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第七章:物語の始まり?

アンナはゆっくりと目を覚ました。


気がつくと、自分は秘密基地のソファの上に横たわっていた。見渡す限り、周囲には誰もいない。先ほどタブレットの過負荷オーバーロードで気絶したときの疲労感がまだ体にべっとりと残っており、耳の奥には図書館のような静寂だけが広がっている。


体が鉛のように重い。アンナは天井を見つめ、気づけば深く、深く沈思黙考にふけっていた……。


「はぁ……」


誰もいない部屋に、やるせない溜息が白く消えていく。


(私、どうやったらこの場所から抜け出せるんだろう……。何もかもが難しすぎて……これから一体、どうすればいいの……?)


ネガティブな思考は、一度溢れ出すと止まらない。アンナは疲れ果てて目を閉じたが、わずか三秒後、カッと両眼を見開いた。そして勢いよく起き上がると、自分の両頬を両手でパン、パンと叩いた!


違う! こんな風にウジウジ考えてちゃダメ! 問題が起きたなら、作者である私が自分の手で解決しなきゃ!


アンナが立ち上がり、外へ歩き出そうとしたまさにその時、部屋の木製のドアが「ガチャリ」と音を立てて開いた。


「あ、ご、ごめんなさい! アンナさん、目が覚めたんですね! よかった……! お体、もう大丈夫ですか?」


ヒカリが盆に載せた水を持って入ってきた。その顔には喜びが満ちており、同時に心配そうにアンナの様子を窺っている。

すると、物音を聞きつけたアイクも足早に部屋へと入ってきた。その瞳には深い気遣いが宿っている。


「アンナ、具合はどうですか? どこか痛むところは?」


二人がこれほどまでに自分を心配してくれていることに、アンナの胸がじわりと熱くなる。しかし、ヒカリはアンナに近づくなり、すぐに九十度深く頭を下げて、涙目を浮かべながら猛烈に謝り始めた。


「本当に、本当にごめんなさい! 私、あんなことになるなんて知らなくて……私が余計な提案なんてしなければ、アンナさんが……っ!」


「大丈夫よ! 気にしないで!」アンナは慌ててヒカリの肩を支え、安心させるように微笑んだ。「あなたのせいじゃないわ。この私でさえ、あの液タブにそんな『制限』や代償があるなんて知らなかったんだから……。だから自分を責めないで」


