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第356話〜混沌迷宮(カオスフロンティア)①

…………。

…………。

…………。


【カオスフロンティア入り口】


マールやルナたちがそれぞれダンジョン内で様々な出来事に遭遇していた時、ダンジョン外でも多くの騒動が起こっていた。


「交代している暇はない!全力で抑え続けろ!」


「魔力ポーションだ!ありったけ持ってこい!」


領主の配下である兵士たちはカオスフロンティアの入り口を囲い、慌しく動き回っている。


暴走したカオスフロンティアは、目に見える早さで着々と姿と難易度を変化させていった。


それは何もダンジョン内部に限った話ではない。


内部の規模と危険度からはあまりにも小さ過ぎた入り口とその周辺が、内部の変化、いや、¨成長¨に伴い姿を変え始めていた。


ベルの部下たちの中でも魔法に秀でた者たちが全力で【封印】を施し、少しでもカオスフロンティアの拡張を阻止しようとするも焼け石に水。


規模に対して粗末とも言えた小さな入り口は地面ごと隆起し、7つに枝分かれするように形を変えた上に、¨門そのものが猛威を振るっていた¨。


「近隣住民の避難を急げ!ただし動揺を悟らせるな!」


ダンジョン入り口が変化した外観は地下から手首より先が突き出たようで、まるで地面から巨人が這い出ようと手を伸ばしているようにも見える。


さながらそれは親指のない7本指の手。


まだぐるりと周囲を囲んだ塀と同じ程度の高さだが、半刻もすれば外からも容易に見えるようになるだろう。


そうなれば塀の内側に抑えられている被害が、住民たちの混乱と共に拡散してしまう。


その原因は…


「状態異常回復魔法は常に切らすなよ!これ以上同士討ちは起こすな!」


手のよう形の門は、見る者に様々な状態異常を引き起こしていた。


確認されているのは【毒】や【麻痺】、【睡眠】に始まり【恐怖】【混乱】【沈黙】【魅了】の7つ。


その指のようなもの一本につき、一つの状態異常を引き起こすと予想された。


門そのものが状態異常を引き起こすという異常事態。


耐性が無ければ見た指全ての状態異常を受けると聞けば、その危険性は理解できるだろう。


一度に7つの状態異常を付与してくるのだ。


もはやそれはモンスター、それもフロアボスやダンジョンボスにも等しい脅威だった。


状態異常の原因が門を見る事であると判明するまでに、兵士たちは同士討ちや自滅により少なくない被害を出した。


ただでさえ探索者たちによる暴動で周辺には動揺がある。


モンスターこそ内側から出てきていないが、これだけ大きく状態異常を撒き散らす¨手のようなもの¨が見えれば街中がパニックになる事は間違いない。


下手をすれば街そのものが門を見ただけで滅ぶ。


「主の¨加護¨さえあれば…」


「馬鹿者!守るべき主のその加護にすがるな!」


兵士の一人がこぼした呟きに、他の兵士の叱責が飛ぶ。


アルタの持つユニークスキル【万物の博物館】がもたらす恩恵という名の加護は、状態異常に対する耐性も大きく向上させる。


並のBランクモンスターやAランク下位のモンスターによる状態異常すらも、ものによっては完全に防ぐほどだった。


現段階で¨門¨が与える状態異常はCランクモンスター並みだが、それも少しずつ強力になってきている。


「そうだ!今こそ我らが恩を返す時!我らの命はアルタ様のために!」


兵士たちが覚悟を新たにするも、


「隊長!¨門¨からさらに¨指¨が生える予兆が!」


「くそったれめ!」


混沌はさらに加速していく。

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