第53章
クーパーウッドが四年三か月の刑期を務めることになったベンシルバニアのイースタン州立刑務所は、フィラデルフィアのフェアモント・アベニューと二十一丁目の角に建つ灰色の石造りの大きな建物で、その雰囲気は荘厳で重々しく、ミラノのスフォルツァ城に似てなくもないが、それほど洗練されてはいない。それは、四つの異なる通りに沿って数ブロックにわたって灰色の外壁を伸ばし、いかにも刑務所らしい孤独で近寄りがたい外観をしていた。十エーカー以上の広大な敷地を囲んで、そこにものものしい威厳を存分に与える壁は、高さが三十五フィート、厚さが約七フィートもあった。外からは見えない刑務所本体は、中央の空間もしくはホールを中心にタコの足のように配置された七つの監房棟で構成され、その長大な棟が、壁に囲まれた敷地の約三分の二を占めていたために、芝生や草地の魅力を楽しむ余地はほとんどなかった。監房棟は外壁から外壁までの幅が四十二フィート、全長が百八十フィートあり、そのうち四棟は二階建てで、放射状に長く伸びていた。監房棟には窓がなく、屋根に長さ三フィート半、幅八インチほどの細い天窓があるだけだった。一階の独房のいくつかには十×十六フィートほどの小さな庭がついていた――広さは独房と同じで、いずれも高いレンガ塀に囲まれていた。独房と床と屋根は石でできていて、幅がたった十フィートしかない独房と独房の間の通路と、高さが十五フィートしかない平屋部分は、石で舗装されていた。円形の中央の空間に立って、そこから四方八方に伸びる長い監房棟を見下ろすと、その長さに釣り合わない狭さと閉塞感を覚えた。鉄の扉には、囚人の視界と聴覚を完全に遮断するために時折使われる頑丈な木製の扉が外側に取り付けられていて、陰鬱で見るからに不快だった。廊下は頻繁に白く塗られ、冬はすりガラスで塞がれる狭い天窓が取り付けられていて十分明るかったが、監禁のためのこういう実用的な施設がすべてそうであるように、殺風景で、見ても退屈だった。当時ここには四百人の囚人がいて、ほぼすべての独房が塞がっていたことを考えれば、確かにそこに生活はあった。しかし、それは誰も基本的に光景としては意識していない生活だった。クーパーウッドもその中にいたが彼は違った。長く服役している囚人の中には〝模範囚〟や〝使い番〟として使われる者がいるが、数は多くなかった。パン焼き場、機械工作室、大工工房、倉庫、製粉所、一連の菜園や野菜畑があったが、これらの運営に大人数は必要なかった。
刑務所の本体は一八二二年に建設され、棟をひとつずつ増やしていって、現在のかなりの規模に到達した。収容者は、知能の程度も犯罪の重さも、殺人犯から軽微な窃盗犯まで、さまざまな者たちで構成されていた。そこには「ペンシルバニア・システム」という収容規則があり、収容者全員を独房に監禁する以外の何ものでもなかった――独房で絶対的な沈黙を守って、個別に労働する生活だった。
結局、典型的なものからは程遠い、郡刑務所での比較的最近の経験を除けば、クーパーウッドは生まれてから一度も刑務所に入ったことはなかった。子供の頃に一度、周辺の町をいくつも歩き回っていて、ある村の〝留置場〟の前を通りかかった――当時、町の刑務所はそう呼ばれた。小さな四角い灰色の建物で、長い鉄格子の窓があった。二階のかなり陰気な窓の一つに、感じいいとは言えない酔っ払いだか町のごろつきが見えた。寝ぼけた目で、髪はボサボサ、むくんだ、蝋のように青白い顔で彼を見下ろし声をかけてきた――夏だったので刑務所の窓は開いていた。
「なあ、坊や、噛みタバコくれねえか?」
見上げたクーパーウッドは、男のだらしない身なりに驚いて心を乱され、考える間もなく叫び返した。
「やだよ」
「いつか刑務所にぶちこまれんよう気をつけろよ、チビ」前日の酔いが半分しかさめていない男は、荒々しく言い返した。
この場面を何年も思い出したことがなかったのに、今、突然よみがえった。今度は自分が、この冴えない陰気な刑務所に閉じ込められようとしている。雪が降っていた。できる限り、人間社会から切り離されようとしていた。
外門の先は誰も同行が許されなかった――その日のうちに後で訪ねて来るかもしれないシュテーガーでさえこの時は駄目だった。これは破れない規則だった。ザンダースは門番と知り合いで、収監状を持参していたので、すぐに認められた。その他の者は神妙に引き下がった。みんなは、愛情は込もっているが暗い別れを告げた。クーパーウッドの方は大したことではない印象を与えようとした――確かに、これは部分的には、今この場でさえ、大したことではなかった。