アンナはヒカリをなだめ、ふと窓の外へと視線を向けた。いつの間にか外は薄暗くなっており、もうすぐ夜が訪れようとしている。


「それで……次はどうする?」アンナは沈黙を破った。


アイクは傍らに立ち、アンナのまだ青白い顔色を見つめながら、少し躊躇うように口を開いた。


「ですが、僕たちは二人とも深い傷を負っています。まずはここで身体を休めて、明日の朝に出発した方がいいのでは?」


しかし、アンナはきっぱりと首を横に振った。その瞳には強い意志がある。


「もしこれ以上引き延ばして、万が一『劇本プロット』が他の誰かや、悪い奴の手に渡っちゃったらどうするの?」


隣で聞いていたヒカリも、一理あると納得したように小さく頷いた。

アンナは歩み寄ると、アイクの肩をポンと叩いた。


「大丈夫、きっとうまくいくわ!! そうと決まれば、早速行きましょ!」


二人の決意を見たヒカリも、もう止められないと悟った。そして足元で名残惜しそうに身を縮めているラルを見つめ、優しくその頭を撫でた。


「ラル、ごめんね……。さっきの戦いでたくさん傷ついちゃったから、これからの行動は、ここでゆっくり休んでいてね」


犬の大きさに縮んだラルは、クゥンと寂しそうな声を漏らし、ヒカリの手のひらに頭を擦りつけた。一緒に行きたいと、その瞳が訴えている。

ヒカリは根気強くラルの耳のあたりを揉みほぐし、小さな声で慰めた。


「大丈夫、きっとすぐにすべてうまくいくから! 良い子で待っててね!!」


夜の帳が下りようとしているが、危機に満ちたこの世界において、時間こそが命だ。三人は一刻の猶予も惜しみ、すぐにあの神秘的な森林へと足を踏み入れた。


すっかり陽が落ち、森林の中は地を這うような深い陰影に包まれていた。


ヒカリとアンナが前を歩き、アイクは警戒を怠らずに周囲を見渡しながら、二人の斜め後ろを歩いている。


「……何か、おかしい」アイクが突如として足を止め、低い声で言った。


前方を行くヒカリとアンナが不思議そうに振り返る。「どうしたの?」


アイクはまだ癒えていない肩の傷口を軽く押さえ、険しい表情を浮かべた。


「うまく言えませんが……魔物の毒と傷のせいで、今の僕には周囲の気配を『探知』する能力がまったく働かないんだ」


その言葉を聞いた瞬間、繊細なヒカリの顔から血の気が引いた。彼女は申し訳なさそうに、すぐに自分を責めるような声を出す。


「本当に……ごめんなさい……私のせいで……」


「いや……気にする必要はありません」アイクは優しくヒカリの謝罪を遮ると、アンナを見た。「アンナさん、まずはあなたが初めてこの世界に現れた場所に行ってみませんか? ここからなら、すぐ目と鼻の先です」


アンナは頷いた。「そうね! まずはそこへ行ってみましょ!!」


三人は記憶を頼りに、かつてアンナとアイクが初めて降り立った空き地の近くへと辿り着いた。しかし、アンナがいくつかの茂みをかき分けたその瞬間、彼女の視線が地面の一点に釘付けになった。


そこには、少し古びた一枚の「紙片」が静かに落ちていた。


「嘘でしょ……」アンナは呆然とこめかみを押さえた。「私、当時は全然気づかなかったわ。まさかこんなにすぐ近くに落ちていたなんて……」


アイクとヒカリがすぐに駆け寄ってきた。アンナは紙片を拾い上げ、わずかな月光を頼りに文字を読み進める。そこには、大きな文字でこう殴り書きされていた。


【第二章:アンナ、アイク、ヒカリ】


その文字の並びを見て、アイクとヒカリは困惑の表情を浮かべた。


「これって……この章に登場する主要人物のリスト、かしら?」アンナは推測しながらも、眉をひそめた。「でも、一体全部で何章まであるの……?」


三人が顔を見合わせ、深い思考の迷宮に陥りそうになったその瞬間――。


「それを渡せ!」


冷酷で、剥き出しの殺意に満ちた怒号が、三人の背後の闇から突如として響き渡った!


三人がハッと振り返ると、暗闇の中から、並外れて巨大で悍ましい姿をした魔物がゆっくりと這い出てくるところだった。その手には不気味な鈍色に光る長剣が握られており、剣先を真っ直ぐに一同へと向けながら、しゃがれた声で威嚇してくる。


予期せぬ敵襲に、その場の空気が一瞬で張り詰めた。しかし、アンナはその瞬間、かつてないほどの冷静さを発揮した。彼女は深く息を吸い込むと、自ら一歩前に踏み出し、負傷しているアイクを庇うように立ちはだかった。同時に、右手を背後に回し、アイクに向けてこっそりと二回手を振った。


アンナとの間に高度な黙契を築いていたアイクは、ハッと目を凝らした。即座にそのサインの意図を理解し、気配を完全に押し殺して、斜め後ろの影の中へと音もなく退いた。


「どうしてかしら?」アンナは両手を腰に当て、その美しい顔に挑発的な自信の笑みを浮かべた。「まさか……あなたもこれを集めているの?」


魔物はアンナの問いかけを鼻で笑い、不敵にフンと鼻を鳴らした。


「ふん、大人しく差し出すというなら、命だけは助けてやらんこともないぞ」


「あなた、自分が今どこの誰を相手にしているのか、まるで分かっていないみたいね」


アンナの口元が吊り上がった。言葉が途切れたまさにその瞬間、背後に隠されていた彼女の左手が、猛然と液晶タブレットを突き出した! そして、虚空に向かって流れるような動作で一筋のまばゆい線を走らせる――。


「アイク――ッ!!」


アンナの大喝とともに、虚空から一本の恐るべき鋭利さを秘めた長剣が具現化した!

