第355話〜ルナの闘争⑨
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一瞬たりとも気を抜かない!と耳をピンと立ててピクピク動かしつつ、ルナはダンジョンを進む。
これまでに上位探索者を含めて何人も倒してきたが、ここまで生き残れたのも運が良かったのと、みんなのおかげだから!と油断も慢心もない。
実際にはルナの実力は従魔たちの力や加護の力を借りずとも、十分にC級冒険者としてやっていけるだけのものがある。
しかし従魔たちがメインに戦うテイマー故か、ルナの自己肯定感はとても低かった。
常春に叩き込まれた体術を除けば、あらゆる【スキル】は従魔たちのおかげで使用できるのである。
そして思い通りに体を動かせるのも、見た目以上の力や速さを出せるのも、従魔がいるおかげ。
弱い自分が戦えているのは仲間たちのおかげ。
みんながいなければ一人で狩りもできない半端もの。
だからみんなの足を引っ張らないためにも鍛えなきゃいけない、頑張らなきゃいけない、そんな思いが根底にあるのだ。
テイマーの適性があったが故にステータスが低く弱かったこと、優秀な姉や同年代たちと比較されて育ったこと、弱肉強食の獣人族であること、そして奴隷として否定され続けた日常。
時守の里でだいぶ改善されたとはいえ、それらもまたルナを構成する一部。
自分がどれほど規格外な加護や強化を得ているのか、いまいち理解できていなかったが、それでも自分がそれらのおかげで強くなったのは理解しているのだ。
いまいち自分に自信が持てなくても仕方がない。
だが、従魔を戦わせる、加護を得て強化される、それはテイマーとしての本人の強さに直結する。
ルナは確実に強くなっている。
しかし負い目にも似た、ルナでは言葉にできない感情が、精神の成長に歯止めをかける。
何事もなくこの状況が続いていれば、成長するにつれてルナの心は歪んでしまっていたかもしれない。
実際時守の里に行かなければ、早々にマールに依存し、守られるだけの存在になっていただろう。
が、それもこの状況で変化が見られた。
ミコやライムの助けはあるが、ほぼ単身で探索者たちを倒して回り、自身の考えと実力で生き残った。
その経験が、少しずつだがルナの精神に良い影響を与えつつあった。
…………。
果たしてそれも、ご都合主義とも言える加護によるものか。
何はともあれ。
決して加護や環境に驕る事なく、甘える事なく、ひたすら強くなろうと邁進するルナと【神鳥の加護】はうまく噛み合っていた。
おそらく、シラタマを置いて逃げる事を選択していれば、ルナは途中で詰んでいただろう。
しかし家族や仲間を失った経験が、仲間を失わないために考え、決断し、一時撤退する判断を下させた。
ルナは着実に経験を重ね、成長している。
しかし…
同時に、この先に待ち構える困難に比例して、試練もまた恐ろしく困難なものとなる。
ルナの成長が、試練に挑むに相応しいレベルに達しているのかどうか。
それはまだ、判断することは出来ない。




