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星神様と眷属達  作者: キサラギ ソラ
第1章 神殺し
20/30

1ー19 竜討伐対策会議2

あけましておめでとうございます!


「異常事態って言うことはわかったけどさ、これ以上わかることってあるのか?ドラゴンがここに向かう理由とか、西洋のドラゴンが何で日本にいるのかとかさ」

「全くないな。偵察班がドラゴンの監視を続けているが、変わった情報はまだ入ってない」


 それじゃあ、これ以上の考察は憶測にしかならないか。


「だったらこの話はここまでにして、町に来るドラゴンへの対処を教えてくれよ。何か策を考えているんだろう?」

「当たり前だ。お前さんに言われんでも説明するつもりだったわ。生意気な小僧め」

「はいはい。無駄な喧嘩は止めて、さっさと説明をお願いします、大酉殿」


 鈴夏さんが諌めてくるので大人しくする。

 つい突っかかりたくなるのだが、状況が状況なので今は控えないと。

 心を落ち着け頭を切り替える。


「オレたち祓魔師の使命はこの町に住む人々を魔物の驚威から守ることだ。故にシャドードラゴンを町の外で奴を食い止める必要がある。

 今ドラゴンはここから北東約40kmの地点にいる。後二時間程でやって来るらしい。だから今は一人でも多くの祓魔師が必要でな、他の町からも出来る限り招集しているところだ」

「町を守るんなら町の中や近くで戦うのは危険か。なら迎撃するのか?」

「そうなるな。最低でも2km、できれば3kmは離れたい」

「なるほど。つまり……このポイントだな」


 プティークで三次元マップを映し、町から北東3kmの地点に赤い円を表示する。

 町から充分に離れているし、ドラゴンがいかに巨体でもすぐに町に到達できない、余裕のある距離。

 正直なところ祓魔師たちがやられたら距離がいくらあっても意味ないと思ったが、距離を取る本当の目的は戦闘での流れ弾が町に届かないようにするためだとか。


 これだけ警戒しなければならないレベルの長距離攻撃手段をドラゴンが持っているのかは疑問だが、やっぱりアレかな。ドラゴンって火を吐くのだろうか?


 こんな時に不謹慎だけど、好奇心が疼いて仕方ないんだよね。





おさ!偵察班から緊急連絡が!」

「ッ、話せっ!」

「シャドードラゴンの保有魔力量の計測が完了。実体可能レベルまで高まっているとのことです!」

「なんだとっ!?それ本当か!」

「はい。間違いありません!」


 大酉の爺さんは報告してきた男の通信機器に駆け寄っていく。どうやら直接指示を出しているようだ。


「あの、ちょっと宜しいでしょうか?」


 ソフィアが手を挙げる。


「一つ気になったのですが、影の魔物は実体化することがあるのですか?」

「はい。極僅かですが、確認された事例があります」


 質問に答えたのは鈴夏さんだ。彼女はそのまま影の魔物について説明を続ける。


「影の魔物は魔力で身体を構成しており、実体、つまり肉体を持っていません。これは大きな欠点を抱えています。なぜなら肉体がないため、影の魔物は存在を維持するために常に魔力を消費し続けねばならないからです」


 影小鬼などの低位の魔物は保有魔力量が少ないことから、ほっといてもほんの数日で自然消滅することは俺も知っていた。

 そんな存在でも討伐するのは、魔物の被害を出さないためである。


 そして、影の魔物が世界にその存在を繋ぎ止めるため魔力を消費しなければならない|法則≪ルール≫に、一つとして例外はない。


「しかし欠点を克服できないわけではありません」

「それが実体を持つこと、なのですね」


 頷く鈴夏さん。


「実体化した魔物は肉体という器を獲得することで魔力消費による消滅の危機から解放され、存在が確かな一つの生命となってしまうのです」

「んー、もしかして影の魔物が実体化する条件って、膨大な魔力があることだったりするのか?」


 少ないと消滅するなら多いなら消滅しないんじゃね?なんて思っただけなんだけど、意外なことにこれが正解だったようだ。鈴夏さんは肯定してくれる。


 俺は今日の魔力操作の練習中に起きた現象を思い出した。

 確かあのとき、かなりの量の魔力が集中しすぎて魔力視なしで魔力が見えるようになっていた。


 そして先程見たシャドードラゴンの写真。

 あれは特殊な術みたいなので撮ったのかと思っていたが、あれは肉眼でも見えるようになっていたのだ。


『マスターの持つ情報を整理し、仮説を立てました。魔力が肉眼やカメラで捉えられるようになる条件は、恐らく魔力量ではなく魔力密度であると推測されます』


 ナヴィが視界にデータを表示してくれる。

 俺が魔力操作時に使った魔力量と、写真から読み取れる情報から推定される50m超えのドラゴンを構成する魔力量。

 魔力を観測できないため俺の感覚や主観を頼りにしているため不確かな数値であるものの、どう考えてもこの二つを比べたらドラゴンの方が魔力量は多いのだ。

 ぶっちゃけ蟻と象の背比べのようなものだ。観測して正確な数値を知る必要なんてないだろう。


 魔力量に大きな差があるにも関わらず、どちらも魔力が見えるようになっている。つまり魔力量が問題ではなく、魔力がどれだけ集中しているか――密度が問題なのだと考えられるのだ。


『この仮説が正しい場合、魔力密度が高まればワタシでも魔力を観測できるかもしれません!』


 なんだかナヴィのテンションが高い気がする。もしかして前に魔力観測に失敗したことを気にしているのかもしれない。


 取り敢えず俺は、魔力視なしで見えるようになった影の魔物は実体化の可能性があることを<シグル>に記録しておいた。


「実体化した魔物は実体化までの過程から高い魔力量を誇る。もしシャドードラゴンが実体化すれば、その脅威は天災と同然と言っても過言ではないだろう」


 加奈子先輩が補足するように説明を継ぐ。


「本来ドラゴンをはじめとする伝説上の生物は幻想種とも呼ばれる。幻想種についての説明は蛇足になるため省くが、重要なのは幻想種が持つ力は災害をいとも容易く引き起こすという点だ。

