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資本家  作者: ドライサーの小説の翻訳作品です
52/59

第52章

 

 クーパーウッドが刑務所にたどり着くと、ジャスパースがそこにいてうれしそうに出迎えたが、うれしいのは主に保安官としての自分の評判を損なうことが何も起きずに安堵したからだった。裁判所の問題は概して急を要するため、法廷に向けて出発するのは九時と定められた。エディー・ザンダースは再び、クーパーウッドをペイダーソン判事の前に無事送り届けて、その後刑務所に移送する役目を任された。事件に関するすべての記録が所長に引き渡すために彼の管理下に置かれた。

 

「ご存じでしょうが」ジャスパース保安官はシュテーガーに打ち明けた。「ステナーもここにいるんです。今や文無しですが、それでも個室を提供してやりました。ああいう人を独房に入れたくはありませんのでね」ジャスパース保安官はステナーに同情的だった。

 

「ごもっともです。いい話をうかがいました」シュテーガーはにんまりして答えた。

 

「聞いた話からすると、クーパーウッドさんはここでステナーに会いたくないでしょうから別々になるようにしておきました。ジョージは一足先に別の副保安官と出て行ったばかりです」

 

「それはよかった。そうあるべきです」シュテーガーは答えた。クーパーウッドのために保安官が随分気を利かせてくれたのがうれしかった。ジョージが苦難を抱えて財産を失う事態に陥っていても、どうやらジョージと保安官はとても友好的にやっているようだった。

 

 大した距離ではないのでクーパーウッドたちは歩いた。道すがら深刻な話題は避け、むしろ単純なことばかり話した。

 

「事態はそれほど悪いことにはなりませんよ」エドワードは父親に言った。「知事はきっと一年以内にステナーを赦免するってシュテーガーが言ってます。もしそうなら、フランクも必ずそうなるはずです」

 

 ヘンリー・クーパーウッドは何度この話を聞いても、決して聞き飽きることはなかった。これは赤ん坊をあやして寝付かせる素朴な子守唄のようなものだった。この時期にしては驚くほど残っている雪、晴れて明るく始まったこの日の清々しい天気、法廷は満員ではないかもしれないという期待、すべてが父親と二人の息子の注意を引いた。ヘンリー・クーパーウッドは、ただ気分をやわらげるだけのために、パンのかけらを巡って争うスズメたちに触れて、冬なのによくやってると感心した。クーパーウッドはシュテーガーとザンダースと前を歩きながら、自分の仕事に関連した一連の裁判が迫っていることとその対策について話した。

 

 裁判所に着くと、数か月前に陪審の評決を待ったのと同じあの小さな囲いが、クーパーウッドを受け入れるために待ち構えていた。

 

 ヘンリー・クーパーウッドと他の息子たちは、法廷側で席をさがした。エディ・ザンダースは自分が担当する相手と残った。そこにはステナーとウィルカーソンという副保安官もいた。しかしステナーとクーパーウッドは互いに相手を見ないふりをした。フランクにはかつての仲間に話しかけることに抵抗はなかったが、ステナーが気おくれして面目なさそうにしているのが見て取れた。だから目もくれず何の言葉も交わさずにこの状況をやり過ごした。約四十五分の退屈な待ち時間が過ぎたあとで、法廷に通じるドアが開き、廷吏が入ってきた。

 

「判決を受ける囚人は全員立て」廷吏は叫んだ。

 

 クーパーウッドとステナーを含めて、全部で六人いた。そのうちの二人は深夜に現行犯で逮捕された共謀の住居侵入犯だった。

 

 もう一人の囚人は二十六歳の青年で、ただの平凡な馬泥棒だった。食料雑貨商の馬を盗んで売り飛ばしたとして陪審に有罪の評決を下されていた。最後の男は黒人で、背が高く、足を引きずって歩き、無学で、はっきりとした考えを持たなかった。男は材木置き場で見つけた、明らかに捨ててあった鉛管一本を持ち去り、売るか酒とでも交換する了見だった。本当なら彼の事件はこの法廷に持ち込まれるものではなかった。財産の管理を任されていた小柄なアメリカ人の番人に捕まってしまい、自分がどう扱われるかが全く理解できないまま、最初に罪を認めるのを拒んだので、必然的に裁判を受けるためにこの法廷に送致されることになった。その後気が変わって罪を認めたので、判決か不起訴を宣告してもらうために、今度はペイダーソン判事の前に来なければならなかった。男が最初に連れてこられた下級裁判所は、審理のために男を上級裁判所に送致したことで管轄権を失っていた。クーパーウッドの案内役と助言者を自認していたエディ・ザンダースは、待っている間にこの情報のほぼすべてを教えていた。

