第24話 アイク vs 煇琉 1
「——ハッ!」
シルヴィアは眼光を鋭くさせ、踏み出した瞬間に残像と化して、自ら刀を振るいスケルトンキングに躍りかかった!
(ガキィィン——!!)
スケルトンキングは右手のマナブレードを掲げ、シルヴィアの勢いのある斬撃をガチリと受け止めた。火花が二人の刃から激しく飛び散る。
シルヴィアは弾き返されるどころか,口元に自信に満ちた笑みを浮かべた。
「フン……私のこの一擊を受け止められる奴なんて、そうそういないんだけどね。」
「 俺も手伝います!」
シュウが大声を上げ、刀を構えて側面から突っ込んできた。しかしスケルトンキングは振り返りもせず、ただ左手をひと振りして絶大なマナを圧縮爆発させた——(ドカン!)不可視の衝撃波が、飛び込んできたシュウを容赦なく吹き飛ばす!
畳みかけるように、スケルトンキングは手にしたマナブレードを振り回し、隕石のような重撃をシルヴィアの刀身へ立て続けに叩き込んだ!(ガキィン! ガキィン! ガキィン! ガキィン!)
シルヴィアは歯を食いしばり、両足を固い床に踏みしめて一歩も引かない! 彼女は一瞬で全身のマナを胸元へ急速に注ぎ込み集約させた——
「私から——退きなさい(離れろ)!!」
(ドドンッ——!!)
目に見える衝撃波が炸裂したがシルヴィアを中心に周囲へ狂暴に拡散し、強力な反発力が彼女を押し潰そうとしていたスケルトンキングを力任せに吹き飛ばした!
「もうあの技を使うのか……!?」遠くで体勢を立て直したシュウが驚愕してシルヴィアの背中を見つめる。
「こいつ.......」シルヴィアは自信たっぷりに口元を上げた。
言葉が終わる間もなく、シルヴィアは前進してスケルトンキングに狂暴な斬撃を繰り出しながら、空気中で素早く姿を明滅させ位置を変えていく。まるで優雅で致命的な美しき舞踊——【剣舞】!
傍らで見とれていたシュウも、再び歯を食いしばって飛び出し、シルヴィアの攻勢に合わせようとした。しかし、スケルトンキングはシルヴィアの剣舞を余裕でかわしながらも、シュウの攻撃軌道を見抜き、身を翻してマナブレードをシュウの腰の死角へまっすぐ突き刺した!
「聖なる治癒——!」
後方で全神経を集中させていたアリーナが即座に叫んだ! 白い治癒の光が瞬時にシュウの腰を包み込み、出来立ての傷をその場で修復する。アリーナは十二分の警戒を払い、スケルトンキングがシュウを捉える危機一髪の瞬間に、いつでも小さな光の盾を展開できるよう身構えた。
シルヴィアは刀を引き半歩退くと、シュウを振り返り、すぐさま眼前の威圧感を失わないスケルトンキングへと重苦しい視線を戻した。
「あなたが精霊王蘭特『ラント』ね……一体ここで何をしているの……? なぜこんな姿になってしまったのよ!?」
蘭特は答えなかった。ただ手にしていた使い果たされたマナブレードを静かに霧散させると、再び背筋を伸ばして構え直し、虚空からまったく新しいマナの長刀を形成した。
「シュウ、少し時間を稼いで。」シルヴィアが低い声で命じる。
「任せてください!」シュウは力強く頷き、再び前に立ちはだかった!
シルヴィアは深々と息を吸い込み、背中から大弓を外した。彼女はゆっくりと目を閉じ、弦を引き絞る——
その瞬間、洞窟全体の莫大なマナが猛烈な勢いで矢へと集束していった!
『マナよ……ひとつに集い、目の前の敵を喰らい尽くしなさい……』
「【竜の吐息】——!!」
シルヴィアの目がカッと見開かれた! 矢は牙を剥く巨大なマナの竜と化し、蘭特を完全に呑み込もうと咆哮した!
この天地を揺るがす一撃に対し、蘭特はただ片手でマナブレードを掲げて真正面から受け止めた!
(ズドドド——!)