 シャドードラゴンが実体化してしまうと、私たちの攻撃はほとんど通らない強靭な肉体を得てしまい止められなくなる。厄介なのは幻想種は知性を持つことが多いのに対し、影の魔物は本能のまま行動すること。だから町に入れる訳にはいかない。ここまではわかった?悠真、ソフィア」

「はい」


 ソフィアははっきりした声で返事する。魔物についての事前知識は彼女の方が多いだろうし、俺より呑み込みが速くてもおかしくない。


「えーっとつまり……シャドードラゴンは危険だから絶対倒さないといけなくて、倒さないと町の人たちが殺されるかもしれないんですよね?」

「ま、つまるところはそうなる」

「なら俺のすることは決まってますよ師匠・・。おざわ荘の皆に振りかかる火の粉は全て振り払う。シャドードラゴンは絶対に殺します」


 大切なものを守るためなら俺は何でもする。それが俺が自身に定めた誓いだから。


 俺が静かに決意を固めていると、偵察班への指示を出し終えた大酉の爺さんが戻って来た。


「マズイ状況になった。今すぐ作戦の詳細詰めと部隊編成を進めねぇといけねえ。そっちの説明は終わったか?」

「はい。大方説明しました」


 深刻な表情で尋ねてくる大酉の爺さんに鈴夏さんが応える。俺たちも大丈夫だと示すため首肯した。


「そんじゃあ改めて作戦会議を始める。と言ってもほとんど決まってるがな。一応確認みたいなもんだ。小僧、お前さんのそれを使ってくれねぇか?」


 大酉の爺さんの指がプティークを指し示す。


「わかった。俺は情報を映してくから始めてくれ」

「よし、そんじゃあまず始めに言っとくが、迎撃地点はさっき言った通り、こっから北東3km地点で行う。討伐隊は二つに分ける。シャドードラゴンと直接対峙する第一部隊と、弱体化結界などでサポートする第二部隊だ。移動はこの道路を車で行けば充分間に合うだろう。

 部隊編成だが、第一部隊はオレがリーダーになる。そして各エリアリーダーがオレの下につくかたちになるな。他の祓魔師たちは全部第二部隊に回す。そうすりゃ二時間は結界を維持できるはずだ」


 祓魔師たちは普段、振り分けられた担当エリアで魔物を討伐している。数少ない祓魔師たちが一ヶ所に固まってしまうと他の場所に現れた魔物に対処できないため、上手く振り分ける必要があるからだ。

 この町にいる祓魔師の数は23人。

 そして町は五つのエリアに区分けされていて、そこにいるリーダーの数は五人となる。


 そうなると第一部隊は、祓魔師のまとめ役でありながらエリアリーダーである大酉の爺さんを含め五人しかいないことになり、はっきり言って無謀すぎる計画だった。


「なんでそんなに少ない人数で戦おうとする?全員で戦えばいいじゃないか」

「確かに少ねぇさ。だがこれが一番良いんだよ。下手に力の弱い奴らに戦わせても無駄に殺されるだけだ。それならオレたちのサポートをしてもらった方がコッチも全力でやれるってもんさ」


 なるほど。確かにその理屈はわからなくもない。

 でも俺は不満なままだった。

 なぜなら――


「弟子として、師匠に危険な真似はして欲しくない。師匠は無事におざわ荘に帰って来てくれますか?」


 加奈子先輩はおざわ荘を含むエリアのリーダーで、危険な第一部隊としてドラゴンと戦わなければならないからだ。

 俺ははっきり先輩に「大丈夫」と言って欲しかった。いつもの頼もしい俺の師匠としての姿を見せてくれるなら、不満を呑み込んで討伐参加に賛成できたのだが。


「…………」


 加奈子先輩は、苦しそうな、悲しそうな表情を浮かべるだけで、何も答えてはくれなかった。


「あー……小僧、嬢ちゃんはオレより強いんだ。だからだいじょ――」

「大酉さん、やめてください……!」

「……はぁ、わかった」


 何やらおかしな空気になった。

 大酉の爺さんのハッキリしない態度や、言いかけていた言葉を遮られても大人しく引き下がるなんて、普段からは考えられない。

 加奈子先輩も、大酉の爺さんも、鈴夏さんも、皆表情が暗く何か俺に隠し事をしているかのようだった。

 しばし重苦しい沈黙が場を支配する。

 数秒時間が流れると、意を決したように加奈子先輩は口を開けた。


「私はお前に、必ず生きて帰ってくると約束することはできない。今回現れたシャドードラゴンは今までのように手加減できるような相手ではない。全力を出さなければ無残にやられ、殺されるだろう。しかし私が全力で戦うということは、私自身の命を縮めることにもなるのよ……」


 それは普段は見せない、加奈子先輩の“弱い姿”だった。


(全力を出すと、命を縮める……?)


「師匠、それはどういうことですか。ちゃんと説明してください」


 自分でもびっくりするぐらい恐い声が出た。

 加奈子先輩は躊躇いながらも語ってくれた。

『魔力変換不全症』と呼ばれる、極めて特殊な体質の話を。


年が明ける前に出したかったのですが遅れてしまいました。ごめんなさい。

今回はほぼ説明回になりましたが、もう少し続くので辛抱強く見ていただけると嬉しいです。


感想、誤字・脱字の報告があれば、是非お願いします。

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