同時に、後方に退いていたアイクが、まるで鬼神のごとき残像となって魔物の真後ろへと文字通り「転移」した! 彼は空中で落下する長剣をガシッと掴み取るなり、その両眼に凄まじい剣気を爆発させ、魔物が反応する暇さえ与えずに横一文字に一閃した!


ズシャアッ! *


鋭い剣光が過ぎ去り、魔物の肉体は瞬く間に、驚くほど綺麗に真っ二つへと両断された。


魔物は両眼を見開き、目の前の光景に完全に圧倒されていた。

(まさか……不意打ち……だと……?!)魔物は怒りに狂いながら思考した。


しかし、事態はそう簡単には終わらなかった。直後、魔物の死体の周囲から、圧倒的で狂暴な黒い「気」が噴き出したのだ! 三人が驚愕で見守る中、その両断されたはずの肉体が、まるで強力な磁石で引き合わされるかのように、無理やり再結合し、元の姿へと癒合していった。そればかりか、奴の手にある長剣にも、その禍々しい黒い気流が死死とまとわりついている。


目の前で起きたあまりに奇怪な光景に、後ろに隠れていたヒカリは顔を真っ白にし、声を震わせた。


「大……大丈夫なんですか、アンナさん!?」


「第二形態(フェーズ2)ってワケね……」アンナは奥歯を噛み締め、毅然と手を振った。「ヒカリ、もっと後ろに下がってて!」


「死ねぇッ!」


復活した魔物の実力は爆発的に跳ね上がっていた。奴はアイクを睨みつけると、咆哮一閃、弾丸のような速度で突進してきた!


キィン! カァン! キィィン! *


魔物の剣技は恐るべき凶暴さへと変貌を遂げていた。現在、探知能力を失い、さらに体に傷を負っているアイクにとって、相手の猛攻を防ぎ止めるのは尋常ではない困難を極めた。魔物が強烈な力で叩きつけた下段からの斬撃がアイクを圧倒したその刹那、魔物は天を仰いで猛々しく吼えた。


「オァァァァァァ――ッ!!」


耳を劈くような爆音とともに、魔物は勢いよく長剣を上方へと跳ね上げた。アイクは辛うじて剣で防御したものの、その山が崩れるかのような怪力に完全に均衡バランスを崩され、無様に地面へと叩きつけられた。


(くっ……なんて、デタラメな腕力だ……!)アイクは血を吐きながら歯を食いしばる。


魔物は倒れたアイクを見下ろし、それからゆっくりと視線を少し離れた場所にいるアンナへと移した。その瞳には、強欲な狂熱がギラギラと輝いている。


「なるほどな……。お前が例の『神器』の所有者か。ククク、どうやら俺の運気は最高潮にあるらしい」


魔物の挑発に対し、アンナは一切言葉を返さなかった。ただじっと魔物を睨みつけながら、手元のタブレットの上でペンを音速で走らせ、地面のアイクに向かって叫んだ。


「アイク! 今からあなたに『効果線スピードライン』を描き足すわ! タイミングを合わせて!」


倒れていたアイクはアンナを見上げ、視線が交差した瞬間、力強く頷いた。「ええ! お願いします!」


アイクは体に鞭打ち、長剣を支えに再び立ち上がった。彼が再び剣を握り締め、前方へと地を蹴ったその瞬間、アンナの画筆ペンが画面の上に極限の速度を現す筆致を無数に描き出した!


シュウウウゥゥン――ッ! *


『スピードライン』の補正を受けたアイクの速度は、もはや肉眼では捉えきれない極限へと到達した! 彼は一条の金色の流光と化し、魔物の周囲で目を眩ませるような高速移動を展開しながら、死角という死角から幾度となく斬撃を叩き込んでいく!