怒涛の竜のエネルギーと黒い刃が空中で激しく衝突し、最終的に相殺し合って消滅した。ラントは再び戦闘姿勢を取り、手を握り締めると、またしても幽光を放つマナブレードを虚空から生み出した!
もう一方的精神空間では、
アイクと「偽伊織」が距離を挟んで対峙し、空気は凝固したかのように重苦しかった。黒霧の外ではエミとジョエルが矢で援護しようと試みたが、すべての攻撃は黒霧に触れた瞬間に弾き返され、まったく貫通できなかった。
「ハッ——!」
アイクが先手を取って激しく突進した! 偽伊織が刀を抜いて迎え撃とうとしたその瞬間、アンナが描画タブレット上にすばやく【スピード線】を何本も引いた!
アイクの移動速度は極限まで引き上げられ、まるで瞬間移動のように偽伊織の死角の背後へ唐突に現れた!
(もらった——!!)
「【致命の一撃】!」
アイクは咆哮しながら刀を振り下ろした! しかし偽伊織はあり得ない角度で身を捻り、誓約の剣で「ガキィン」と寸分狂わず受け止めた!
——どうやら、絶対的な力と反応速度の前には、単純な速度の向上だけでは簡単に防御を破れないようだ!
技を防いだ偽伊織は、すかさず苛烈な連続斬撃を展開した! アイクが支えきれなくなりそうなのを見て、アンナは慌ててタブレット上に巨大な岩を描き、二人を強引に引き離そうとした。
しかし、偽伊織の手にある誓約の剣はケーキでも切るかのように、易々と硬い岩を真っ二つに斬り裂いた!
アイクは黒霧の淵まで追い詰められ、息を荒らげながら叫んだ。
「どうすればいいんですか……アンナさん!?」
アンナは頭を垂れ、最初は同じ「誓約の剣」を描こうとしたが、描き終えても何の反応もなかった。焦って素材画面を探していると、ふと「無料素材ライブラリ」の中に奇妙な視覚エフェクトを見つけた。
(これって……?!)
アンナは目を輝かせ、急いで黒霧の際まで寄ると、アイクにコソコソと己の荒唐無稽な計画を話した。
アイクは聞き終えると、疑わしそうに振り返った。「そ、それ……本当にうまくいくんですか……?」
アンナは非常に微妙で自信のなさそうな表情を浮かべた。「たぶん……いける……と思う……? 分かんないけど!」
事ここに至っては、ダメ元でやるしかない!
アイクは手にしていた折れ刀を地面に突き刺すと、深々と大息を吸い込み、長々と吐き出した。
偽伊織はアイクが無防備に隙を見せたのを見て、残像と化して一直線に襲いかかってきた!
誓約の剣が振り下ろされようとする危機一髪の瞬間——アイクは地面の刀を素早く抜き取り、再びアンナの描いた【スピード線】を利用して、極速で偽伊織の背後へ突っ込んだ!
「無理よそんなの!!」黒霧の外からエミが悲鳴を上げた!
案の定、偽伊織は極めて素早く振り返り、刀を振るって再び防ぐ構えを取った。しかし、彼が振り返ってアイクと対峙したまさにその瞬間——
(キラキラリーン——————✨✨✨!!)
無数のまばゆい「キラキラスタンプ素材」が、偽伊織の目の前で狂乱のごとく明滅・爆發した! 偽伊織は誓約の剣を振り回したが、そのスタンプはまるで網膜に直接貼り付いているかのように払いのけられず、視界は強い光で完全に遮られた!
「今だ——!!」
アイクは特別に力を溜め、視界を奪われた偽伊織へ向けて最強の【致命の一撃】を放った! 同時に、アンナはタブレット一面に【集中線】を叩き込み、その一擊の威力を頂點へと押し上げた!
(ボカァァァン—————!!)