「じゃあ、ひとまずお別れということで」握手しながら言った。「私なら大丈夫。すぐに出られますよ。見ててください。リリアンに心配しないよう伝えて下さい」
クーパーウッドは中に入った。門が背後で重々しい音を立てた。ザンダースは広くて天井の高い、暗く陰気な廊下を通り抜けて、その先の門へと案内した。そこで大きな鍵をいじっていた二人目の門番が、命じられるがままに鉄格子の扉の錠を開けた。刑務所の敷地内に入ると、ザンダースは左に曲がって小さな事務所に入り、胸の高さほどの小さな机の前に囚人を立たせた。そこには青い制服を着た看守が立っていた。その男、刑務所の入所管理の責任者――細い灰色の目と明るい髪をした、痩せた手際のいい管理者風の人物――は保安官代理が手渡した書類を受け取って、目を通した。これはクーパーウッドを彼が受け入れる権限の証書だった。今度は彼がザンダースに囚人を受け取ったことを示す受領証を渡した。するとザンダースは、クーパーウッドが握らせた心づけをありがたく受け取って立ち去った。
「では、さようなら、クーパーウッドさん」ザンダースは探偵めいた独特の首のひねり方をして言った。「お気の毒ですが、あなたがここでひどい目に遭わないことを願ってますよ」
ザンダースは入所管理の責任者に、自分がこの高名な囚人と親しいことを印象づけたかった。クーパーウッドは相手の見せかけの方針に合わせて、愛想よく握手に応じた。
「あなたのご親切には大変感謝しています、ザンダースさん」と言って、それから好印象を与えようと決めた人の態度で、新しい主人の方に向き直った。自分が今、自分の快適さを思いのままに変えたり増やしたりできる小役人の手中にあることをクーパーウッドは知っていた。どんな形であれ自分を卑下することなく――規則にも命令にも完全に従うつもりであること――権威への敬意――をこの男に印象づけたかった。クーパーウッドは落ち込んでいたが、法律が最後に行き着く組織、彼が逃れようと必死で闘ってきた州刑務所の手に落ちてさえ、手際がよかった。
入所管理の責任者のロジャー・ケンダルは痩せた事務員風の男だが、刑務官としてはかなり有能だった――そつがなく、特に高い教育を受けたわけでも、生まれつきずば抜けて頭がよかったわけでも、ことさら勤勉でもなかったが、自分の地位を保つだけのエネルギーはあった。囚人については――かなり――詳しかった。何しろ二十六年近く囚人を相手にしてきたからだ。囚人に対する彼の態度は、冷たく、皮肉っぽく、批判的だった。
囚人が自分に個人的に接触してくるのを許さず、自分の目の前で部下が法の要求を果すよう徹底した。
クーパーウッドがとても立派な服装――濃い灰青色の純毛の綾織のスーツ、軽くて仕立てのいい灰色のオーバーコート、最新型の黒い山高帽、新しい良質な革靴、重厚で保守的な色合いの極上のシルクのネクタイ、腕のよい理髪師の仕事だとわかる髪と口髭、手入れの行き届いた手――で入ってくると、入所管理の責任者はすぐに、自分が高い知性と実力を備えた人物、この仕事では運がよくても滅多にお目にかかれないような人物、を前にしているのだとわかった。
クーパーウッドは誰のことも何も見ていないような様子で、部屋の真ん中に立っていたが、すべてを見ていた。「囚人三六三三番」ケンダルは事務官に声をかけて、同時に黄色い紙切れを手渡した。そこにはクーパーウッドのフルネームと、刑務所が始まったときから数が続いている彼の登録番号が書いてあった。
それを下働きの囚人が受け取って帳簿に記入し、最終的にクーパーウッドを刑務所の暮らしについて教える〝指導〟室へ連れて行く〝使い番〟だか〝模範囚〟に渡すために保管した。
「服を脱いで風呂に入ってもらう」ケンダルは興味深げに見ながらクーパーウッドに言った。「あなたには必要ないと思うが、そういう規則なんだ」
「ありがとうございます」自分の人柄がこんなところでさえ何かの役に立っていると喜びながら、クーパーウッドは答えた。「規則とあらば、何にでも従います」
