表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/24

第四章:私、どうすればいいの?

第四章:交錯する宿命さだめ

「お前たち……一体何者だ?」

シュウの声は低く、押し殺したような怒りを孕んでいた。その刃のように鋭い視線が、目の前の二人を真っ直ぐに射抜く。


リビングの空気は、まるで凍りついたかのように静まり返っていた。アンナとアイクは顔を見合わせ、どちらもすぐには言葉を発せられない。アンナは深く息を吸い込み、震える声をどうにか落ち着かせようとした。

「私は元々……ここ違う、全く別の世界で暮らしていたの。この世界は、私が描いていた漫画の世界。そこに、どういうわけか突然飛ばされてきちゃったの」

彼女は隣の少年に視線を向けた。

「彼はアイク。私とは違って、別の物語の世界から召喚されたみたいなの」


アイクはシュウに向かって、真っ直ぐで濁りのない瞳でうなずいた。

「俺の世界も、こことは少し違うんだ。故郷じゃ冒険が大好きでさ。こんな風に飛ばされてきた以上、困っている人がいるなら、放っておくわけにはいかないよ!」


アンナは下唇を噛み、縋るような瞳をシュウとエリアに向けた。

「みんなの力が必要なの……」


「俺たちの力が必要だと?」

シュウは冷笑し、彼女の言葉を激しく遮った。その声には、信じられないという思いと、押し殺した怒りが満ちていた。

「自分が『作者』で、この世界の創造主だと言うなら、自力で帰る力くらいあるはずだろ。……それに、だったらなぜ、俺の村を滅ぼした? なぜ、俺のすべてを奪い去ったんだ!」


その問い詰めは大広間に響き渡り、一言一言が血を吐くような苦しみに満ちていた。シュウはアンナに一歩詰め寄り、声を荒らげる。

「作者なら、なぜ俺たちにこんな苦しみを与えた? 答えろ!」


アンナは答えられなかった。まるで取り返しのつかない過ちを犯した子供のように、深くうつむき、唇を震わせ、シュウの目を直視する勇気すら持てなかった。


「なぜ答えない?!」

シュウの胸は激しく上下し、その瞳には絶望と憎しみが入り混じっていた。最後に彼は深く息を吸い、込み上げる感情を強引に抑え込むと、冷淡に言い放った。

「お前たちを助けることはできない。俺には、果たすべき自分の目的がある」


そう言い残し、シュウは身を翻して去ろうとした。彼がまさに扉を踏み出そうとしたその瞬間、それまで沈黙を守っていたエリアが一歩前に出、シュウの袖をそっと掴んだ。彼女はシュウを見つめ、静かに宥める。

「シュウ、まずは落ち着いて。せめて彼女の言い分を聞きましょう……」


シュウが振り返った。その憎しみに染まった瞳に、エリアは一瞬だけ気圧される。シュウは何も言わず、ただその手を冷酷に振り払い、廊下の奥へと足早に消えていった。エリアはため息をつき、同情の目をアンナに向けた後、静かな足取りでシュウの後を追った。


「待ってくれ!」

アイクが引き留めようと立ち上がる。


「いいの……アイク」

冷たく震える手が、アイクの腕を掴んだ。アンナはうつむいたまま、消え入りそうな声で、懇願するように呟いた。

「行きましょう……」


街を離れる頃には、夕暮れの最後の残光が地平線へと沈み、夜の闇がインクのように空へと広がっていった。


アンナは林道を歩きながら、終始一言も発しなかった。アイクは黙って彼女の隣を歩く。その失意のどん底にいる姿を見つめ、何度も口を開きかけたが、どんな慰めの言葉を紡げばいいのか分からなかった。目の前の少女は神などではない。自分が作り出した悲劇に、今度は自分が苛まれている一人の人間(凡人)に過ぎないのだ。


突然、アンナが足を止めた。


空気が数秒間、凍りついた。やがて、強いむせび泣きを孕んだ、掠れた声が聞こえてきた。

「アイク……私、どうすればいいの? 本当に分からないの……あの時、これを描いていた時は、そんなこと何も考えてなかったの……」


アイクは何も言わなかった。今の彼女にとって、どんな気休めも虚しいだけだと分かっていたからだ。彼はただ黙って彼女の傍らに立ち、静かな傾聴者として、夜風が彼女の泣き声を攫っていくのに身を任せた。


二人は街の近くの森の空き地で、風をしのげる場所を見つけ、長い夜を越すために焚き火を起こした。アンナは火の傍らに力なく座り、震える手で愛用の液晶タブレットを取り出した。そして火の明かりを頼りに、一筆一筆、まるで自傷行為のように必死に絵の練習を始めた。


