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星神様と眷属達  作者: キサラギ ソラ
第1章 神殺し
18/30

1ー17 魔力操作習得。そして……

「やっぱり現代の観測機器じゃ、魔力を観測するのは不可能か……」


 視界に表示されているデータを見た俺は、芳しくない結果に落胆しながら呟いた。


『お役に立てず申し訳ございません、マスター』

「気にするな。この結果は予想できてた。お前の責任じゃないよ」


 頭の中に直接、俺の首に装着されている《シグル》のAIーーナヴィの声が響いた。

 今日は昨日の約束通り《シグル》を装着しているのだが、魔力操作の訓練がてら魔力が観測機で調べられないか試していたのだ。

 《シグル》の『機械の遠隔操作』の機能を用いて、複数の観測機を使いデータを採り、《シグル》が脳に信号を送ることで視界に直接データを表示することが可能なのだ。


 実は魔力を観測しようとしたのは、今回が初めてではなかった。魔物の存在を知って以来、ちょくちょく魔物とは何なのか調査はしており、その際に最新の観測機を使用していた。しかし魔力で身体を構成している魔物が相手では、現代の観測機では何も観測できなかったのだ。

 魔力視ができるようになった今なら、観測データとの差異とかわかんないかな~と思ったのだが、無駄骨で終わってしまった。


「サラに新しい観測機を作って貰うにしても、情報が少な過ぎて何を調べればいいのかわかんねーしな」


 魔力そのものが先ずどういった物なのか、俺はあまりにも知らなすぎる。「魔力がどんな物かわかんないけど、魔力を調べたいから観測機を新しく作って」とか、無茶振り過ぎて流石に頼むことなんてできない。馬鹿にも程があるというものだ。


 魔力視をサラが覚えられたら、アイツ自身で勝手に調べてくれそうなんだが……兄として、妹に頼らず自分で何とかしたいと思うこの気持ちを誰が責められようか。これは兄の意地だ。

 しばらくは俺一人で頑張ってみて、それでも無理なら頼ることにしよう。


 諦め悪く何か観測できるかもと、観測機とのリンクを繋げたまま魔力操作の訓練を続けていると、ドアをノックする音が響いた。


「ユーマ様、お部屋に入っても宜しいでしょうか?」

「ソフィアか。入って良いよ。鍵は開いてるからー」


 俺がドアの向こうに声を掛けると、ソフィアはそっとドアを開けて部屋に入って来た。


「やっぱり魔力操作の訓練中でしたか。ユーマ様は努力家ですね。わたしとしてはとても喜ばしいことなのですが……無理はなさらないでくださいね?」

「わかってる。ちゃんと休みながらやってるから。それじゃあ今日もお願いするよ」

「あ、そのことなのですがーー」


 いつも通りソフィアに魔力を流し込んで貰って、今日こそは魔力の流れる感覚を自分で制御してやると息巻いていたら、ソフィアの方から待ったが掛かった。

 出鼻を挫かれ調子を崩されるが、次の一言ですぐに持ち直した。


「実は魔力操作の訓練を効率良く行えるかもしれないんですよ」

「な、何だって!?それは本当か!一体どうするんだ?」

「落ち着いてください。あくまで可能性があるという話です」

「あ、ああ。すまん」


 少々興奮して我を忘れていたようだ。深呼吸して心を落ち着かせ、姿勢を正し座り直した。


「それで、方法とやらを教えてくれないか?」

「はい。新しい訓練方法なのですが、先日ユーマ様がお使いになっていた青く光るナイフ。あれが魔力を循環させる魔導具になるかもしれないんです」

「ナイフ……?ああ、小太刀のことか」


 ナイフと言われても心当たりはなかったが、青く光ると言われれば俺もつい最近見ている。すぐにソフィアが小太刀のことを言っているのだとわかった。

 俺はすぐに小太刀を取りに行った。


「これのことだろ?こいつは日本の武器の一種で、小太刀って言うんだ。で、これをどうすればいい?」

「コダチと呼ぶんですね。教えていただきありがとうございます。それでは訓練方法ですが、先日ユーマ様はコダチに魔力を流しているように見えました。あれは、そのコダチが勝手にユーマ様の魔力を吸出していたのではありませんか?」

「その通りだ。コイツは俺の魔力を自動的に吸い出すことで、俺に魔物の気配を感知する能力を与えてくれる。そして刃を魔力で覆い、魔力を切り裂く能力も使える……みたいだ。正直に言うと、これは教えて貰った内容であって、実感できたのは魔力視を覚えてからなんだよね」

「なるほど……まあ今は細かいことは置いておきましょう。コダチが勝手に魔力を吸い出すのであれば、身体の中の魔力を動かしている状況を疑似的に作り出せることになります。そこでコダチに流れる魔力をユーマ様に制御していただこうというのが、今回提案した新しい訓練方法となります」