強烈な一撃が偽伊織に直撃した! 偽伊織は深い傷を負い、地の上に膝をついて力を溜めるように、漆黒の霧がじわじわと再びその身を包み込んでいった。
煙が晴れると、偽伊織は再びあの冷酷な殺気を放つ女スケルトンへと戻っていた! 女スケルトンが腕をひと振りすると、周囲のマナもそれに伴って狂暴に渦を巻いた。
ヒカリは慌てて手中の古文書をめくり、声を張り上げた。
「あの男性が精霊王なら……この方はきっと『煇琉』だ!」
ヒカリはさらに数ページめくったが、眉をひそめた。「でも……本には彼女に関する事績がまったく記録されていないや……」
エミはそれを聞いて驚いた。「フェイリュウ……本当に存在したのね……ただの言い伝えかと思ってたわ。」
アンナは首を傾げて考え込んだ。「フェイリュウ……? あれ、なんでこの名前、聞き覚えがあるんだろう……」
その時、煇琉はしなやかに腕を振るい、瞬時にアイクへ向けて数發のマナ球を放った!
アイクは急いで刀を振りマナを斬り払おうとしたが、通常の魔力火球とは異なり、マナ球は刀身を直接すり抜け、アイクの右肩をかすめた!
(——!?)
「右肩の……力が抜けていく……?! なぜだ……」
それを見たジョエルが慌てて叫んだ。「アイク! 気をつけろ! マナは周囲の生命エネルギーの凝縮体だ。肉体に直接物理ダメージを与えるんじゃなく、お前の生命力を吸い取って空気に流出させてるんだ!」
アイクは苦笑いを浮かべた。「こ……こんなズルいスキル、私だって欲しいくらいだぜ。」
煇琉はマナを放ち続け、周囲のマナは炎のようにアイクを包囲した!
「くそっ!」
アイクは歯を食いしばって跳躍したが、炎の中から突如として巨大なマナの手が伸び、アイクの胸を直撃して貫いた!
「ハッ……ハッ……ハッ……」
アイクは床に激しく叩きつけられ、荒い息を吐いた。身体から根本的な何かが無理やり抜き取られたような感覚。
スケルトン状態の煇琉は周囲の炎を収めると、高濃度のマナ球を作り出し、それを己の身体に叩き込んだ!
次の瞬間、眩い集光が彼女の身から爆発し、誰もが直視できないほど眩しく光り輝いた!
「な……なんだ!?」
光が収まると、目の前の光景に誰もが自分の目を疑った——
目の前の煇琉は先ほどのスケルトン状態を脱ぎ捨て、マナを通じて肉体を再構築し、本来の姿へと戻っていたのだ!
誰もが呆然とアンナを見つめ、そして煇琉を見た……二人の顔立ちはほとんど瓜二つだった! 唯一の違いは、煇琉がボーイッシュなショートヘアであることだけ。
アイクはそれを見てすぐさま身構えた。「また別人に化けたのか!? そんな手で私を騙せると思うなよ!」
「ちがうの!」アンナが慌てて遮った。顔には幾分かの決まり悪さと恥ずかしさが浮かんでいる。「こ……これ確かに私だけど、違いはこのキャラ、本当は物語に入ってないはずだったってことなの……」
エミとジョエルはちんぷんかんぷんだ。「確かにあなたって? どういう意味よ!?」
アンナは頭を掻き、恥ずかしそうに声を潜めて打ち明けた。
「本当は自分を物語の中に描こうとしてたんだけど……結局やめることにして、入れないつもりだったはずなの……」
「あ……」全員がなんとも言えない微妙な表情でアンナを見た。
アイクは再び目の前のショートヘアの「煇琉」を見つめ、低い声で問いかけた。
「……で、私をこの空間に連れてきた理由は何なんだ?」
煇琉は自身のショートヘアを軽く払い、深い眼差しでアイクを見つめた。
「…… あなたは何を学んだの?」
「色々とね。」アイクは静かに答えた。
「フン……」煇琉は口元をかすかに上げ、優雅で神秘的な笑みを漏らした。
ヒカリはこの時思わず一歩前に出ると、ずっと知りたかった疑問を煇琉に尋ねた。
「あの……あなたたちは、なぜここにいるんですか?」
煇琉はアンナの前の黒霧を見つめ、次いで場外で正座する伊織に目をやった。瞳がかすかに揺れる。
「なるほど……」
そして、冷ややかに全員を見つめた。
「あなたに答える義務はないわ。それに——戦いはまだ終わっていないでしょう?」