 

 法廷は満員だった。こういう連中と一緒にこうやって脇の通路に並ばなくてはならないのはクーパーウッドにとってとても屈辱的だった。その後ろに身なりは立派だが、病人のような、しょんぼりしたステナーが続いた。

 

 チャールズ・アッカーマンという黒人が名簿の最初だった。

 

「どういうわけでこの男が私の前に来るんだ?」アッカーマンが盗んだとされる資産の価値に目がとまると、ペイダーソン判事は機嫌を損ねて尋ねた。

 

「裁判長」すぐに地方検事補が説明した。「この男は下級裁判所に出廷しましたが、酔っていたか何かのせいで、罪を認めませんでした。原告が告訴を取り下げようとしなかったので、下級裁判所は審理のためにこの法廷に送致せざるを得ませんでした。その後、男は考えを変えて、地方検事に罪を認めました。閣下の前に連れて来るまでもないのですが、我々にはこうする以外の選択肢がありません。日程を整理するためにも、こうしてここに連れて来なければならなかった次第です」

 

 ペイダーソン判事は訝しげに黒人を見つめた。黒人は明らかにこの尋問にあまり動揺しておらず、普通の犯罪者ならその前で直立して怯えるはずの入口だか柵にくつろぐように寄りかかっていた。男はこれまでにもいろいろな罪で――泥酔や風紀紊乱などで――警察裁判所の治安判事の前に出たことがあった。しかし男の態度は全体的に、だらしなく、気だるげで、笑いを誘う無邪気なものだった。

 

「さて、アッカーマン」判事は厳しく尋ねた。「ここに起訴されたとおり、あなたはこの鉛管一本――四ドル八十セント相当を盗みましたか、盗んでいませんか?」

 

「はい、盗みました」アッカーマンは証言を始めた。「どうだったかっていいますとね、裁判長。ある土曜日の午後、材木置き場を通りかかったんです。俺はずっと仕事をしてなかったもんでね。すると柵越しに中に鉛管が転がってるのが見えたんで、そこで見つけた木のきれっぱしを使って、引き寄せて、とったんです。後でこの番人の男の人が」――男は証人席に向けて雄弁に手を振った。裁判長が何か質問をしたがる場合に備えて、原告はそこに立っていた――「俺の住処(すみか)までやって来て、そいつをとったと言って俺を訴えたんです」

 

「でもあなたはそれをとったんですよね?」

 

「そのとおりです、とりました」

 

「それをどうしましたか?」

 

「二十五セントと交換しました」

 

「あなたはそれを売ったんですね」判事は訂正した。

 

「そのとおりです、売りました」

 

「そういうことをすることが悪いことだと、あなたはわからないのですか? 柵ごしに手を伸ばして鉛管を自分の方へ引き寄せたとき、自分が盗みをしているとわかっていなかったのですか? どうなんです?」

 

「はい、悪いことだとわかってました」アッカーマンはきまり悪そうに答えた。「盗んでいるとは思わなかったけど、それが悪いことだとはわかってました。とってはいけないとわかってたと思います」

 

「もちろん、あなたはわかっていた。わかっていてとったんです。そこが問題なんです。あなたは自分が盗みをしているとわかっていた。その上で、とったんです。この黒人が鉛管を売った相手の男はもう逮捕されたんですか?」判事は地方検事に鋭く問いただした。「逮捕されるべきですね。そいつの方がこの黒人よりも罪が重い。盗品を買い取ったんですから」

 

「はい」補佐官は答えた。「その件はヤウガー判事が担当しております」

 

「ならばよろしい。そうでなくてはいかん」ペイダーソン判事は厳しく答えた。「盗品の買い取りは、私に言わせれば最も悪質な犯罪のひとつだからな」

 