「なるほど。試す価値大きいな」


 これならソフィアの手を煩わせる必要もないし、他者の魔力が魂に近づく危険もない訳だ。

 魂の拒否反応は筆舌し難い感覚だったからな。あれは二度と体験したくないものだ。


 さっそく訓練を開始した。

 小太刀を鞘から抜くと、肉体的な体力とは違う気力のような『何か』が身体から抜けていくのを感じる。

 この抜けていく『何か』が魔力なのだろう。

 実際に魔力視で小太刀を握る右手を見ると、魔力が川を流れる水のように小太刀へ流れていくのがわかった。

 肉体という器を満たす魔力の一部が、細い線となって小太刀へと流れる。それはいつも感じていたことだ。だが、その"いつもの感覚“に俺は困惑してしまった。


「魔力の流れる感覚が小さすぎて、感じ難いんだけど……。ソフィアに魔力流して貰ったときの方がはっきり感じられるよ」

「そんな……!まさか、いや、でも……」

「どうした?」

「もしかしたら、ユーマ様はご自身の魔力に対して鈍感になっているのかもしれません」

「鈍感?どうしてそんな……」

「わたしのせい、かもしれません。わたしが流した魔力の感覚に慣れてしまったことで、ご自身の魔力の流れがわからなくなったのです。魔力がどんなものなのか実感していただくためでしたが、しかし実際に循環していたのは、わたしの魔力であってユーマ様ご自身の魔力ではない。つまり、今のユーマ様の身体にとって流れる魔力とはわたしの魔力であり、自身の魔力が動く感覚がよくわからない状態になってしまった、ということです」

「要は俺の身体は錯覚してるってことだな。確かにソフィアに魔力を流されたときの感覚が強烈過ぎて、魔力の流れる感覚はそれだって思ってたからなぁ」

「申し訳ございません。わたしの不手際で、このようなことに。どうお詫びすれば……!」


 ソフィアが悲痛な声で謝罪しながら、土下座をした。

 慌てて俺は彼女を止めに入った。


「い、いいって別に。俺がやりたくてちゃんと準備もせずソフィアに頼んだんだ。俺にだって責任はある。だから頭を上げてくれ」

「ユーマ様……」

「それに、自分の魔力を全く感じられない訳じゃないんだ。時間を掛ければ、ちゃんと感覚も元に戻るって!だから泣かないでくれ、お願いだ」

「ぐすっ……はい」


 ソフィアにハンカチを渡した。

 涙を拭いて、一旦落ち着いてもらう。


 もうソフィアを泣かせないためには、魔力制御を身に付け、彼女の行いが無駄ではなかったと証明するのが一番だろう。

 ソフィアのとは言っても、魔力は魔力だ。

 同じように感知できるはずだし、操ることだってできるはずだ。

 そう信じて、再び小太刀を抜いた。


 小太刀に流れる魔力は一定だ。

 必要な分だけ吸い出すことで所持者の魔力を枯渇させない仕組みになっているからだろう。

 もしかして、魔力の量が増えれば感知し易くなるのでは?

 そう思った俺は右手に意識を集中し、流れる魔力の量が増えるようイメージを強くしていく。


「え……ユーマ、様……?これはいったい……」


  邪念を捨て去り、己の内とだけ向き合っていると、少しずつだが小太刀に流れる魔力量が増えていき、刀身が放つ青い光が強くなっていく。


ーーまだ、後もうちょっと……っ!


 さらに気合いを込めた瞬間、それまで陽炎の如くゆらゆら漂うだけだった魔力が一際強い光を放って、まるで刀身が伸びたかのような形で安定した。

 その姿はまさしく光の刀身でできた刀。

 ようやく魔力を自力で操作できたことに気づいた俺は、嬉しさの余り、


「よっしゃーーーっっ!!!」


 左手を上に突き上げながら全力で叫んでいた。

 もちろんそんなことをすれば意識が乱れるため、光の刀身が靄のように消えかかる。俺は慌てて集中し直した。


「まさか、もう魔力操作を習得したのですか!?しかも魔力を肉眼で可視化できるほどの魔力を初めてで放出するだなんて!?」


 驚きを隠せないソフィアに、自身の魔力に鈍感であれば、鈍感でも感知できるぐらい魔力量を増やせばいいという発想に至ったことを説明する。するとソフィアは、


「それ順序がおかしいです。普通は魔力を感知できてから魔力操作を覚えるんですよ?ユーマ様は逆になってます」


 なんだか呆れと感心が半々といった様子だ。


 だが俺は自身の魔力を感知し難かっただけで、既に魔力感知を覚えていたので下地はできていたのだ。そう考えるとあながち順序が逆とは言えないはずである。

 そう説明すると、ソフィアも納得してくれた。


 続いてソフィアに『魔力が可視化するほどの放出』とは何なのか尋ねた。

 これに関しては簡潔だった。

 ソフィア曰く、魔力は一定以上の量が集中すると魔力視を使わなくても見えるようになるーー要は一般人にも見えるようになるのだとか。しかし実際に肉眼で見えるようにするには膨大な魔力が必要らしい。

