祝福の意味するもの
主人公視点
月明かりに照らされて、少しだけ見える夜道を進んでいた。『異世界転生』として初めて踏み出す一歩に、人との繋がりに気持ちの高まりを感じている。
「なぁ。祝福を受けるのは難しいのか?」
ヒズナに来てから、少し引っかかっていた。成人の儀は、誰もが受けることが出来るものだと思い込んでいた。
「聖人様それは、難しいと思います」
それは、この世界ではじめて成人の儀について教えてくれたショタの言葉だった。賢者の力を授かったことを祝福だと喜んでくれたよな。(でもそれは、本当の意味での祝福ではないってことなのか?)
「アランは、勇者から勇者が生まれる意味が分かるか?」
カレンがそう言ったが、俺にはピンと来なかった。たぶん、そんな顔してたんだろうな。確かにゲームだった頃は、クリアすると勇者の子供として始まる2周目に疑問を持ったことはなかった。
「あたいたちが祝福を受けると、困る連中が沢山いるってことさ。あたいたちは、祝福を受けることも出来ない――哀れな存在でなければいけないんだ。勇者崇拝の選民思想さ」
カレンは、力なく俯いてしまった。俺はカレンの苦しみや、悲しみを、本当の意味でわかることは出来ないのだろう。
カレンがこれまでに受けてきた苦しみや、カレンが見てきた悲しみは俺にはわからない。
俺が知っているのは、中学校で習うユダヤ系の一連の歴史的な事実だけだけど、もし人類の希望が同じ血筋からずっと生まれてしまったら、――そこには俺が想像も出来ない軋轢が生まれてしまうのだろう。それがゲームなら、勇者強すぎ(笑)とかで済むことが、現実では勇者崇拝や選民思想、勇者の真似事に繋がって新たな悲しみを生み出していく。
「クーシュが賢者なのは祝福とは言えないのか」
それこそ、祝福じゃないのだろうか(成人の儀がなかったから、祝福じゃないってわけじゃないよな)
「あたいも、クーシュが賢者なのは驚いたよ。でも成人の儀は、市民権のある者に例外なく12歳で行われる厳格な儀式なんだ。クーシュが成人の儀を受けれてないことは、絶対に分かってしまうんだよ。そして――クーシュの賢者はハイエルフ固有のものだと思う」
それまで黙って聞いていたショタが口を開く、
「カレンさん私は、確かに奴隷でした。私のひいお婆様が、ハイエルフでしたが私はその知識を受け継ぐことは叶いませんでした」
カレンが難しい顔をして、少し考えた後――
「恩恵には、祝福によって得られる先天性のものと、生まれや行いで偶発的に発現する後天性のものがあるから、クーシュの賢者は、精神的なきっかけで発現した後天性のものじゃないだろうか」
「そんなんじゃないッ。これは聖人様がくださった祝福なんですッ。あっ。大きな声だしてごめんなさい」
ショタがあんなに反応したことで、いやもっと以前のショタの喜ぶ様子から俺は察さないといけなかったんだろうな。ショタも賢者であることに人には言えないような苦しみや、悲しみを背負っているのかもしれないと俺は今更ながら気付いたんだ。