 それから判事は再びアッカーマンに注意を向けた。「いいか、アッカーマン」こんなつまらない事件に煩わされなくてはならないこと苛立ちながら、判事は叫んだ。「あなたに言っておきたいことがある。私の言うことをしっかり聞いてもらいたい。背筋を伸ばせ、ほら! 入口に寄りかかるな! あなたは今、法の前にいるんですぞ」アッカーマンは裏庭の柵から体を乗り出して誰かと世間話でもしているかのように、両肘をついて、体をだらしなく広げてくつろいでいたが、これを聞くと、相変わらず馬鹿みたいに申し訳なさそうにニヤニヤしていたものの、すぐ姿勢を正した。「あなたはそれほど鈍くはないんだから、これから私が言うことだって理解できるはずだ。あなたが犯した罪、鉛管一本を盗んだこと、は犯罪なんだ。聞こえてますか? 刑事犯罪です――私が厳しい罰を下せる犯罪なんです。私がその気になればあなたを一年間刑務所へ送ることだってできるんです――私がそうしてもいいと法律が言っているんです――鉛管一本を盗んだ罪で一年の重労働です。さあ、少しでも分別があるんなら、これから私が話すことにしっかりと注意を払いたまえ。私は今すぐあなたを刑務所に送るつもりはない。少し待ってあげよう。あなたに懲役一年を宣告します――一年です。わかりますか?」アッカーマンは少し青ざめて神経質に唇をなめた。「そしてそれからその執行を保留します――あなたの頭の上に留めて置くんです。もしこの先あなたが何か他のものをとって捕まったら、あなたはこの罪と次の罪が同時に適用されて処罰される。わかりますか? 私の言ってることがわかりますか? 答えなさい。わかりますか?」

 

「はい! わかります、裁判長」黒人は答えた。「これで釈放してくれる――ってこってすね」

 

 傍聴人はくすくす笑い、判事は自分の苦笑いを見せまいと顔をしかめた。

 

「二度と何も盗みさえしなければ、釈放してやる」判事は怒鳴った。「また何かを盗んだ瞬間に、この法廷に逆戻りだからな。そのときは、一年に、あなたにふさわしい分だけ加えて、刑務所に行くんだ。わかりましたか? では、この法廷からまっすぐ出て行って、まともな生活を送るんだ。もう何も盗むんじゃないぞ。何かの仕事に就きなさい! 盗むんじゃないぞ、いいですね? 自分の物でないものには一切手を触れないこと! ここに戻って来ないこと! もし戻って来たら刑務所に送りますからね、絶対に」

 

「はい! もうしません、裁判長」アッカーマンは神経質に答えた。「自分のものじゃないもんは、もう何もとりません」

 

 しばらくしてアッカーマンは廷吏の手に先を促されて、足を引きずるようにして立ち去り、彼の素朴さとペイダーソンの態度の過剰な厳しさに向けられた微笑みと笑いが入り混じる中を抜けて、無事に法廷の外に連れ出された。しかし次の事件は、呼ばれるとすぐに傍聴人の関心を引きつけた。

 

 それはクーパーウッドがかなり好奇心を持って注視してきた二人組の住居侵入犯の事件で、今でも気に留めていた。これまで生きてきて、彼はいかなる種類の刑の宣告場面も見たことがなかった。警察や刑事裁判所とも一切無縁で、民事裁判にもめったに顔を出さなかった。クーパーウッドは黒人が退廷するのを見てほっとし、ペイダーソンには――意外と――良識も情けもあると評価した。

 

 もしかしたらアイリーンがここにいるかもしれない、とふと思った。彼女が来ることに反対したが、アイリーンなら来かねなかった。現に彼女は一番後ろの、入口付近の人混みに身を潜めて、厚手のベールをかぶって、この場にいた。愛する人の運命を一刻も早く確実に知りたい――彼が本当に苦しんでいる、と彼女が思い込んでいるそのときに、近くにいたい――という欲望を抑えられなかった。クーパーウッドが普通の犯罪者の列に加えられて連行され、彼女にすれば恥ずかしいこの公衆の面前で待たされるのを見てえらく憤慨したが、こんな場所でさえ彼の存在から来る威厳と格の差に、いっそう感服せずにいられなかった。見たところ、青ざめた様子さえなく、彼女が知るいつもの彼と同じ、揺るぎない落ち着いた魂の持ち主だった。もし今、彼があたしを見てくれさえすれば、こっちを向いてくれさえすれば、ベールをあげて微笑んであげられるのに! しかしクーパーウッドはそうしなかった。見ようともしなかった。こんなところでアイリーンに会いたくはなかったからだ。でもアイリーンは今度会ったときに、同じようにこのことを全部彼に話すつもりだった。

