1ー12 デート(4)
あけましておめでとうございます。正月終わる前に書けてよかった……
さすがに長居し過ぎた俺達は、大園さん、教授、研究生達に別れを惜しまれながら大学を去った。
そして今は再びバスに乗り、次の目的地へと向かっていた。
俺は昨夜、母さんからお使いを一つ頼まれていた。
今から向かう場所にはそのお使いを果たすためだったのだが、お昼にソフィアが甘い物が好きそうだということがわかったので、別の目的も含まれていた。
「次はどちらに行かれるのでしょうか、ユーマ様」
先程からご機嫌な様子のソフィアが、次の目的地について尋ねてきた。
大学での出来事はソフィアに良い刺激を与えてくれたようだ。
そのことを嬉しく思いながら、彼女に次の目的地の名前を教えた。
「今から行くのは『甘弥屋』っていう和菓子屋だよ。母さんがそこの和菓子が大好きでさ、昨日お使いを頼まれたんだよ」
「和菓子……一体どのようなお菓子なのですか?」
「優しい甘さなお菓子だよ。実物見るまでのお楽しみってことで」
菓子という言葉にすぐさま喰いついたソフィア。この喰いつきっぷりを見ても、俺のソフィアは甘い物好きという予想は外れていなさそうだ。
バスを降りるとすぐに目的の店「甘弥屋」に着いた。街の雰囲気に合った清潔感のあるオシャレな店で、日本の和の落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「いらっしゃいませー」
「よっ!久しぶり、莉恵」
「あ、水瀬君じゃん!おひさー」
店に入ると一人の少女が出迎える。
彼女はこの店の店員であり、店主の孫娘の三上莉恵だ。俺の同級生であり、美奈穂の友人である。俺は違うのかって?知り合いではあるが……友人と言えるほど仲が良いのか自信はないかな。
「今日はどうしたの?」
「母さんが注文した和菓子を買いに来たんだ」
「そっか、お爺ちゃんが注文受けてたのって水瀬君のお母さんのだったんだ。……ところで、そこにいる女の子、誰?」
「そういや紹介してなかった……。えっと、この子はソフィア=クランベル。ちょっと前からおざわ荘に住んでる子なんだ。ソフィア、彼女は三上莉恵。この店の店主の孫娘だ」
「初めまして、リエさん。ソフィア=クランベルです」
「あ、その……初めまして、三上莉恵です……」
二人の自己紹介が済むと、店の奥から老人が姿を現した。
「コラッ、莉恵!なに無駄話をしとる!」
「お、お爺ちゃん!?」
「む?おお、水瀬んとこの坊主じゃねえか。アイリスちゃんの注文した和菓子は準備できとるぞ」
「ありがとうございます。和彦さん」
笹木和彦。彼は莉恵の言ったとおり、彼女の祖父で甘弥屋の店主だ。
彼は俺の姿を見ると莉恵を怒るのを中断して奥から和菓子の入った紙袋を持って来た。
俺は紙袋を受け取ると彼に注文した。
「追加で何か買いたいんですけど、そうだな……苺大福を二つ。それと水羊羹と栗饅頭も二つずつ」
俺はちらりと横を見る。視線の先にはショーウィンドウの中の和菓子を熱心に見つめるソフィアの姿があった。
そんな彼女の姿に微笑ましさを感じた俺は、持ち帰りではなく店内で食べていくことにした。
和彦さんにお願いすると二つ返事で了承してもらうことができ、どうせならと店の奥へ入れて貰うことになった。店の奥と言っても厨房のある場所ではなく、二階の生活スペースーー具体的には莉恵の私室へと通された。
「私はお茶の準備をしてくるから、適当に寛いでて」
「わかった。その、そこまでしてくれてありがとう」
「ありがとうございます。リエさん」
「別に気にしないでいいわよ」
莉恵はそう言うとお茶を用意しに部屋を出て行った。
俺達は彼女が戻ってくる前に、机の上に先ほど追加で買った分の和菓子を並べた。
莉恵はすぐにお茶を持って戻って来た。甘い和菓子にちょうど合う渋めのお茶だ。それと和菓子ではなかったが、クッキーなどのお菓子も持って来ていた。
彼女の持って来た物も机に並べ、座布団に座る。和彦さんに「お前も一緒にいてやれ」と言われた莉恵も一緒だ。
ちょっとしたお茶会のようだな。
「どれから食べましょう……」