 まあ、下手をしたら魔力が空になって気絶していたかもしれないと涙目のソフィアに叱られたことだし、少し反省しないとね。



□□



 俺はまだ魔力操作の基礎である魔力放出ができるだけで、魔力量を自在にコントロールするのは無理だった。

 ソフィアにコツなどを教えて貰いながら訓練していると、いつの間にか日が落ちていて、夕食の時間であることを美奈穂が伝えに来た。


「悠真~、ご飯できたから早く来てー……って、やっぱりソフィアも一緒だったのね」


 美奈穂が呆れた眼差しを向けてきた。

 何だか少し不機嫌っぽいのは読み取れたけど、下手に触れると痛い目を見るのは長い付き合いもあってわかるため、言及せずに返事をした。


「わかった。今すぐ行くよ」


 腰を上げて立ち上がった。座り続けてたせいで少し尻が痛かった。

 

 全員欠けることなく食卓を囲む。

 それぞれが思い思いに会話をしていて、いつも通りの賑やかな夕食だ。

 俺は皆に、ようやく魔力操作ができるようになったことを話した。

 まだまだ拙くて制御が全然できてないと説明すると、お披露目を期待していた紺野先輩や亮太から野次が飛んできたけど、ソフィアが、


「魔力の制御に失敗すると何が起きるかわかりませんよ?最悪爆発するかもしれません」


 と言った瞬間大人しくなったのは笑えた。


 楽しい時間が過ぎていた。

 しかし突如鳴り響いたメールの着信音が、楽しい時間に終わりを告げる。

 音の発信元は、加奈子先輩のケータイだった。


 加奈子先輩は自身のケータイを操作してメールを読んだ。すると次第に表情が真剣なものに変わっていった。


「どうしたんや加奈子?めっちゃ怖い顔してるで?」


 最初に加奈子先輩の変化に気づいたのは、彼女の右隣に座っていた紺野先輩だった。

 紺野先輩が声を掛けたことで、お喋りに興じていた皆も加奈子先輩の様子に気がついた。


「……アイリスさん、急用ができたので出掛けます。美奈穂すまない。せっかくのご飯を残してしまって……」

「ううん、それは良いんですけど……どうしたんですか?」


 加奈子先輩は美奈穂の質問に少々躊躇う様子を見せたが、観念して答えてくれた。


「……町の近くに非常に危険な魔物が確認されたらしい。ソレの対策のために呼ばれたようだ」


 そう語る加奈子先輩の表情は険しく、冗談抜きで危険な魔物が現れたようだ。

 食卓を緊張感が包み込む。


「俺も、俺も連れて行ってください師匠!この町に危険が迫っているなら、じっと待ってるなんてできません。お願いです」

「ダメだ。今回の相手は今までとは比べものにならないくらい危険なんだ」

「だったら師匠だって行かないでくださいよ。危険なんでしょ?私は強いから大丈夫なんて理由じゃ、俺絶対に引きませんから」

「この頑固弟子め……っ」

「邪魔はしないし、無茶もしません。俺は皆を守りたいんです。お願いします」


 深く頭を下げると、唸るような声が聞こえた。すぐダメだと言われないということは、後一押しで丸め込めそうだ。


「わたしも、ご一緒して宜しいですか?」

「……ソフィア?」


 ソフィアが同行を求めたことに俺は驚いた。加奈子先輩も意外だったのか、目を丸くしていた。


「わたしは精霊術で自分の身を守れますので、カナコさんのお手を煩わせることは致しません。ですからどうかお願いします」

「ソフィアまで……」


 俺はソフィアに目配せすると、彼女も俺を見た。ここ最近ずっと一緒にいるからか、アイコンタクトで意志疎通した俺たちは頷き合う。


「お願いします、師匠!」

「お願いします、カナコさん!」


 完全に息ぴったりで頭を下げて嘆願する。

 とうとう断れなくなった加奈子先輩は、ハァーと深い溜息を吐くと同行を了承してくれた。

 

「「ありがとうございます!」」


 お礼を言った俺たちは顔を見合せ笑顔を浮かべた。


 それからは急いで準備をした。

 部屋に戻ってこの前ゴブリン狩りをしたときと同じ格好に着替える。ソフィアも一度部屋に戻ったのか、大きめの鞄を手から下げていた。何が入っているのか尋ねると、いざというときの備えだと言っていた。

 とりあえず重たそうな鞄を代わりに持つことにする。ソフィアは自分で持つと言っていたが、急がないといけないからと説得した。実際に鞄は結構な重量があったので代わりに持って正解だったと思う。


「来たか二人とも。急ぐぞ」


 玄関で加奈子先輩と合流し、俺たちはおざわ荘を出た。

修正するかもしれません。

誤記・誤字の報告があればお願いします。

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