 

 二人組の侵入窃盗犯は判事にさっさと片づけられて、それぞれ一年の刑を宣告された。二人は不安げに、明らかに自分たちの罪や行く末をどう考えていいかもわからないまま、連れ出された。

 

 クーパーウッドの呼ばれる番がくると、判事は気を引き締めて姿勢を正した。これは違うタイプの男で、普通のやり方では扱えないからだ。判事は自分がこれから言うことを正確にわかっていた。モレンハウワーの代理人のひとりで、バトラーの親友でもある人物が、クーパーウッドとステナーは二人とも五年が妥当だなと示唆した時点で、何をすべきか正確にわかっていた。「フランク・アルガーノン・クーパーウッド」事務官が呼び上げた。

 

 クーパーウッドはきびきびと前に進み出た。自分がみじめで、どこかで自分の境遇を恥じていたが、それを顔にも態度にも出さなかった。ペイダーソンは他の囚人にしたのと同じように、クーパーウッドを見つめた。

 

「名前は?」廷吏が法廷速記官のために尋ねた。

 

「フランク・アルガーノン・クーパーウッドです」

 

「住所は?」

 

「ジラード・ストリートの一九三七番です」

 

「職業は?」

 

「銀行と証券の仲買です」

 

 シュテーガーは彼のすぐそばに立ち、威厳がある力強い態度で、時が来れば法廷と聴衆に向かって最終弁論を行う準備を整えていた。アイリーンは入口近くの人混みの中で、生まれて初めて神経質に指を噛み、額に大粒の汗を浮かべていた。クーパーウッドの父親は興奮で緊張し、二人の弟たちは素早く顔をそむけて、恐怖と悲しみを隠そうと必死だった。

 

「これまでに有罪判決を受けたことはありますか?」

 

「ありません」クーパーウッドに代わってシュテーガーが静かに答えた。

 

「フランク・アルガーノン・クーパーウッド」事務官が前に出ながら、鼻にかかった歌うような調子で呼びかけた。「今ここで判決を下してはならない理由がありますか? あれば申し出てください」

 

 クーパーウッドは、ないと言いかけたが、シュテーガーが手をあげた。

 

「裁判所がお望みとあらば申し上げますが、私の依頼人クーパーウッドさん、この法廷に立つ被告人は、本人の見解では有罪ではありませんし、ペンシルベニア州最高裁判所――この州の最終審たる裁判所――の五分の二にあたる見解も、やはり有罪ではありません」シュテーガーは大声ではっきりと、全員に聞こえるように叫んだ。

 

 この時、関心を持って見守っていた傍聴人の一人がエドワード・マリア・バトラーだった。彼は別の法廷で判事と話をしていて、そこからちょうど立ち寄ったところだった。へつらい屋の廷吏が、クーパーウッドが刑を宣告されようとしていることを知らせてくれたのだ。本当は、この刑の宣告を聞き逃さないように朝からここに来ていたが、別の用事を装ってその動機を隠していた。彼はアイリーンがここにいることは知らず、見かけることもなかった。

 

「本人が自分の公判で証言したように」シュテーガーは続けた。「そして証拠が明確に示しているように、クーパーウッドさんは、後にこの法廷で罪が裁かれた人物の代理人に過ぎません。そして代理人として彼は六万ドル相当の市債証書を、市民が地方検事を通じて、彼がそうすべきだったと訴えた時期にその方法で預けなかったことは、厳密に自分の権利と特権の範囲内であった、と今なお主張しておりますし、さらに州最高裁判所の五分の二も彼と同意見であります。私の依頼人は類まれな金融手腕の持ち主です。閣下宛に提出された彼のための数々の書簡をご覧になれば、彼がその特定の世界の最も有力で著名な人々の大多数から尊敬と同情を得ていることがおわかりいただけるでしょう。立派な社会的地位と、顕著な功績ある人物です。今日彼を閣下の前に連れてきたのは、まったく予期せぬ無情な運命の一撃――最も堅実で安定した金融資産を巻き込んだ火災とその後の恐慌にほかなりません。陪審の評決や、州最高裁判所の五分の三の判断がどうあれ、私は、私の依頼人は横領犯ではなく、窃盗も犯しておらず、決して有罪にされるべきではなかったし、犯してもいない罪で今ここで処罰されるべきではないと主張いたします。

