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星神様と眷属達  作者: キサラギ ソラ
第1章 神殺し
15/30

1ー14 魔力操作

本日二話目の投稿。

「俺が魔術を使うにはどうすればいいのかな?そもそも魔力も見えないのにできるのか?」


 俺はソフィアに何度目かの休憩をしてもらった後、そう尋ねた。


「はい。というか絶対できるはずです。なにせユーマ様は『神の子』、星神になる資格という、とびっきり素晴らしい素質があるのですから。それに魔術の才能はともかく、魔力を見る程度のことはある程度訓練すれば誰にでもできますよ」

「そうなの?」

「はい。ですから今からやってみましょう。まず両手を出してください」


 俺は言われた通りに両手を前に出した。するとソフィアが両手を彼女の両手で優しく握ってきた。……俗に言う、恋人繋ぎのように指を絡めて。


 ソフィアが恋人繋ぎだと思っているわけがない!だってそれはこっちの習慣だし。いやでも向こうでも同じ習慣がある可能性もあるよな?ああもうっ、何でこんな風に慌ててんだよ俺!平常心、へいじょうしん……って、やっぱムリィーーーッ!!


 天使かと見間違うレベルの可愛い女の子に、指を絡めてキュッと手を握ってもらうなんてレアシチュエーション。俺の心は完全にパニックになっていた。とりあえずそれを表情に出さなかった俺を誰か誉めて欲しい。

 俺はただの女の子相手ならともかく、気を許した女の子相手では心のコントロールができなくなることが多いのだ。


 俺がパニックになっていることに気づかないソフィアは、何事もなく話を進めていく。


「では今から魔力をユーマ様に流します。できるだけリラックスして、身体の違和感に注意を向けてください」

「っ、は、はい!」


 ソフィアの声に少しだけ余裕を取り戻す。

 俺は言われた通り身体に違和感がないか神経を研ぎ澄ました。


ーーん?


 何か、温かいモノがゆっくりと右手に入って来た……感じがする。体温がそこだけ上がったわけではなく、何か温かいとしか表現できないモノがソフィアの左手から流れて来たのだ。


 温かいモノはゆっくり俺の身体の中を移動していく。腕を伝って身体の中心へと上ってくる。そしてそれが胸の中央に近づいた瞬間ーー


「--っ!?ぁ、ああ、ぁああぁぁああああっっ!!!」


 自分という存在が侵されるのを恐れるような強い忌避感が沸き起こり、俺はたまらず絶叫した。


「……はぁ、はぁ……ぐっ、ぁぁ……はぁ、はぁ」


 絶叫した瞬間、咄嗟にソフィアの手を離したことで身体の中の温かいモノが消え、同時に強く反応していた忌避感も薄れていく。

 しかし忌避感が強すぎたせいで精神に大きなストレスがかかり、俺は全身から冷や汗を流しながら荒い息を吐いていた。


「も、申し訳ありませんユーマ様!わたしのせいでお辛い思いをっ!」


 ソフィアが俺の醜態を見て、裏返った悲鳴のような声で謝ってくる。

 うずくまった俺の背中を優しく擦ってくれたことで、何とか心を落ち着けた。


「な、何だったんだ、今の……」

「申し訳ありません、ユーマ様。わたしのせいです」

「ソフィアの?」

「はい。わたしが流し込んだ魔力がユーマ様の魂に近づきすぎたため、ユーマ様の魂が拒否反応を起こし今のようになったのです。申し訳ありません」

「そ、そんなに謝らないで。許すから。別にワザとじゃないだろ?」

「もちろんワザとではありません!ですが、わたしのしたことは簡単に許していただいて良いことではないのです!」


 ソフィアが言うには、今のは魂が他者に侵されるのを防ぐ為の防衛反応らしい。もし魂が他の魔力に侵された場合、その魂は歪になり、運が良くて精神異常、下手すれば精神崩壊して死んでしまうらしい。

 どうやら俺は相当危険だったようだ。

 

 ソフィアに肉体的に無茶苦茶にされるならまだしも、死ぬのは流石にゴメンである。


「まあともかく、今回は許す。だから次があったら事前説明を忘れず、注意してやってくれ」

「はい。お許し頂きありがとうございます。……魔導具があればこんなことにはならなかったのに、あの事故が憎らしいです」

「魔導具?」


 ポツリと呟かれた言葉の中に、とても興味惹かれる魅力ワードが聞こえた。


「実は持って来るはずだった荷物の中に、ユーマ様の為の教材用魔導具があったのです。アレがあればこんなミスもなく魔力操作の練習ができたのですが」


 その魔導具は持つだけで使用者の魔力を循環させ、魔力が動く感覚と動かす感覚の両方を養えるらしい。正直言って、すごく便利な道具の存在を知り、俺は心の中で涙を流した。


 ……くっそぅ、精霊羨ましすぎだろ。


 しかもそれは俺も使える予定だったと言うのだから、悲しみも大きかった。


 この流れで魔術を使えるようになるために必要な技能を教えて貰った。

 まずは魔力の感知。

 見るだけでなく感覚的にも魔力を捉える必要があるらしい。


 二つ目は魔力操作。

 魔力を感知できるようになったら、次は魔力を操れるようになる必要があるらしい。


 三つ目は術式。

 術式を覚え、それを実際に組み上げる。


 この三つで俺は魔術を使えるようになるようだ。

 目標が定まり、やる気がより一層高まった気がする。


 その後もソフィアに魔力を手から魔力を流してもらって感覚を養っていく。

 ソフィアの魔力が体内をゆっくり巡る。

 何度か身体が彼女の魔力に反応してしまって、魔力を霧散させることがあった。

 別に忌避感を感じたわけでもないのに不思議に思っていたが、ソフィアがそれは個人に備わった魔力抵抗という別のモノの作用だと説明してくれた。正常な反応だから気にせず、リラックスしてくれないと魔力が弾かれると苦笑いしていた。