しかしクーパーウッドがコートを脱ぎ始めると、ケンダルが手をあげてそれを制し、ベルを鳴らした。すると隣の部屋から、刑務所の下働きが手伝いに現れた。〝模範囚〟に属する異様な外見の男だった。小柄で色が黒く体が傾いていた。片足が少し短いために片方の肩がもう片方よりも低かった。胸がへこんでいて、斜視で、足をかなり引きずって歩いていたが、十分に敏捷だった。薄手の作りが粗末な縞柄のジーン布の、だぶだぶの囚人服を着て、その下に柔らかいロールカラーのシャツが見えていた。太い縞の大きな帽子をかぶっていたが、クーパーウッドにはその大きさも形状も妙に不快に映った。まっすぐ突き出たつばの下から相手を見るこの男の斜視が、どんなに薄気味悪く見えるかを考えずにはいられなかった。模範囚は片手を上げて、愚かな媚びへつらう敬礼をした。この男は、二階から忍び込む手口の泥棒で、十年〝服役〟していたが、素行がよかったために、ふつう囚人が帽子の上にかぶる屈辱的なフードをつけずに、この部署で働く栄誉を得ていた。このことを当然ありがたく思っていた。男はこのとき神経質な犬のような目で上司をうかがってから、クーパーウッドを見て、彼の置かれた立場をずる賢く評価し、まずは疑ってかかった。
普通の囚人にすれば、囚人はみんな同じである。実際、ここに来る者はみんな自分たちと変わらない、というのが落ちぶれた彼らの唯一の慰めである。世間は彼らをひどい目に遭わせたかもしれないが、彼らも内心では仲間を見下している。〝お前よりましなんだ〟という態度は意図的であろうとなかろうと、刑務所の中でとったら最後の禁忌である。ハエがフライホイールの働きを理解できないのと同じで、この〝模範囚〟にクーパーウッドを理解できるはずはないのだが、世間の底辺にいる者特有のあの尊大な優越感で、男はためらいもせず自分に理解できると考えた。この男にすれば泥棒は泥棒でしかない――クーパーウッドは卑しいスリと変わらなかった。相手をおとしめたい、自分と同じレベルまで引きずり下ろしたい、という感情しかなかった。
「ポケットの中身をすべて出すんだ」ケンダルは今度はクーパーウッドに告げた。普段なら「囚人を検査しろ」と言っていただろう。
クーパーウッドは前に出て、二十五ドル入りの財布、ペンナイフ、鉛筆、小さなメモ帳、かつてアイリーンが〝お守り〟にくれた小さな象牙の象を並べた。これはアイリーンがくれたから大切にしているだけだった。ケンダルはそれを珍しそうに見て「よし、続けろ」と次の脱衣と入浴の手順に言及しながら〝模範囚〟に言った。
「こっちだ」そう言って男はクーパーウッドを隣の部屋へ先導した。そこの三つの仕切りには、本体が鉄で蓋が木の旧式の浴槽が三つあり、付属の棚には粗布のタオルや黄色い石鹸などが置かれ、衣類をかけるホックがあった。
「そこに入るんだ」トーマス・キュービーという名前の模範囚が浴槽の一つを指して言った。
クーパーウッドは、これが小役人のこまかい指導の始まりだと悟ったが、ここでも愛想よく振る舞った方が得策だと考えた。
「はい。そうします」
「それでいい」付き添い役は多少気をよくして答えた。「どんだけくらったんだ?」
クーパーウッドは怪訝そうに相手を見た。意味がわからなかった。付き添い役は、この男がこの場所の隠語を知らないことに気がついて「どんだけくらったんだ?」と繰り返した。「刑期は何年なんだ?」
「ああ!」クーパーウッドは理解したように声を上げた。「わかりました。四年三か月です」
クーパーウッドはこの男に合わせることにした。おそらく、その方がいいだろう。
「何をやらかしたんだ?」キュービーはなれなれしく聞いた。
クーパーウッドの血が少し冷たくなった。「窃盗です」と言った。
「軽いもんだな」キュービーは言った。「こちとら十年よ。田舎もんの判事にやられちまってな」
キュービーはクーパーウッドの犯罪について何も聞いていなかった。もし聞いていたとしても、彼にはその複雑な事情はわからなかっただろう。クーパーウッドはこの男と話をしたくなかった。どう相手にすればいいのかわからなかった。いなくなってほしかったが、そうなりそうもなかった。独房に入れて、放っておいてほしかった。
「それはお気の毒に」クーパーウッドは答えた。囚人は、この男は本当に自分たちの仲間ではないのだ、とはっきり悟った。仲間だったら、ことは言うまい。キュービーは浴槽につながっている二本の給水栓のところへ行ってハンドルをひねった。その間にクーパーウッドは服を脱ぎ終えて、今は裸で立っていた。しかし、この知能の低い者の前では恥ずかしさを感じなかった。
「頭洗うのを忘れんな」キュービーはそう言って立ち去った。
水が出る間、クーパーウッドは自分の運命に思いを巡らせながら、そこに立っていた。近頃、自分に対する人生の仕打ちが変だ――やけに厳しい。同じ境遇にいるほとんどの人と違い、クーパーウッドは自分が悪人という意識に苛まれていなかった。自分が悪いとは思わなかった。彼の考えでは、運が悪かっただけだ。まさか、自分がこんな大きな静まり返った刑務所で、本当に囚人になり、見たところであまり楽しくも衛生的でもない、この安っぽい鉄の浴槽の横で、この頭のいかれた犯罪者に見張られながら待っているとは!