 

 この場で、私が述べたことが事実であると申し上げても、閣下は私の真意を誤解しないものと信じております。私はこの法廷の、いや、いかなる法廷、あるいは司法手続きの健全性にも、いささかの疑念を投げかけるつもりはありません。しかし私は、一般の人々の思考では簡単に理解できない、もっともらしい状況を作り出し、私の高名な依頼人を司直の手に委ねた数々の出来事の不幸な連鎖を、強く非難し、遺憾に思います。これを今ここで最後に公に述べておくことは、公正を期すために必要と考えます。閣下には、寛大なご配慮をお願いいたします。もし良心に照らしてこの訴えを棄却できないとしても、私が示した事実が、科せられる処罰の量刑にしかるべき重みを与えてくださいますようお願い申し上げます」

 

 シュテーガーは退いた。ペイダーソン判事はうなずいた。高名な弁護士の言い分はすべて聞き届けた、それにふさわしい考慮をしよう――それ以上のことはしないが、と言わんばかりだった。それからクーパーウッドの方を向いた。判事としての威厳を総動員して支えにしながら始めた。

 

「フランク・アルガーノン・クーパーウッド、あなたは自ら選んだ陪審によって窃盗罪で有罪とされました。あなたの学識豊かな弁護人があなたのために提出した再審請求は、慎重に検討されて却下されました。裁判所の過半数が、法律と証拠の両面から、有罪評決が妥当であると完全に確信しております。あなたの犯罪は通常よりも重大なものでした。あなたの得た巨額の金銭が、市の財産であっただけにいっそう重大です。そして、あなたがそれに加えて市債と市の公金数十万ドルを不法に使用し、私的に流用した事実によって、さらに悪質なものとなりました。このような犯罪に対して法律で定められた最高刑は、異常に寛大です。とはいえ、あなたのこれまでの立派な地位、破綻に至った諸事情、多数の友人と金融関係者からの嘆願については、当裁判所として相応の考慮を払うつもりです。あなたの経歴のいかなる重要事実もないがしろにされることはありません」ペイダーソンは自分がどう進めるつもりかをちゃんとわかっていたが、さも迷っているかのように言葉を切った。上にいる者が自分に何を期待しているのか彼はわかっていた。

 

「あなたの事件が他に道徳的教訓を示さないとしても」ペイダーソンは少し間を置き、書類をいじりながら続けた。「少なくとも現時点で切実に必要とされる教訓、つまり、市の財政は、商取引を装った見え透いた偽装によって、罰を受けることなく侵害され、略奪されることはないし、法律には依然として自らの正当性を示し、市民を守る力がある、ということを教えるでしょう」

 

「判決を言い渡す」ペイダーソン判事は厳かに続けた。一方クーパーウッドは動じることなく見つめた。「あなたは郡の使用のために罰金五千ドルを州に支払うこと、起訴費用を支払うこと、イースタン州立刑務所において四年三か月間、隔離もしくは独房での労働を伴う拘禁刑に処すること、そして本判決が執行されるまで身柄は拘束されること」

 

 クーパーウッドの父親は、これを聞いてうつむき、涙を隠した。アイリーンは下唇を噛み、両手を握りしめ、怒りと失望と涙をこらえた。四年三か月! これでは彼とあたしの人生に恐ろしい溝ができてしまう。それでも、あたしは待てる。まさかと恐れていた八年や十年よりましだもの。もしかしたら、これが本当に終わって彼が刑務所に入れば、知事が恩赦を与えてくれるかもしれない。

 

 判事はもう、ステナーの事件に関係する書類を取る動作をしていた。クーパーウッドのための嘆願にちゃんと耳を傾けてくれなかったと言う隙を金融関係者たちに与えずに、慈悲の嘆願に耳を傾けたと見せる一方で、クーパーウッドにほぼ最高刑を与えた、と政治家たちが喜ぶのを確信した。クーパーウッドはこの策略をすぐに見抜いたが、そんなことでは動揺しなかった。むしろ弱々しい見下げ果てたやり方に思えた。廷吏が進み出て、急いで連れ出そうとした。

