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第354話〜ルナの闘争⑧

…………。


よし、がんばるぞ!と小さな手をグッと握りしめて気合を入れ直しているルナは勘違い、というか理解していなかった。


自身に与えられた【神鳥マールの加護】について。


最悪の結末を遠ざけ、相応の試練を乗り越える事で望ましい未来を引き寄せる加護のことを。


ルナはマールのことを珍しくてすごく強い鳥、程度にしか認識していなかった。


もふもふが好きで、毛繕いが上手くて、マルモ鳥なのになぜか話せて、妙に人間臭い……なんかすごい……鳥さん?


マールと契約した事で得た【神鳥の加護】も、すごく強化してくれている何かすごい……加護?程度にしか認識していなかった。


当然である。


ルナはまだ幼児と呼ばれても違和感のない容姿で、実際時守の里で修行した時間を加えてもまだまだ子供。


森の奥で育ち、時守の里で学んだ事がほとんどである。


最低限の一般常識は常春から習ったものの、その一般常識も常春にとっての一般常識。


異世界から転移してきて、波瀾万丈に生きてきた男にとっての常識である。


常識から一番遠い所にいる老人に教わった一般常識など、もはや非常識である。


そして常春は知識はあるので聞かれれば詳細に正確に専門家以上に教える事はできるが、時守の里では冒険者として生き残れる技能と知識をメインに教えていた。


それ以外は聞かれた事に対して回答する形だったので、抜けがあるのは当然である。


さらに普段からルナの周りにいるのは規格外だったり特殊な者たちばかり。


そんな者たちに囲まれているせいか、ルナはなかなか普通の感覚や、当たり前というものが理解できていなかった。


…………。


そもそもの話。


この世界の住民たちはスキルや加護と言ったものの存在を当たり前に受け入れてはいるが、それがどういったものであるかを完全に理解しているわけではない。


意外に思うかもしれないが、よく考えてみれば当然の話。


元の世界であっても専門家でもなければ一般人がスマホや車などの仕組みや役割、どうやって出来ているのか全てを完全に理解しているわけではないのと同じである。


なんなら自分の身体のことであっても、知識として知っているし、実際に思い通りに動かせてはいても、ではその精神を含めどこまで理解が及んでいるのかと問われれば明確に答えられる者がどれだけいるか。


スキルや加護、魔法や職業、モンスターetc


なんとなくどうなっているのか、簡単な仕組みはどうなのか、どうすれば使えるのか、本当に¨何となく¨知っているだけなのだ。


ましてやスキルや加護、職業ジョブは目に見えるものではない。


そして【鑑定】や魔道具を用いればそれらが存在することを知ることができるが、ただそれだけなのだ。


その点で言えば、例えは悪いが菌や病に近いものがある。


目には見えないが、確かに存在し、良くも悪くも様々なことに影響を及ぼす。


種類によっては個人の人生、大勢の生活にも影響する。


そしてスキルや加護、ジョブもまたいいものばかりではないのだ。


基礎ステータスが低くなるテイマーなどはまだましな方で、ものによっては日常生活に支障が出るどころか生死に直結し、周囲にも危害を及ぼすものまである。


そこまで影響力の大きなものは稀だが、しかし多かれ少なかれ存在するだけで人々に影響を与えるのだ。


精神にも、肉体にも、ありとあらゆるものに。

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