夜が更けるにつれ、森は静まり返り、薪が時折パチパチと爆ぜる音と、アンナの微かなすすり泣きだけが響いていた。静寂の中、息が詰まるような重苦しい空気が満ちていた。


深夜、アンナはついに深い疲弊に耐えかね、深い眠りに落ちた。微かな月光の下、彼女の目尻にはまだ乾ききっていない涙の跡が光っていた。


アンナが完全に眠りについたのを確認し、アイクは静かに立ち上がった。夜の冷たい空気を深く吸い込み、キャンプ地を後にする。二、三度の跳躍で、彼は街の中心で最も高い時計塔の頂へと駆け上がった。


夜空の下に佇み、突き刺すような夜風を受けながら、アイクはゆっくりと目を閉じた。


脳裏に蘇ったのは、昼間の衝突ではない。彼の記憶の奥底に深く眠る、彼自身の過去だった。

画面が切り替わる。傷だらけでありながらも慈愛に満ちた表情をした老人が、彼の手を強く握り締め、震えながらも確固たる声で告げていた。

『アイク……困っている人がいたら、助けてあげるんじゃ……たとえ最後には、お前自身が燃え尽きることになろうとも……』


直後、記憶の映像が激しく歪み、激しい炎に包まれた村へと切り替わった。立ち上る黒煙と容赦なく燃え盛る火海の中、アイクはただ無力にその場に立ち尽くし、自分の村が焼き尽くされていくのを、何一つできずにただ見つめるしかなかった。


「ふぅ……」


アイクはゆっくりと目を開けた。その瞳から迷いは消え去り、代わりに絶対的な確信と決意が宿っていた。彼は深く息を吸い、猛然と腕を突き出すと、声を潜めて一言だけ呟いた。


「――エクセス(Excess)」


刹那、目に見えない強大な精神力場がアイクを中心に一瞬で拡散し、不可視の巨浪となって街全体を包み込んだ。街の木々、建造物の構造、さらには微細な生命エネルギーのうねりに至るまでが、無数の鮮明な映像となってアイクの脳裏を駆け巡る。


次の瞬間、その膨大な力場は空中へと急速に圧縮され、最終的にアイクの掌の上で、一本一本の線が精密に描かれた、微かに光を放つ半透明の地図へと凝縮された。そして、その交錯する光の線の中に、不気味に明滅する一つの「赤点」があった。


アイクはしばらくその地図を見つめ、瞳に理解の光を宿すと、地図を懐に収めて再び夜の闇へと飛び降り、森へと戻っていった。


同じ頃、エリアの客室では――。


「バン!」と激しい音を立てて、シュウが乱暴に扉を押し開けた。その顔には怒りと苛立ちが張り付き、狭い部屋の中を苛立たしげに行ったり来たりしていた。


後を追って入ってきたエリアは背後の扉を閉め、取り乱す仲間の姿を、眉をひそめて見つめた。

「あなたらしくないわ、シュウ。普段のあなたは、誰よりも冷静なのに」


「冷静? これでどうやって冷静になれって言うんだ!」

シュウは猛然と振り返り、抑えきれない声を低く吼えた。首筋に青筋が浮かび上がる。

「あいつが何て言ったか聞いたか!? これを全部、自分が描いたって言ったんだぞ! 俺の村を滅ぼし、家族を皆殺しにし、俺のすべてを奪った元凶が……あいつなんだ!」


彼は苦しげに頭を抱え、指先を髪の奥深くへと突き立てた。


「シュウ」


エリアは静かに、彼の名前を呼んだ。


「あなたが苦しんでいるのは分かっている」


「あの日のことを、どうしても忘れられないのも」


「けれど、もしあなたがその苦しみだけに囚われ続けていたら……」


「いつか、あなた自身が闇の中に迷い込んでしまうわ」


シュウの身体が激しく震えた。部屋の中は一瞬にして死のような静寂に包まれ、彼の重く、押し殺した呼吸音だけが空気の中で虚しく響いていた。


翌朝、朝の光が木々の隙間を縫って、キャンプ地にまばらに降り注いでいた。


アンナはゆっくりと目を覚ました。見慣れない頭上の木々を見つめ、胸の中に麻痺したような苦渋がこみ上げる。――ああ、やっぱり、すべて夢じゃなかったんだ。


彼女は目を擦りながら起き上がり、首を巡らせると、アイクがすでに起きていることに気づいた。彼は近くの草の上に胡坐をかき、目を閉じて、深く長い呼吸を繰り返しながら、静かに瞑想を行っていた。


アンナの気配を察したのか、アイクは長く息を吐き出し、ゆっくりと目を開けた。その顔には、相変わらずあの温かく安心させるような笑顔が浮かんでいた。

「おはようございます、アンナさん。昨夜はよく眠れましたか?」


「うん……」

アンナは膝を抱え、小さく生返事をした。


アイクは立ち上がり、懐から昨夜の、微かな光を放つ精神地図を取り出すと、二人の間の草の上に広げた。


「さあ」

アイクはアンナを見つめた。その瞳には、決して揺らぐことのない闘志が宿っている。彼はその明滅する赤点を指差した。

「これからの対策を練りましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