クーパーウッドは浴槽に入って、刺激の強い黄色の石鹸でゴシゴシ体を洗い、部分的に漂白しただけのごわごわのタオルで体を拭いた。下着を探したがどこにもなかった。ここでまた付き添い役が顔を出し「出てこいよ」とぞんざいに言った。
クーパーウッドは裸のまま後に続いた。入所管理の事務室を通って、体重計や計測器や記録簿などのある部屋に案内された。入口で見張っていた付き添い役がすぐにやってきて、隅に座っていた事務官が自動的に記録用紙に記入した。ケンダルはクーパーウッドの明らかに優美な体を観察した。すでにウエストが少し太くなり始めていたが、ここに来る大半の体よりは上等だと認めた。特に目についたのは、肌がひときわ白いことだった。
「体重計に乗るんだ」付き添い役はつっけんどんに言った。
クーパーウッドが従うと、男は重りを調整して、慎重に目盛りを読み取った。
「体重百七十五」と読み上げた。「今度はこっちだ」
男が側壁の一点を指すと、そこには床から約七フィート半ほどの高さまで垂直に薄い板が取り付けられていて、下に人が立つと頭上に押し下げられる、小さな可動式の木製指示器があった。板の横には、身長を示すインチ目盛りが、二分の一、四分の一、八分の一単位で刻まれ、右側に腕の長さを測る目盛りがあった。クーパーウッドは何が求められているかを理解し、指示器の下に行ってまっすぐに立った。
「足をそろえて、背中を壁につけろ」付き添い役が促した。「そうだ。身長、五フィート、九と十六分の十インチ」と読み上げた。隅にいた事務官がそれを書き留めた。付き添い役は巻き尺を取り出して、クーパーウッドの腕、足、胸囲、ウエスト、腰などを測り始めた。目と髪と口髭の色を呼び上げて、口の中をのぞき込んで「歯は全部正常」と叫んだ。
クーパーウッドはもう一度、住所、年齢、職業、技能の有無――彼にはなかった――を伝えてから、浴室へ戻ることを許されて、刑務所支給の服を着た――まずは生地が粗くてチクチクする下着、次に安物の柔らかいロールカラーの白い木綿のシャツ、それから生まれてこのかた一度もはいたことがない品質の厚ぼったい青灰色の木綿の靴下、その上に、言葉にできないほど粗末な木靴のような革靴をはいた。木か鉄でできているような感触が足に伝わった――油っぽくて重かった。それから、あの言わずと知れた縞柄の、不格好でだぶだぶのズボンをはき、両腕と胸をゆったり覆う、不格好な上着とベストを着た。自分がかなり奇妙で、惨めな姿をしていることは、感じたし、もちろんわかっていた。そして、再び入所管理の事務室に足を踏み入れたとき、奇妙な落ち込み、気力がなくなっていく感覚を経験した。今まで自分を襲ったことがないもので、今はそれを隠すのに精一杯だった。そのとき、これが犯罪者に対する社会の仕打ちなのだ、とクーパーウッドは内心で思った。社会は私をつかまえて、私の肉体と生活から私本来の衣装を剥ぎ取って、こんなものを残したのだ。悲しく、暗い気分だった。隠そうとしても、それが一瞬表に出るのを防げなかった。本心を隠すのは、いつも彼がやっていることであり、心がけていることだったが、このときばかりはこれができなかった。この服を着ていると、自分の価値が下げられ、どうにもならない気分だったし、自分がそう見えるのがわかった。それでも、気を引き締めて、平然と、自分から進んで従い、目上の者への配慮が見えるように最善を尽くした。結局、これは一種の芝居に過ぎない、見ようによっては夢でさえあり、時がたって少し運に恵まれれば、無事に抜け出せる瘴気でさえある、と自分に言い聞かせた。そうであってほしい。続くはずはない。自分はただ舞台で、よく知っている人生のこの舞台で、奇妙なやり慣れない役柄を演じているだけなのだ。
しかし、ケンダルは彼をろくに見もせず、部下に「彼に合う帽子があるか見てくれ」と言っただけだった。部下は番号のついた棚のあるクローゼットに行って帽子を取り出した――山が高くて、ひさしが真っすぐな、みすぼらしい縞柄の代物だった。クーパーウッドはそれを試着するよう求められた。サイズはぴったりで、耳まですっぽりかぶさった。これで屈辱もほぼ出そろったに違いない、とクーパーウッドは考えた。これ以上何が加えられるだろう? こういう気が滅入る付属品はもうあるまい。しかし彼は間違っていた。「では、キュービー、彼をチェイピンさんのところへ連れていけ」ケンダルは言った。
