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聖人様の賢者(クーシュ視点

【クーシュ視点】

 不安な心と、聖人様がくれた希望が背中合わせになってふわふわします。確かに術式は在り、魔法に至る術式の限界が第3階梯でしかないとしたら――。


 聖人様が私を賢者と信じ、信じるから私が賢者になり第4階梯に至っているとしたら――。


 ひいお婆様がする昔話には、いつも嘘のようなすごい物語で溢れています。


 信じる心から生まれるものもきっとある。


「うおおおおおお」


 きっと誰もがどこか遠い世界を見ていたのでしょう。心ここにあらずで、きっとそんな世界から戻って来たのでしょう。虚から歓声があがります。


 隣の男の子もまるで夢を見ている様に心あらずのままなのを私はただ見つめて、私自身もまた本当なのかもしれないと思い始めているのでした。


「さぁ。手本はこれでいいかしら?オースやり過ぎよ。魔法の本質は始祖マリオンへ至る道だから教えてはいけない」


 ティナ姉様が、驚くことも無くオース様を諭すのでした。オース様の第4階梯は、奇跡と呼べるはずです。いえ、姉様はもっと遠くを見ているのでしょうね。


「向こうは幸運にも海なのだから心気なく見せて貰うとするわ」


 オース様の爆炎の光と煙のあと、雲が月を隠し海は音だけを残して暗く、それはまるで私たちの魔法の輝きを待ち望むかのようでした。


 私は混乱も冷め止まぬ中、


「私の想いが届きますように」


 私は跪坐ひざまずき、そのままの状態で空に向かって魔法を唱え様とすると、前回とは違うごっそりと身体の魔力が喪失していき吐く息すら白く凍えます。


 今の私にはきっと出来る。私は――、聖人様の賢者なのだから。


「ファイアレイン」

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