しかし、恐るべき事態が起きた。


その魔物は、まるで四方八方に目がついているかのように、アイクのあらゆる死角からの攻撃を、寸前のところで正確に防ぎ止めてみせたのだ。


攻めあぐねるアイクの心に、焦燥の戦慄が走る。

(僕の動きを予知しているのか? これほど手強い相手には……これまで出会ったことがない……!)


その時、最後方に控えていたヒカリも、ただ座して死を待っていたわけではなかった。彼女は恐怖を押し殺して無理やり冷静さを保ち、後方から必死に敵のモーションを分析しようとしていた。


(どんな相手にも、必ず一つは『弱点』があるはず……。アイクさんが、あとほんの少しでも時間を稼いでくれたなら……私が絶対に、奴の死穴を見つけ出してみせる!)


戦場の中心では、アイクが再び自身の固有能力を発動させようと試みていた。しかし、肩の傷口から走る毒の激痛に阻まれ、体内の魔力は空っぽのまま、能力は再び失敗に終わる。


魔物は目の前で急速に衰弱していく冒険者を見つめ、容赦のない嘲笑を浴びせた。


「お前たちの実力は、その程度か! あまりに脆弱すぎるぞ!」


言葉が落ちると同時に、魔物の全身から再び強大な暗黒の気が解き放たれた。狂暴なエネルギーが天を衝き、さっきまで静かだった夜空には、見る見るうちに滾々と湧き出る不気味な暗雲が立ち込め始めた。


制御不能となっていく戦況を前に、傍らに立つアンナの額からも冷や汗が流れ落ち、ペンを握る手が小刻みに震えだす。

(私の……私の身勝手な決断のせいで、みんなをこんな絶望的な状況に追い込んじゃった……)


それでも戦闘は終わらない! アイクは雄叫びを上げて再び魔物へと突撃し、アンナもまた歯を食いしばりながら、必死にアイクの後ろへスピードラインを描き続ける!


魔物はアイクの斬撃を余裕で受け流しながら、冷酷に嘲り続けた。


「後ろにいるあの女が描く、妙な線がなければ、俺の速度に追いつくことすらできんのだろう!」


魔物が一際大きく剣を振るうと、その怪力によってアイクの身体は遥か彼方へと吹き飛ばされた! しかし、アイクは空中で体勢を立て直すと、再び死を恐れずに前方へと突っ込んでいく!


その激しい攻防の最中、後方で観察を続けていたヒカリが、ついに魔物の細かな異変を捉えた。

――奴は攻撃に転じる時も、防御を固める時も、まるでそこだけを死守するように、執拗に顔面のある一部を庇っている。頭部の「右眼」だ!


「アンナさん! 魔物の右眼です! 奴はさっきから、右眼だけを異常に守っています!」ヒカリは喉が裂けんばかりの声で、前方に向かって叫んだ。


アンナの精神はすでに限界を迎えていた。彼女は激しく咳き込みながら、掠れた声で応じる。「ごほっ……右眼、ね……!」


アンナは最後の力を振り絞り、戦場の中心にいる男の名を呼んだ。


「アイク!! 右眼よ――ッ!!」


その指示を聞いたアイクの胸に衝撃が走る。だが、魔物のあの完璧な全方位探知を前にしては、見切られることなくそこを射抜くのは至難の業だ。


「だったら、これはどう!?」


アンナは狂ったように液晶画面を叩き、漫画的な『描き文字・エフェクト框』を連続で描きなぐった!


刹那、魔物の周囲の虚空に、実体化したインクによって構成された巨大な文字が次々と飛び出してきた。――【ドン!】 【カァン!】 【キラキラ】 【ゴゴゴゴゴゴゴ】というおぞましい太文字の擬音フレームが!


視界を埋め尽くす文字の暴力に、魔物は一瞬にして困惑の渦に叩き落とされた。奴の周囲を取り巻いていた黒い気と探知能力は、この実体化された「音」のエフェクトによって完全に攪乱され、麻痺したのだ。


好機チャンス――!」


アイクはその瞬間を逃さなかった。両眼に鋭い光を宿すと、残像を残して全速力で突進し、魔物の右眼を目がけて最後の一撃を突き出そうとする!