 

「その囚人はしばらくいてよろしい」判事が呼びかけた。

 

 ジョージ・W・ステナーの名前が事務官に呼ばれた。クーパーウッドはどうして自分が引きとめられたのかさっぱりわからなかったが、すぐにわかった。共犯者に関する裁判所の判断を聞かせるためだった。ステナーの経歴が確認された。係争中ずっと弁護を務めてきた、アイルランド系の、政治色の強い弁護士ロジャー・オマーラがすぐ近くに立っていたが、ステナーのこれまでの立派な経歴を考慮してほしいと判事に求めただけで、それ以上は何も言わなかった。

 

「ジョージ・W・ステナー」判事が言うと、クーパーウッドを含む傍聴人は、注意深く耳を傾けた。「あなたの事件の再審請求と判決停止の申し立ては却下されました。あとは裁判所があなたの犯罪の性質に応じた判決を下すだけです。私の見解を延々と述べて、あなたの立場をさらに苦しめたくはありませんが、あなたの犯罪を強く非難せずにこの場を済ませることはできません。公金の不正使用は、この時代を象徴する重大な犯罪になりました。迅速かつ断固として阻止されなければ、最終的に社会制度を破壊してしまうでしょう。共和国が腐敗の巣と化せば、その活力は失われます。最初の圧力で崩れ落ちるのです。

 

 私の見解では、あなたの犯罪や他の類似の犯罪が起きるのは、市民にも大きな責任があります。これまで公職の不正は、あまりにも無関心に扱われてきました。我々に必要なのは、より高く純粋な政治的道徳――公金の不正使用を厳しく非難する世論のあり方――なのです。あなたの犯罪を可能にしたのは、これが欠けていたからです。それ以外に、あなたの事件に情状酌量の余地は見当たりません」ペイダーソン判事は強調のために一呼吸おいた。演説は山場に差しかかっていて、それを印象づけたかったのだ。

 

「市民はあなたに自分たちのお金の管理を託しました」判事は厳かに続けた。「これは崇高で神聖な信託でした。あなたは、ケルビムがエデンの園を守ったようにして金庫の扉を守り、みだりに近づく者があれば誰であれ、非の打ちどころのない誠実さという炎の剣を向けるべきでした。偉大な共同体の代表としてのあなたの立場なら、それが当然でした。

 

 あなたの事件のすべての事実を考慮すると、裁判所は重い刑罰を科さざるを得ません。刑事訴訟法第七十四条は、この州の裁判所が、管内いずれの刑務所においても、十一月十五日から翌年二月十五日のあいだに刑期が満了するような判決を囚人に宣告してはならないと定めており、この規定により私は、あなたに科すつもりであった最長刑――すなわち五年――から三か月を減じなければなりません。したがって裁判所の判決は、郡の使用に対し、罰金五千ドルを州に支払うこと」――ペイダーソンはステナーがその金額を払えないことを十分承知していた――「イースタン州立刑務所において四年九か月、隔離または独房での労働を伴う拘禁刑に処し、この判決が執行されるまで身柄は拘束されることとします」ペイダーソンは書類を置いて、考え込むように顎をこすった。その間にクーパーウッドとステナー両名は急いで連れ出された。バトラーは判決が下ると真っ先に立ち去った――十分満足していた。アイリーンは自分に関することはすべて終わったと悟り、すばやく抜け出した。その少し後で、クーパーウッドの父親と弟たちも出て行った。彼らは外でフランクを待って、一緒に刑務所に向かう手はずだった。残された家族は、午前中の出来事の知らせを自宅で熱心に待っていた。ジョセフ・クーパーウッドがさっそく知らせに派遣された。

 

 この日はどんよりと曇り、今にも雪になりそうだった。事件の書類一式を渡されていたエディ・ザンダースは、郡刑務所に戻る必要はないと告げられた。だから五人――ザンダース、シュテーガー、クーパーウッド、父親、エドワード――は刑務所から数ブロックのところを走る路面鉄道に乗り込んだ。三十分もしないうちに、一行はイースタン刑務所の門に到着した。

 


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