キュービーは了解して、洗面所に戻り、クーパーウッドが話には聞いていたがこれまで見たことがなかったものを取り出した――長さは普通の枕カバーの約半分、幅はその一・五倍の、青と白の縞柄の木綿の袋だった。キュービーはそれを広げて、クーパーウッドに近づく間に振り開いた。これはしきたりだった。このフードは刑務所創設の頃から使われていて、位置と方角の感覚を奪い、脱獄の試みを防ぐのが目的だった。その後、在監中はずっと、他の囚人と一緒に歩くことも、話すことも、姿を見ることも許されなかった――話しかけられない限り、上の者との会話さえ禁じられた。厳しい理念だったが、ここでは厳格に実施されていた。それでも後に彼が知ることになるように、これさえここでは修正が可能だった。
「こいつをかぶんなきゃいけないんだ」キュービーはそう言って、クーパーウッドの頭にかぶせられるように袋を広げた。
クーパーウッドは理解した。以前、どこかで聞いたことがあった。少しショックを受けた――最初はほんの少し本当に驚いてそれを見たが、すぐに両手をあげて引き下ろすのを手伝った。
「いいから」看守は注意した。「手をおろせ。俺がかぶせてやる」
クーパーウッドは腕をおろした。完全にかぶると、袋は胸のあたりまできて、ほとんど何も見えなくなった。とても奇妙な気分だった。ひどくはずかしめられ、ひどく消沈してしまった。青と白の縞柄の袋を頭にかぶるという、ただそれだけのことが、彼の冷静さをほとんど奪ってしまった。どうしてこの最後の屈辱だけでも許してくれなかったのだろう、とクーパーウッドは思った。
「こっちだ」付き添い役は言った。どこだか見当もつかないところへ彼は連れて行かれた。
「前に広げれば、歩けるぶんには見えるからな」案内人は言った。クーパーウッドは袋をひっぱって広げた。これで足元と下の床の一部が見えるようになった。こうして移動中は何も見えないまま、短い通路を進み、長い廊下を抜けて、さらに制服を来た看守たちのいる部屋を通り抜けて、最後に狭い鉄の階段を上り、二階建ての棟のうちの一棟の、二階にある看守長室に連れて行かれた。そこでキュービーの声がした。「チェイピンさん、ケンダルさんのところからまた囚人を連れてきました」
「すぐ行くよ」離れたところから、妙に感じのいい声がした。やがて、大きな重い手が腕をつかみ、クーパーウッドはさらに先に連れて行かれた。
「もうそんなにないからな」と声がした。「そしたら、袋をとってやる」クーパーウッドは、なぜか同情されている気がした――多分、胸が詰まりそうだったからだろう。それからはいくらも歩かなかった。
独房の扉にたどり着くと、大きな鉄の鍵が差し込まれて錠が外された。扉が開き、同じ大きな手がクーパーウッドを中へ導いた。すぐに袋が頭から軽く引き抜かれて、自分が狭い白塗りの独房にいるのがわかった。やや薄暗く、窓はないが、長さ三フィート半、幅四インチのすりガラスの小さな天窓があって、上から光が差し込んだ。側壁の片方の中ほどのフックからブリキのランプが、常夜灯の代わりにぶらさがっていた。片隅には粗末な鉄製のベッドがあって、わらのマットレスが一枚と、おそらく洗われていない濃い青の毛布が二枚置かれていた。別の隅には蛇口と小さな流しがあった。ベッドの向かいの壁には小さな棚があった。ベッドの足元には、平凡な丸い背もたれの普通の木の椅子があり、まずまず使える箒が隅に立てかけてあった。排泄用に鉄の便器というかおまるがあって、見てわかるとおり、内壁に沿って走る大きな排水管につながっていて、水をバケツで注いで洗い流すのだ。ネズミや害虫がこれにたかって、独房じゅうに不快な悪臭を漂わせた。床は石だった。クーパーウッドの鋭い目は、一目でそのすべてを把握した。頑丈な独房の扉は、太い鋼鉄の丸棒で格子が組まれて、分厚い磨き上げられた錠がかけられているのに気がついた。その向こうに重い木の扉も見えた。これは鉄の扉よりもさらに完全に囚人を閉じ込めることができた。ここには、澄んだ、清めるような日差しが差し込む余地はなかった。清潔さは、もっぱら漆喰と石鹸と水と箒頼みであり、それは結局のところ囚人自身にかかっていた。
クーパーウッドはチェイピンのことも観察した。初めて目にした、地味で気のいい監房係の長は、大柄で、体が重たい、動きの鈍い男で、どこか埃っぽくて不格好な風采であり、制服は体に合ってなく、立っている姿は、とても腰を下ろしたがっているように見えた。明らかに体はがっしりしているのに力強さはなく、親切そうな顔は、白髪まじりの茶色の短い頬髭でおおわれていた。髪はひどい切り方で、大きな帽子の下からふぞろいな毛がぴょんぴょんはみ出ていた。それでもクーパーウッドはまったく悪い印象を受けなかった――むしろその逆で――この男は他の誰よりも自分のことを考えてくれるかもしれない、とすぐに感じた。いずれにしても、そうであってほしいと願った。クーパーウッドは、自分が〝指導班〟の班長の前にいて、チェイピンは刑務所の規則を教えながら二週間だけ自分を担当することや、彼が担当する相手は全部で二十六名いて、自分はその一人にすぎないことを知らなかった。
