明暗を分けるのは②(カレン視点
【カレン視点】
終わりは唐突で、最初に脱落した周囲の者には、始まってすらいないように見えるだろう。
(しかし、そうでは無かったと私たちだけが知っている)
「納得がいかねぇ」
最初に吠えたのは、バックラー持ち男だった。顔だけで言えば、禿げの方が一番納得してない表情をしているのだがな。
いや―――。ここにいる全員が納得していないとも、言えるのかも知れない。
「やれやれ。分かれよ」
龍三がやや呆れたような声で言う。
「一撃を凌いだ盾持ちとの違い、お前は空いた手に盾を持ったと言ったところか」
「なんだよ。その言い掛かりみてぇのは、片手に剣を持てばもう片方で受ける手段を持つ。冒険者として当たり前のスタイルだろう?そうだろう?」
あたいたちに同意を求めるように、身振り手振りジェスチャーするバックラーの男を見る。
(違う。違うのだ。あんたは、あたい達の世界にいない)
「あんたの後ろには禿げが陣形を組んでただろう?」
白髪の女性の言葉は、どことなく刺々しく、蔑む様でさえあった。
そう―――、禿げが一番納得してない表情をしている理由がそれであった。
「だからなんなんだよ?」
「お前、足が遅いんだよ」
エフルの弓使いが言う。
「なんなんだよ。足が遅いって意味がわかんねぇぞ」
「あの瞬間、お前は前に出て禿げを行かせるべきだった」
「あ?」
冒険者間の空気が、丁度臨界点を迎えようとした頃合いに龍三の声が響いた。
「まぁ、待てエルフの男。まずお前の目は真実の眼だな?」
龍三がたしなめるようにエフルの弓使いへ話しかける。
「あぁ。そうだ」
そこですとんと腑に落ちた。道理であのファーストタッチの暗黙の了解を破って来るわけだ。
真実の眼は、攻撃を成す前に相手に攻撃が当たるか当たらないかを予見する。攻撃が必ず当たらないことを、あたいに知らるためわざと外れると分かっている矢を射たのだ。
「後ろの嬢ちゃん。あんたもよくやる。最後のはスキルか?少しだけ焦った」
「いや。無意識だ」
あたいは素直に答えた。
「そうか。それにしても迷いの無い動きは連れて行くに値する。あと白髪の女。お前は年の功だな上手かったよ」
「あら。いつ私が年上なんて言ったかしら?」
(いまのは地雷だな)龍三もそう思ったのだろう、頬を掻いている。
「話が脱線しちまったな。短剣使いも合格点だったが、わりぃがガキは連れて行けなかった。これは俺の気持ちの問題だ」
しばしの沈黙が生まれる。
「あと、バックラー持ち。お前の判断もまた、正しかろうよ。エルフと嬢ちゃんは気付いてたんだろう?基準を満たしてねぇんだ」
あたいは押し黙った。正直、あたいは本能でヤバイと感じて、本能で戦闘のイロハを理解した。つまり、言葉では説明がつかなかった。
エルフの弓使いがあたいの沈黙を破るかのように、
「あぁ。分かってたよ。最初の殺気の目的は2つ。1つは間者の確認、ここは白だった。まぁそれは、あんたのクランの暗部でも確認済みだったろう。2つ目が本当の目的だ。俺たちはこれからかなりヤバイところに連れて行かれる。そこで、俺たちがどう言う根っこなのかを見たかったんだろ?」