 俺って、『神の子』だからかは知らないが、普通の人間の何十倍もの魔力を持っているようだ。実感湧かねえ。


 昼食の時間の少し前になってようやく、俺は魔力を自力で捉える感覚を覚えることができた。


「……ぅわぁ……」


 視界全てを鮮やかな色の流れで彩る。赤、黄、青、緑。いやそれだけではない。世界に溢れる色という色が、光の流れを作って俺の目を楽しませている。

 この光景の美しさは筆舌し難いものがあった。



  □□



 昼食と休憩を挟んだ午後。

 魔力感知を覚えた俺はこの勢いのまま魔力操作も覚えられるんじゃね?と意気込んでいた。





 …………結論から言おう。

 俺の考えは甘かった。コップ一杯の牛乳に砂糖と蜂蜜を樽サイズでぶっ込むぐらい、甘かった。


 俺は再びソフィアに魔力を流してもらい、今度は循環する魔力を自力で行う訓練を行った。

 魔力が巡る感覚ははっきりとわかっていた。自分の魔力がどんなモノなのか、どういう動きをしているのか理解していた。


 しかし、魔力を掴み自分で動かす感覚だけは、一向に覚えられなかったのだ。


 なるほど、ソフィアが魔術より魔力を見る方が簡単だと言ったわけだ。

 魔術は術式さえ組めれば魔力を込めるだけで発動する。

 しかし魔力を込めるーーつまり動かせられなければ、そもそも意味がないという訳である。

 つまり魔術を覚える上で肝なのが、魔力操作なのだ。


 この壁は、果てしなく高く思われた。


「いやいや。魔力感知をたったの二時間足らずで覚えたんですよ?わたし、ユーマ様は人間だから早くても一日かかると思ってたんですから」


 このソフィアの言葉に救われた。

 どうやら俺の成長速度は、人間であるにも関わらず精霊並みとのこと。『神の子』の力の片鱗なのかもしれないと、二人で納得することにした。


 精霊でも魔力操作を覚えるのは時間かかるらしく、数日の間は気長に焦らず頑張りましょうとソフィアに言われた。


 その励ましを心の頼りにして夜まで頑張った。そしてやはり、初日に魔力操作を覚えることはできなかった……。



  □□



 夜。皆で夕食を楽しんだ後、また魔力操作を覚える訓練に勤しむべく部屋に戻る途中。俺とソフィアは玄関で、出掛けようとしている加奈子先輩に遭遇した。

 加奈子先輩は動きやすい普段着を着て、刀を入れるような(・・・・・・・・)長細い布の袋を背負っている。ちょうどスニーカーを履くため座っているタイミングだった。


「どこかに行かれるのですか?カナコさん」


 ソフィアが加奈子先輩に尋ねる。

 彼女からしたら食事の後にすぐ出掛けることが不思議だったのだろう。


「ちょっと用があってね」


 加奈子先輩は靴から目を離さず、一言だけ返した。

 そして両方の靴紐を結び終えると、そのままおざわ荘を出て行った。


「どうしたのでしょうか……」

「う~ん。別に気にしなくても大丈夫だよ。先輩がこの時間に出掛けるのはよくあることだから」


 俺は加奈子先輩が出掛けた理由を知っていたが、教えてもソフィアを心配させるだけなため言わなかった。


 ……それに、先輩を傷つけられる存在なんて、そう簡単に現れる訳ないしね。


 俺は加奈子先輩をよく(・・)知っている。故に人間も人間じゃないモノ(・・・・・・・・)達も、彼女の敵ではないと信頼している。

 それでも心配だと思う気持ちは少なからずあるけれど。


「部屋に戻ってさっきの続きやろうぜ」

「はい」


 部屋に戻りかけた、その瞬間。


「--っ!!」


 ソフィアの顔に緊張が走り、彼女の足が止まった。


「……ソフィア?」


 ソフィアの様子に気づいて俺も足を止める。

 俺が訝しんで彼女の名前を呼ぶと、弾かれるように玄関に向かって走り出した。


「ちょ、ソフィア待て!どこ行くんだ?」


 俺は咄嗟にソフィアの腕を掴んで引き留めた。

 ソフィアが必死な様子で振り返る。


「今すぐカナコさんを呼び戻さないと危険なんです!ユーマ様、離してください!」

「ちょっと落ち着け。先輩なら大丈夫だよ。急にどうしたんだ?」

「魔物です。町から微かに魔物の気配がするんです!それも複数っ」

「……っ!?」


 何でそれを知っている。

 そう言いかけて、寸前で飲み込んだ。

 精霊術とか魔術とか、そっち側の存在を知っているーー精霊である時点でそっち側であるーーソフィアなら、魔物の存在を知っていておかしくない。

 むしろ、魔物が実在すること(・・・・・・・・)を知っている俺の方がおかしいんだ。


「魔物がいる。それが本当なら外は危険だろう?中にいた方がいいんじゃないか?」


 俺は冷静さを装ってソフィアを説得する。

 しかし彼女の瞳に宿る意志は、全く揺るがなかった。


「わたしには精霊術がありますから、あんな弱い気配(・・・・)の魔物に遅れは取りません」


 説得は無理だと判断し、はぁ~、と溜め息を吐いた。


「少し待ってろ」


 ソフィアは一人でも行くつもりだ。敵が弱いと侮っているし、間違いない。だったら俺が付いていって彼女を不足の事態から守らねば。

 俺はソフィアを玄関に待たせ、一人自分の部屋に戻った。


 あ~ぁ、バレたら加奈子先輩に怒られるなぁ。

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