「好きなやつというか、気になったのから食べたら?俺のオススメはこの苺大福な」
「水瀬君は苺大福が好きなんだ。私は水羊羹みたいなのが好きよ」
「二人で意見が違いますぅ。うーん、ここは……イチゴダイフク?というのから食べてみます」
そう言うとソフィアは苺大福をフォークで突き刺した。
莉恵は自分のオススメが選ばれなくて、若干不服らしく頬を小さく膨らませていた。
ソフィアは苺大福を小さくかじり咀嚼すると、驚いたように目を見開いた。すると残りの苺大福を口に入れ、味わうようにモグモグと口を動かした。
彼女の表情がなんだか恍惚としており、その夢中になっている様子に莉恵は驚いた表情をしていた。
ソフィアが口の中のものを全て飲み込み、ふうっと満足そうな溜め息を吐くと、莉恵は彼女に感想を訊いた。
「えーっと、ソフィアさん。苺大福のお味はどうでした?」
その質問に対しソフィアはうっとりした表情で、
「とても美味しかったです。外側の柔らかいものと中の果物の組み合わせに心奪われてしまいました。こんな繊細で優しい甘さのお菓子は初めてです。今まで食べてきたお菓子の中で一番かもしれません」
と言った。
大絶賛だった。
勧めた俺が言うのもあれだが、ここまで気に入るとは思ってなかったよ。
「次こそはこれ、食べてみてよ」
莉恵が水羊羹を勧める。なんか必死で、怖い。
ソフィアは気圧されながら水羊羹を食べた。
「どう?どう?」
「こちらも甘くて美味しいですね。ですがわたしはイチゴダイフクの方が好みです」
「ぐはぁ……っ!?」
ソフィアの素直で真っ直ぐな感想に、莉恵が血を吐きそうな勢いで倒れる。いきなりのことに目を白黒させるソフィア。……見事な、一発KOだった。
「……水瀬君、そのドヤ顔やめて。ちょっとウザい」
おっと、どうやら顔に出てしまったようだ。ソフィアが俺と同じく苺大福を好きになったぐらいで、勝ち誇るのは大人気ないよね。反省、反省っと。
とまあこんな下らないやり取りをしながらお茶会をしていたのだが、俺は尿意を覚え席を離れることにした。莉恵にトイレの場所を訊いた俺は、そそくさとトイレに向かうのだった。
□□
悠真が部屋を出て行くと、部屋の中は妙に静かになった。
それもそのはず。ソフィアも莉恵も、互いに知り合って数十分しか経ってないため、話すときには悠真を仲介するような形で会話が成り立っていたからだ。
そのため悠真がいなくなったことでどう話せばいいのかわからず、ただ部屋に奇妙な緊張感が漂うことになった。
その雰囲気を誤魔化そうとお菓子を黙々と食べる二人。ソフィアは美味しいお菓子を素直に食べられなくて、少し悲しい気持ちになった。
お菓子の残りが少なくなってくると、この空気に耐えきれなくなった莉恵がソフィアに声を掛けた。
「……ねえ、ソフィアさん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「え?はい、いいですよ」
莉恵の雰囲気が重たく感じたことに訝しんだが、ソフィアはすぐに頷いた。
「ソフィアさんってさ、何者なの?」
「!?」
一瞬自分が精霊であることを言っているのかと思い息を呑んだが、すぐに違うと思い直し尋ね返す。
「何者、というと?」
「……何て言えばいいのかな。今日見た水瀬君とソフィアさんの関係に驚いたから。『あの』水瀬君がおざわ荘に住んでる女の子以外と仲良くしてるのを初めて見たから……」
「えっと、それはつまりどういうことですか?」
「水瀬君はね、おざわ荘以外の人と親しくしないのよ。おざわ荘に住んでいたとしても、出会ったばかりの人にも、ね」
「それって……」
そこまで言われたら流石に理解できる。つまりは悠真と出会ったばかりのソフィアが、なぜ仲良くなっているのかと莉恵は聞きたいのだ。
しかしそれには腑に落ちない点がある。
「確かにわたしはユーマ様に好くして頂いてますが、言うほどおかしなことでしょうか?」
ソフィアの言葉に莉恵は一瞬苦虫を噛んだような表情をしたが、「ん?ユーマ『様』?」と疑問符が頭に浮かんだようだった。しかしスルーしてソフィアの言葉に答える。
「普通の人だったらおかしくないわ。でも、水瀬君は違うのよ。多分、いや間違いなく私のことを友達と思ってないでしょうし」