この善人は、場をなごませようとベッドまで行って腰を下ろし、硬い木の椅子を指さした。クーパーウッドはそれを引き出して座った。
「さあ、着いたぞ、うん?」と言って、チェイピンは実ににこやかに自分で答えた。彼は無学な男だったが、寛大な性格で、犯罪者を相手にした経験も長かった。親切な気質なので親切に接する傾向があり、さらにひとつの宗教的信条――クエーカー教――が、彼を慈悲深くさせていた。クーパーウッドが後で知ったように、それでも公的職務は彼を、ほとんどの犯罪者は根っからの悪人だという結論に導いたようだった。ケンダルと同様にチェイピンも犯罪者のことを、邪悪な側面を持つ弱虫、ろくでなしだと考えた。大筋で彼は間違ってはいなかった。それでも、彼はありのままの自分、父親のように親切な老人、でいつづけて、精神的に弱い経験の浅い者が唱えがちなお題目――人間の正義と人間の良識――を信じずにはいられなかった。
「はい、着きましたね、チェイピンさん」クーパーウッドは付き添い役から聞いた名前を思い出し、それを使って看守の機嫌を取りながら、簡潔に答えた。
古株のチェイピンでさえ、この状況に多少戸惑いを感じていた。ここにいるのは新聞で読んだ、あの有名なフランク・A・クーパーウッド、著名な銀行家にして公金横領犯だった。この男と共犯のステナーは、新聞で読んだとおり、ここで比較的長い刑期を務める運命だった。当時の五十万ドルは大金で、四十年後の五百万ドルよりもはるかに価値が大きかった。いったい何があったのか――新聞が報じたすべてのことをクーパーウッドがどのようにやってのけたのか――を考えると恐ろしくなった。チェイピンには、いつも新しい囚人に使うちょっとした決まった質問があった――自分が犯した罪を今は後悔しているか、新しいチャンスがあれば改心するつもりがあるか、両親は健在か、などと尋ねて、この質問への答え方――素直、後悔、反抗的、あるいは別の態度をとるか――で相手が十分に罰を受けているかどうかを判断した。しかし、今、自分が見ているクーパーウッドに、普通の、二階から忍び込む泥棒や店舗荒らし、スリ、こそ泥、詐欺師を相手にするような調子で、話しかけることはできなかった。しかし、他にどう話せばいいのか、ほとんどわからなかった。
「さあ」チェイピンは続けた。「まさか自分がこんなところに来ることになるとは思わなかったでしょう、クーパーウッドさん?」
「思いもしませんでした」フランクは簡潔に答えた。「二、三か月前だったら信じなかったでしょう、チェイピンさん。今ここにいなければならないようなことをしたとは思いませんが、まあ、それをあなたに言っても仕方がありません」
チェイピン老人が少し説教めいたことを言いたがっているのがわかったので、喜んで調子を合わせた。どうせすぐにひとりになって話し相手はいなくなるのだ。今のうちにこの男と気心が知れる間柄になれるなら、それに越したことはない。嵐のときは港を選べないし、溺れる者は藁でもつかむのだ。
「まあ、確かに私たちはみんな過ちを犯すものです」チェイピンは、道徳の指導者か改革者としての自分の値打ちにおかしいくらいに自信を持って、優越感をにじませながら続けた。「自分がすばらしいと思った計画がどうなるか、いつもわかるとは限らないものですよね? あなたは今ここにいる。物事が自分の思いどおりにならなかったのを、悔やんでいるでしょうが、もしチャンスがあったとしても、私はあなたが前回と同じようにやろうとするとは思わないが、いかがですか?」
「はい、チェイピンさん、やりませんね、確かに」クーパーウッドは正直に言った。「でも私は自分がしたことはすべて正しいと信じていました。法の裁きが正しく下されたとは思いません」
「まあ、そういうものだよ」チェイピンは白髪まじりの頭をかきながら、にこやかにあたりを見まわして、考え込むように続けた。「ここに来る若い連中にいつも言ってやるんだがね、私たちは自分が思うほど物事をわかってないときがある。私たちは、自分と同じくらい賢い者が他にもいることや、いつも自分を見張っている者がいるってことを忘れてしまう。こういう裁判所や刑務所や刑事ってもんが、いつもそこらにいて、しっかりつかまえるもんなんだ。本当だぞ」――「神にかけて」と言うところをチェイピン流の道徳的な言い回しで言った――「行儀よくしてなきゃ、つかまるんだ」
「ええ」クーパーウッドは答えた。「確かにそうですね、チェイピンさん」
