複雑な名前
主人公視点
「聖人様、私も行きます」
俺はそう言って歩みだすクーシュの背中を見つめていた。
誰もがそれぞれ背負っているものと、向き合うように乗り越えて生きて行くしかない。スキルなんて無くっても、『ここで俺は生きて行く』そう決めたんだッ。
「クーシュ。希望の先で待ってるから(俺もちょっと行って来る)」
――執念。
いまあるもので、イズミとの対談を乗り越えてみせる。
俺がイズミのいる中央に着いたときは、俺を入れて4人の諜報職と思われる冒険者が既に集っていた。
「まずは、誰からでもいい名乗って貰おうか」
イズミの声が上がってから、しばらく誰も動かなかった。名乗るだけなら、誰も名乗らないのなら――
「俺はアランハルト、14歳だ」
(ん?なんだこの空気は、イズミも頬をかいている)
「ぶっは、アハハハッ腹いてぇ。こちとらめちゃくちゃ緊張してんのに笑わせんなよ」
カレンと同じ紅い髪の女性が、声を上げて噴き出している。そしてお腹を押さえながら、
「本名と年齢をイズミは聞きたいわけじゃないんだよ。よく使う偽名をまずは言えば良いんだ。風月の情報網だ、それだけで分かるんだよ。勿論無名なら、スキルを見せたほうがいい」
女性がそう言いフードを取ると、ぴょこんと飛び出るうさ耳があった。
「あたしは、ワンサード。ウサギと猫の獣人の血と、人族の血が混じってる」
(複雑な偽名だな……。しかし――、どうやって切りぬければいいんだぁぁあぁ)