「え!?わたしはリエさんとユーマ様は仲が良さそうに見えましたが……」
「あはは、ありがとう。でもそう見えているだけで、彼の心には壁がある。彼は私に心を許してくれてない。私は、せめて友達くらいにはなりたかったんだけどね」
「何かあったのですか?」
「何もないわ。ただ気づいちゃっただけ。随分前のことなんだけどね。私が美奈穂と遊ぼうとおざわ荘に行ったとき、水瀬君も一緒に居てね。気づいたんだ。彼の私と美奈穂を見るときの差ってやつに。最初は美奈穂が好きだったりするからかなと思ったんだけど、
おざわ荘の人達と関わるうちにわかったよ。水瀬君はおざわ荘以外の人に微塵も興味がないんだって……」
「そんな……もしかしたら気のせいかもしれないじゃないですか」
「そうね、私の勘違いかもしれない。けど、私はそう思った。思わせるような態度を彼はとったのよ」
「……」
「ごめんね。こんな話をして」
「あ、い、いえ……」
ソフィアはうまく言葉を返せないでいた。
無理もない。突然こんな重たい話を明されたら誰だってこうなるだろう。
ソフィアを戸惑わせたことに気づいた莉恵は反省して、話を比較的明るめの方向に変えることにした。
「私は貴女が羨ましいわ。水瀬君は貴女には心を開いているようだったから」
「え?」
「多分、ソフィアさんなら彼を変えられる。そんな気がするの」
「な、なんだか責任重大ですね」
「そうね。私が水瀬君と友達になるためにも、ソフィアさんには頑張って貰わないとね」
冗談っぽく言う莉恵だったが、それはソフィアの心に重くのしかかっていた。
□□
小さい方だけのつもりが大きい方までしたくなったせいで、結構な時間が掛かってしまった。
俺が部屋に戻ってくると二人が談笑していた。
「何の話をしてたの?」
「あ!ユーマ様!」
「ふふふ、女の子だけのヒ・ミ・ツ♪」
「?」
お茶会も終わり、俺達は店を出ることにした。
「また来てね二人とも」
「おう」
「また機会があれば来ますね」
ソフィアが莉恵に近づき、口を彼女の耳元に寄せる。
「もしユーマ様がリエさんの言う通りの方だった場合は、変えられるように努力してみます。だからリエさんは、ユーマ様に友達になりたいとはっきり言葉にしてみてくださいね」
「!?」
「それでは」
ソフィアがこっちに戻って来た。何の話をしていたのか訊いてみたいが、どうせはぐらかされるだけだろう。俺の名前を言っていた気がしたのだが……まあ、いっか。
俺達は莉恵と和彦さんに別れを告げるとバスに乗り、電車に乗り変え帰路につく。
夕暮れの街を歩き、おざわ荘の前まで来てーー通り過ぎた。
「あれ?ユーマ様、帰らないのですか?」
「最後に行きたい所があってな。ついて来てくれ」
「はい」
俺が最後に行きたかったのは、おざわ荘からすぐの所にある「桜の丘公園」という公園だ。山を少し登った所にあるため、この街を一望できると地元民には有名な場所だったりする。
「わあっ……凄く、綺麗……」
ソフィアが感嘆の声を零す。
街を一望できるこの公園からは、紅く彩られた街並みや西の水平線に沈みゆく太陽などの美しい夕焼けの景色が見られるのだ。
「綺麗だろ?俺のお気に入りの場所でな、ソフィアにこの光景を見せたかったんだ」
「ユーマ様……とても嬉しいです。ありがとうございます」
朱く彩られたうっとりしているソフィアの横顔は夕焼け以上に美しく、ドキッとさせられる。
ここに連れてきて良かったと、心の底から思えた。
「あの、どうしてユーマ様はわたしをここに連れてきてくれたのでしょう?本当に見せたいだけなのですか?」
「あはは、鋭いなソフィアは。そうだ。理由は他にもある。……例のお願いに対する返事を、誰もいない状態でするためだ。幸い今この公園にいるのは俺達だけみたいでよかった」
俺がそう言うとソフィアに緊張が走った。
彼女の不安な表情をしっかり見つめ、俺は語り始める。
「今日君と一日街を歩いて、君のことを見定めさせて貰った。……結論から言う。俺は、ソフィアの願いを叶える」
「……っ!?」