「さて」老人はしばらくして、知恵のあるフクロウのように、もったいつけた善意の言葉をもう少しかけてから、続けた。「これがあなたのベッドで、それが椅子、そっちが洗面台、あれが便器だ。どれもきれいに、正しく使うこと」(まるでクーパーウッドに財産を授けているかのようだった)「毎朝、ベッドを整え、床を掃き、便器を洗い、独房を清潔にしておくのは、あなたなんですからね。ここにはあなたのために、そういうことをしてくれる者は誰もいません。朝起きたら、まずこうした作業をすべてやり、それから六時半ごろ食事です。起床は五時半になっている」
「はい、チェイピンさん」クーパーウッドは丁寧に言った。「承知しました。すべてきちんとやります」
「あとは大したことはない」チェイピンは付け加えた。「週に一度、全身を洗うことになってるから、そんときはきれいなタオルを渡す。次に毎週金曜の朝は、この床を洗う」クーパーウッドはこれを聞いて顔をしかめた。「お湯を使いたければ使ってもいい。使い番に届けさせる。それと、友だちや親族縁者だが」――チェイピンは立ち上がって、大きなニューファンドランド犬のように体を震わせた。「奥さんがいるんでしたね?」
「はい」クーパーウッドは答えた。
「うん、ここの規則では奥さんや友だちとの面会は、三か月に一回、弁護士は――弁護士がいましたね?」
「はい、います」クーパーウッドは面白がって答えた。
「弁護士は毎週でも来られる。そうしたければ――毎日でも平気だ。弁護士に関する規則はないからな。だが手紙は三か月に一度だけだ。タバコの類がほしければ、所長にお金を預けてあれば、伝票にサインして倉庫から持ち出せる。その時は私が持ってきてやる」
この老人は、お金でささやかな心付けを受け取るような男ではない。もっと厳格で誠実だった時代の名残のような人物だ。しかし、この男を親切で寛大にさせるには、後で贈り物をしたり、いつもおだてておけば、間違いない。クーパーウッドは相手を正確に読み取った。
「なるほど、チェイピンさん。よくわかりました」老人が立ったので自分も立ち上がって言った。
「それから、ここで二週間たったら」チェイピンはやや考え込むようにして付け加えた。(先にこれをクーパーウッドに伝えておくのを忘れていた)「所長が来て、身柄を引き取り、下の階での正式な独房番号を割り当てる。それまでに、自分が何をしたいのか、どんな仕事をしたいのかを決められるだろう。素行がよければ、庭つきの独房をもらえるかもしれんよ。わからんがね」
チェイピンは出て行き、重々しいカチッという音を立ててドアに鍵をかけた。この最新の情報のせいでクーパーウッドはそれまでよりも少し落ち込んで、その場に立ち尽くした。わずか二週間で、この親切な老人から離されて、自分の知らない、うまくやっていけるかどうかもわからない別の担当者に引き渡されるのだ。
「もし私に用があれば――病気や具合が悪いときは」チェイピンは二、三歩離れてから、これを言うために引き返してきた。「ここにはここのやり方があってね。この鉄格子にタオルをかけておけばいいんだ。通りがかったときに、タオルが目についたら、立ち寄って用件を聞くからね」
クーパーウッドは気持ちが沈んでいたが、いったん持ち直した。
「わかりました」と答えた。「ありがとうございます、チェイピンさん」
老人は立ち去った。足音がセメントで舗装された廊下を遠ざかっていくのが聞こえた。クーパーウッドは立ったまま耳をすませた。時々、遠くの咳、擦って歩くようなかすかな足音、機械の低い唸りや回転音、錠に鍵がこすれる金属音がした。物音はどれも大きくなかった。むしろ、どれもかすかで遠くに聞こえた。クーパーウッドはベッドのところへ行って見てみた。あまり清潔ではなく、シーツがなく、広くも柔らかくもなかった。気になって触ってみた。そうだ、これからはここで眠ることになるのだ――贅沢や洗練されたものを追い求めて、その価値がわかるこの自分が。もしアイリーンや金持ちの友人の誰かが、ここにいる自分を見ることにでもなったら。さらに悪いことに、害虫が出るかもしれないと思うと気分が悪くなった。どうすればいいだろう? どうすればやっていけるだろう? 一つしかない椅子は粗末だった。天窓から差し込む光は弱かった。状況に慣れていく自分を想像しようとしたが、隅にある汚物入れに改めて目がいくと、げんなりした。ここにネズミが出るかもしれない――いかにもそんな雰囲気だった。絵も、本も、風景も、人も、歩くスペースもない――ただ四方にむき出しの壁と静寂があるだけで、夜は厚い扉によってこの中に閉じ込められるのだ。何てひどい運命なんだ!
