月に見るもの(クーシュ視点
【クーシュ視点】
きっと雲の向こうにある二つの満月の月も、今夜ばかりはきっと私を見ています。人の絶望や希望や多くの人の思いの中に、きっと私も今日立っているのでしょう。辛い思い出も埋めていくような、後悔の無い日々を聖人様と一緒に笑っていたい。
私は白い息を吐きながら、今は見えないはずの月を見ていたんだと思います。魔力は空に帰るように、私の想いが空に突き抜けて行くそんな夜に光が差し込みます。誰もが全ての動きを止めて、空を見上げているのを感じるんです。これが私が私自身の足で賢者として生きる最初の一歩――
「オース?」
――姉様の声。
「――いえ」
オース様の声――
私も少しでも近づきたい。私の魔法が、もうすぐ姉様の目にも――、これがファイアレインだと気付いてもらえるはず。(あれ?こんなに魔力を失うのかな)
目が霞んでいきます。
魔法が顕現出来ずに霧散して、光の粒子になって降り注ぎます。夜を照らした光は、魔力の粒子に変わって雪の様に静かに溶けて行く。
『驚かせんなよ
やっぱりなあんな子供が使えるわけねぇよな
詠唱が終わっただけでも凄いと思うけど?
流石オース様だ。第4階梯の奇跡は本物だ』
肩で息を切らしている私の横で多くの言葉が飛び交います。(そんなはずない。こんなんじゃ、私は聖人様のいる世界にはいない)
「オースッ‼︎」
喧騒な会場に、姉様の怒声が響き渡るのでした。