「今日見た限り、俺は君のことを信用できると判断した。俺に君の力になりたいと思わせた。だから俺の大事な仲間、おざわ荘の仲間として正式に認めます。……これからよろしく、ソフィア」
「……うぅ、ぁぁ、…… ああぁ……っ!ユーマさまぁ……っ!ありがとう、ございます。ほんとうに、ありがとうございます!」
感極まったソフィアが涙を零しながら抱きついてきた。泣きじゃくる彼女にどうすればいいのかわからずパニックになりかけた俺だったが、とりあえず優しく頭を撫でることにする。
「んっ……ぐすっ、もう大丈夫です。ごめんなさい、急に泣いたりして」
「いや、俺の方こそごめん。返事を長引かせたりして。不安だっただろ?」
俺はハンカチで涙を拭く。
彼女は濡れた瞳で俺を見上げる。そこにはまだ不安の色が残っていた。
「一つ、尋ねてもいいですか?」
「なんだい?」
「どうして受け入れて下さったのですか?ユーマ様はどうしてわたしを認めて下さったのですか?リエさんから聞きました。ユーマ様はおざわ荘の方達以外に興味がないと。それは本当なのですか!?」
「お、落ち着いてソフィア。一度に言われても答えられないから!」
「ご、ごめんなさい……」
ソフィアを宥めた俺は、彼女の言葉をしっかり理解してから、ゆっくり言葉にして答える。
「まず一つ。莉恵から聞いたっていう、俺が『おざわ荘の皆以外の人間に興味がない』って話から答えるよ。これは事実だ。基本、俺はおざわ荘以外の人間に興味はない」
「そんな……っ!では、どうしておざわ荘に関係ないわたしを受け入れて……」
「……二つ目。俺がお前を受け入れ認めた理由はな……あぁもう!恥ずかしいからあんまり言いたくないんだけど……俺は、初めて学校の屋上でお前を見たときから、ずっとお前のことが気になってたんだっ!!」
「え?ええぇーーーっ!!?」
ソフィアの顔がみるみるリンゴのように赤くなっていく。多分俺も同じくらい赤くなっているだろう。こんな恥ずかしいセリフ、とっさとは言えよく口にできたもんだ。
「俺は自分がおざわ荘以外の人間に興味を抱いたことに気づいて、結構驚いたんだよ。まあ、人間じゃなく精霊だって言うからもっと驚いたけど……。俺が初めからお前のことを気になった理由なんてわからないさ。でも、そのおかげですんなりお前を受け入れようと思えた。本当だぞ?」
「だったら、わたしに心を開いてくれていますか。リエさんはユーマ様の心に壁を感じると言ってましたが、わたしに心を開いているのですか?」
「ああ。少なくともお前の頼み事は俺のできる範囲で叶えてやりたいと思う程度には。まぁ信じられないかもしれないけどさ」
「いいえ、信じます。嘘を吐いているようには見えませんから」
「そっか、ありがとう。俺が星神なんて力を求めるのは、大切な人を守るためなんだ。けど、俺が守れる数にも限界があるから、せめておざわ荘の皆だけでも守れる力が欲しくてソフィアの力になろうとした。でも今はそれだけじゃなくて、お前もおざわ荘の仲間だから、お前のことも守ってやる。お前の大切なものも一緒に。だから俺を導いてくれるか?」
「はい。いつまでも、どこへでも貴方様と共に」
誓いのような言葉を交わすと、再びソフィアが身を委ねてきたので、ぎゅーっと少し力を込めて抱きしめた。少しでも心が通じ合うようにと想いを込めながら。
どれほどそうしていたのだろう。
かなり長く感じたが、太陽が沈んでないことからそんなに長くはないはずだ。
ずっと抱き合っていることに理解が追いついたソフィアが慌てながら俺から離れる。
いくら心を開いたと言ってもそれは友人としての話であって、恋愛感情は俺にはない。友達として好き、というやつだ。だけどそこそこ長く抱き合っていたせいで俺の腕にはしっかりとソフィアの温もりが残っており、それが何だか無性に気恥ずかしくなった。
妙な空気が漂い、耐えられなくなった俺が「そろそろ帰ろうか」と言おうとした瞬間、何かを思い出したのかソフィアが「あっ!」と声を出した。
「そう言えばわたしもユーマ様にお見せしたいものがありました!」
ソフィアはそう言うと服の内から首に下げた銀のロケットを取り出した。そしてそれを俺に手渡してくる。
「これは?」
