。未来が閉ざされているかもしれないことに――。私の胸もまた不安でいっぱいになるのです。そして、この騒ぎは何だったのでしょう。不安だけが胸に残ります。