アンナもまた、勝負を決めるための『集中線』を画面に描き加えようとした。しかし、その千載一遇の刹那、脳を裂くような激痛が彼女を襲った。先ほどの過負荷の反動が、最悪のタイミングで襲いかかったのだ。


「げほっ! ごほっ、ごほっ、ごほっ……!」


アンナは突然四つん這いになって、激しく咳き込み始めた。


彼女が倒れると同時に、タブレットの光がぷつりと消えた。そして、アイクがまさに魔物の右眼を貫こうとしていたその瞬間、彼の手にある具現化された長剣が、何の前触れもなく無数の破片となって虚空へと霧散したのだ!


アイクは驚愕のあまり両眼を見開いた。(消……消えた……!?)


武器を失い、アイクの攻勢は完全に瓦解した。魔物の周囲を覆っていた擬音の枠線も消えていく。魔物はゆっくりと、残忍で勝ち誇ったような笑みを浮かべ、目の前の三人を取り除くべく剣を振り上げた――その時だった。


【ブゥゥゥゥン――!!】


ヒカリは気づいた。手の中に握られていたあの劇本の紙片が、何の前触れもなく青白い炎を上げて燃え上がっていることに!


妖しい炎の中で、元々書かれていた「第二章」の文字が焼き尽くされ、まるで魔法のように、自動的に新たな文字列へと書き換わっていく。そこには、大書された新たな文字が浮かび上がっていた。


【第三章:アンナ、アイク、ヒカリシュウ雅莉娜エリア


「シュウ……と、エリア……?」ヒカリはその突然現れた見知らぬ二人の名前を見つめ、困惑に目を丸くした。


しかし、その二つの名前が紙面に完全に定着した、まさにその瞬間――。


「――『ハイ・ライティング(高光時刻)』――ッ!!」


少年の猛々しい咆哮が、遮るもののない夜空から轟いた!


轟隆――ッ!!!!!


空を覆っていた滚々と渦巻く暗雲から、水桶ほどもある巨大な金色の雷霆が激しく引き裂くように落ちてきた! それは世界のすべてを滅ぼさんとするほどの強大な魔力を帯び、肉眼では捉えきれない速度で、魔物の脳天へと正確無比に直撃した!


「な、なんだこの魔力は……! おのれぇぇぇぇぇぇ――ッ!!」


魔物は絶望と苦悶に満ちた悲鳴を上げた。強大すぎる雷の暴力の前に防戦の一手を講じることもできず、奴の身体は一瞬にして、文字通り粉々に粉砕された!


ズゴォォォォォン――ッ!! *


天地を揺るがす爆発音が響き渡り、地面には巨大な深穴が穿たれ、周囲に猛烈な砂煙が舞い上がる。


「まったく……本当に手が焼ける人たちだな……」


煙塵の中から、少し呆れたような、しかしどこか親しみのある少年の声がゆっくりと漏れ聞こえてきた。


最後方にいたヒカリは恐怖と衝撃のあまりその場に硬直したまま、震えながら振り返った。翻る煙の向こうから、二つの人影がゆっくりと歩み出てくる。――一人は見知らぬ端正な顔立ちの少年。そしてその傍らには、法衣を身にまとった、凛とした佇まいの少女が立っていた。


その少女は倒れているアンナの姿を見るなり、その顔に一瞬で焦燥の表情を浮かべ、足早に駆け寄って彼女の身体を抱き起こした。


「アンナさん! 大丈夫ですか……!?」


地面にへたり込み、激しく咳き込んでいたアンナは、虚弱そうに首を巡らせた。そして目の前にある、あまりに馴染み深いその少女の顔を確認した瞬間、張り詰めていた緊張がようやく解け、血を吐きながらも、信じられないといった様子で声を絞り出した。


「ごほっ、ごほっ……エ、エリア……?」

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