「わたしが幼い頃から大切にしている宝物で……見て頂きたいのはその中にあるものなのです」
銀のロケットを開く。そして中に入っていた写真を見た瞬間、稲妻が落ちたような精神的衝撃を受け目を見開いた。
「……こ、これ、もしかしてソフィアか?そんでもって隣に映ってる男の子は……俺、なのか?」
「……わたしはそうだと思います」
「いやいや有り得ないって!俺はソフィアと会った覚えなんてこれっぽっちも……」
ロケットに入っていた写真は、幼い姿のソフィアと俺が映っていた。男の子の姿はアルバムで見たことのある5歳頃の俺と瓜二つだが、それだけなら非常にそっくりな他人だと言えなくもない。
だがしかし、俺はこの男の子が自分であると確信せざる得なかった。
一つ目の理由は背景。写真を撮った場所が今いるここ、桜の丘公園だということ。お気に入りの場所の景色を俺が見間違えるはずがない。
そして二つ目。これは決定的だった。
「この手首に巻いてあるお守り、ここに引っ越す前に母さんから貰ったやつだ……」
今もそのお守りは大事に持っている。傷んでいるため身に着けず部屋にあるけど。
このお守りは母さんが作った物だから、この世に二つとない物だ。
そのためここに映った男の子は、ほぼ間違いなく水瀬悠真だということになる。
「けどなんでだ?俺はこんなの知らないぞ。ソフィアは覚えてるのか?」
「いいえ、わたしも覚えていないのです。ただお母様から、『あなたが将来を共にする御方ですから、絶対に無くさず大切にするのですよ』と何度も言っていたのを覚えています。正直こんな写真を撮った覚えはないのにそんなことを言われて不思議に思ってました」
「そりゃそう思うよ。にしてもよくずっと持ってたね。不気味になって手放そうとかならなかったの?」
「一度も思ったことはありませんよ。むしろ気になってました。この人と将来を共にするのかー、どんな人なのかなーって、会える時を待ってましたから。だから初めてユーマ様を見たとき、直感しました。もしかしたらこの人がそうかもって。……わたし、ユーマ様に会えて嬉しかったんです」
頬を染めて満面の笑みを浮かべるソフィアはとっても魅力的で、「好きです」と告白されたわけでもないのに、告白された気分になった。
「俺もソフィアと出会えて嬉しい。毎日が今まで以上に楽しいんだ」
そう返すだけで精一杯だった。
俺の言葉にあわあわと真っ赤になって恥ずかしがるソフィアが数歩下がって桜の木の下に立つ。
その瞬間俺は何かがフラッシュバックするように、目の前のソフィアと写真の幼いソフィアが見えていた。
『ユーマさま、いつの日か、わたしをーー』
幼いソフィアが何かを言っていたが、そっから先はわからずに幼いソフィアはぼやけて見えなくなった。
「ユーマ様、どうかしましたか?」
呆けていた俺をソフィアが駆け寄ってきて心配そうに尋ねてくる。俺はフッと微笑むと、
「いや、お前の母親に会えたら色々聞きたいなって思ってさ」
「確かに!わたしもお母様には色々聞いてみたいです」
そして二人で笑い合うのだった。
その後ーー
悠真達を見失った上に大学でへとへとに疲れたサラ達四人は、悠真達より先に帰って来ていた。
そして悠真達が帰って来て、
「さあ四人とも。何か弁解はあるかな?」
「「「「……」」」」
悠真の前で四人揃って正座をしていた。
ソフィアは買った服などを整理するためここーー悠真の部屋にはいない。
「……どうしてわかったの?私達が尾行してたって」
「むしろ大学であんな騒ぎになって気づかれないとでも?」
美奈穂の質問に悠真は呆れたように返す。
四人は「はぁ~~……」とそのときの騒動を思い出し深い溜め息を吐いた。
「罰としてお前達には『一週間の風呂掃除』をしてもらう。管理人代理としての命令な」
おざわ荘の風呂は広いため、その面倒さからやりたくない仕事一位である。「あれ?女湯は三人だけど男湯は俺だけ!?マジで?嘘だろ!?」と絶望していたがスルーする。女子メンバーもげんなりした表情をしている。
そんな顔するならやらなきゃよかったのに。困った奴らだよ、まったく。
けど憎めないんだよなぁと、俺は苦笑するのだった。
次は精霊術についての予定。




