砂の悪意に晒されて
主人公視点
「――そうか」
カレンの笑顔に急に影が落ちた。
「そんな顔しなくてもいいんじゃない。いまは自由なんだし」
「あれっ。あたいそんな顔になってたかい」
「「あはは」」
みんなで笑った。ゲームだったときは、勿論会話なんてできない。――NPC。ゲームと現実ってやっぱちげーよ。こんなに世界は面白くて、出会いって溢れてたんだな。
死んだら終りなのかもしんねぇけど、それは現実でも一緒なんだから何もかわんねぇ。
俺たちは魔物と遭遇することもなく、ラシュム高地を抜けていた。何もなく順調で、歩む速度も予定通りなくらいで、これなら日が沈むか沈まないかくらいでヒズナに入れそうだ。途中から荒地特有の砂地へ地面が変わり、足を取られ疲れが蓄積されている。ゲームだった時にはない、ほんのささやかなこと。
「ヒズナ見えてきたぞ。クーシュ」
11歳には少しばかり長かったようで、途中から話さなくなっていた。
そんなショタも――
「やったぁー」
ようやく少しの笑顔がもどる。俺も、ひと息の空気を吐き出すと歓喜する。――順調だ。俺たちはまだ5キロほど離れているだろうヒズナへ、時々疲れから砂地で転びながら近づいていく。
そんな俺達をよそにカレンを見ると、少し焦ったように周りを警戒し始めた。(ん?何か見落としていたか)
――そんな時だった。
3メートル先の砂からまるで虫が這い出すように、砂がいくつもいくつもごそごそと盛り上がり。――白い何か。
「武器はあるか?構えておけ」
カレンが、直剣を抜いて立ち止まる。
「姉さん」
すぐさま呼応するかのように、レンフォードも剣を抜く。ショタが不安そうに、俺の後ろに隠れる。徐々に人の頭蓋骨が、砂からいくつもいくつも――
「カレン?」
「しっ。生体感知される」
ぞわりとした感覚が俺の背中を過ぎ、気持ち悪い胃痛が走る。ゲームだった時は、聴覚感知と生体感知は別物だった。俺の油断だ。(ゲームの知識でどうにかなる?馬鹿を言うなそんな感覚じゃない)
ショタは俺の後ろで、嘔吐していた。(あぁ。解るよ。本当は生きているはずのないものが動いている嫌悪感――)現実はやはりゲームとは違う。