クーパーウッドは座って状況を考えた。ついに自分はここ、イースタン刑務所まで来てしまった。(その中にバトラーを含む)政治家たちの判断で四年以上ここに閉じ込められる運命なのだ。ふとステナーのことが頭に浮かんだ。おそらくはあいつも、たった今自分が遭ったのと同じ目に遭わされているかもしれない。哀れなステナー! あいつはみすみす自分を、何という愚か者にしてしまったんだ。だが、本人が愚かだったのだから、今受けているすべての仕打ちは自業自得だ。しかし、自分とステナーが違うのは、ステナーはいずれ出されることだ。自分が知らない何らかの手段で、すでに彼の処罰を軽くしているかもしれない。クーパーウッドは顎に手をあてて、仕事のこと、家のこと、友だち、家族、アイリーンのことを考えた。腕時計に手をやろうとして、取り上げられたのを思い出した。時間を知る手立てが何もなかった。気晴らししようにも、没頭しようにも、ノートもペンも鉛筆も何もなかった。おまけに朝から何も食べていなかった。だが、それは取るに足らないことだ。問題は、自分が世間から切り離され、ここに閉じ込められ、ひとりっきりで、孤独で、時間を知ることさえかなわず、自分が取り組んでいなければならないこと――仕事や将来のこと――に全然取り組めないことだ。きっと、しばらくすればシュテーガーが面会に来て、それで少しはましになるだろう。しかしそれでも――自分の境遇を考えてみろ、あの火事の日までの展望と今の自分のありさまを。クーパーウッドは座って、靴と着ているものを見ていた。くそっ! 立ち上がって行ったり来たりを繰り返した。自分の足音や体を動かす音が異様に大きく響く。独房の扉まで歩いて、太い鉄格子越しに外を見たが、見えるものは何もなかった――この部屋と同じような向かいの二つの独房の扉の一部以外は何もなかった。戻って一つしかない椅子に腰かけ、じっと考え事をした。しまいにはそれにも飽きて、汚い刑務所のベッドで体を伸ばしてみた。寝心地は必ずしも悪くなかった。しかし、しばらくすると起き上がり、座って、歩いて、また座った。歩くには何て狭い場所なんだ、と思った。ひどいものだ――生きながら葬られたようなものだ。今はここにいなければならない、来る日も来る日も、来る日も来る日も――いつまで、一体いつまでいればいいんだ? 知事が恩赦を与えるまでか、あるいは刑期が終わるまでか、あるいは財産が食いつぶされるまでか――それとも――
そうやって考えているうちに、時間は過ぎていった。シュテーガーが戻ってきたのは五時近くであり、しかもほんの少しの間しかいなかった。シュテーガーは次の木曜日、金曜日、月曜日のクーパーウッドの出廷手続きをとっていた。しかしシュテーガーが帰って、夜がふけ、小さくてみすぼらしい石油ランプを調整して、濃い茶を飲み、糠と白い小麦粉で作った粗末な貧しいパンを食べなければならなくなったときは、心底みじめな気分になった。食事は、作業が適切に行われたかを見届ける看守長に付き添われた配膳担当の模範囚に、扉の小さな差入口から押し込まれるのだ。そのあと、独房の内側の木の扉はさっさと閉められてしまい、それを乱暴に無言で閉めた模範囚に鍵をかけられた。九時を告げる大きな鐘がどこかで鳴らされたら、煙の出る石油ランプは速やかに消して、服を脱いで寝なくてはならないのは承知していた。こういう規則の違反者に罰があるのは間違いない――食事の量を減らされたり、拘束衣を着せられたり、鞭で打たれることもあるかもしれない――どんな罰があるのか、彼はほとんど知らなかった。やるせない、暗い気持ちになり、疲れてしまった。これまでなんと長く報われない闘いをつづけてきたことか。水道で重い石のコップとブリキの皿を洗った後、うんざりする囚人服と、靴と、ちくちくする下着のズボン下まで脱いで、ぐったりとベッドに体を伸ばした。部屋は少しも暖かくなく、毛布にくるまって暖を取ろうとした――しかしほとんど効果はなかった。魂まで冷え切っていたからだ。
「これじゃ駄目だ」クーパーウッドは思った。「こんなことではやっていけない。こんな生活に耐えられるかどうか自信がない」それでもクーパーウッドは壁に顔を向けて、数時間後にようやく眠りについた。




