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第353話〜ルナの闘争⑦

…………。


「がぼっ…!ぼがっ…!」


頭全体を水に包まれ、鳩尾に一撃を受けて息を吐き出したオーレン。


それでも彼はルナ目がけて最後まで攻撃を続けた。


ダンジョンの壁や床にいくつもの傷跡を刻み付け、水で歪んで見えにくい視界でもルナを追い続けた。


無呼吸状態で数分間、手負の獣のように激しい攻撃だった。


しかし次第に動きは鈍くなり、ついには倒れる。


何が彼をそこまで駆り立てるのか。


さすが上位探索者と言えるだけの破壊跡を残し、オーレンは沈黙した。


ルナはオーレンがぴくりとも動かなくなるまで、不意に動き出しても反応できるよう身構えながら待った。


死んだふりは野生動物でもよく見られる行動。


何度か痛みによる刺激を与えて様子を見る。


完全に意識を失っていることを確認したルナは【水魔法】を解除させて、改めて全身をツタでグルグル巻きにした。


念入りに念入りにグルグルと。


あれだけ無酸素で暴れ回り、意識を失ってからも様子を見たが、蘇生するまでもなく息を吹き返したのを見て思わずびくりと飛び跳ねたルナ。


いわゆるやんのかステップで四つん這いに近い姿勢でまたしばらく様子を見たが、オーレンが起き上がることはなかった。


気を抜かず常に視界にオーレンを入れながらポーラも拘束し、2人まとめて小部屋状の凹みに放り込んで蓋をする。


「……ふぅ」


そこでようやくルナは息をついた。


一瞬も気を抜けない戦いだった。


ルナは無意識に尻尾の毛を整えようと何度も撫でる。


ペタンと横に倒れた耳は、しばらく元に戻りそうにない。


結果としてほぼ無傷で2人の上位探索者を倒せたが、しかし、それは運が良かったからだ。


2人が連携が取れていれば、隙をつく事などできなかった。


オーレンが冷静で、力量を十全に使えていればルナでは決定打に欠け負けていた。


ポーラが連携を乱されず、むしろ単独で攻めてきていれば【咆哮】の溜めをつくる暇もなく押し切られていただろう。


いや、それにしてもポーラの動きは僅かに精彩を欠いていたような気がする。


ルナの気のせいだろうか。


オーレンの強烈な感情に隠れていたが、ポーラの瞳にも僅かながら感情のようなものが覗いていたような…


ルナの勘違いだろうか。


…………。


そもそも、他の探索者たちも全員に意思があり、それぞれにあった連携が取れていればとっくにルナは負けていたかもしれない。


淡々とした連携だからこそ読みやすく、ルナにとって反撃の隙を突きやすかった。


だから、運がよかったーーー


「……ほんとに?」


不意にルナの口から溢れた疑問。


尻尾の先端を握りしめながら、落ち着かない様子で毛を撫でる。


本当に、運がよかっただけだろうか。


都合よく、ギリギリで倒せる程度の敵。


一息つける程度の接敵間隔。


まるで、ルナが死なないように加減しつつ、鍛えようとしているようではないか。


もしくはギリギリの戦いをさせて、楽しんでいる?


偶然か、意図したものか。


「…………。」


どちらにせよ、油断はできない。


気を抜けばやられる事に変わりはないのだ。


楽観的な考えは油断に繋がり、そして命を失う結果になる。


考えたところで答えは出ない。


ルナは改めて気を引き締めると、再びダンジョンを進み始めた。


あとどれだけ探索者たちが残っているのかは分からない。


しかし立ち止まり続けることなどできない。


仲間たち全員と再会するまで、ルナは進み続ける。


仲間たち、家族のためなら、ルナはどこまでも頑張れる。


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