第49章
クーパーウッドの刑の宣告を月曜日にする手続きは、シャノンを通してすぐに行われた。シャノンは合理的な延期について何も異論を挟まなかった。
次にシュテーガーは郡刑務所を訪れた。五時近かったのですでに暗かった。ジャスパース保安官が私設の書斎からのんびりと出てきた。そこでパイプの掃除をしていたのだ。
「どうしました、シュテーガーさん?」ジャスパースは形だけの愛想笑いを浮かべて言った。「調子はどうですか? 会えてよかった。座りませんか? またあのクーパーウッドの件で来たんでしょ。ちょうど地方検事から彼が敗訴したという連絡を受け取ったところです」
「その件ですよ、保安官」シュテーガーは機嫌を取るように答えた。「その件で保安官の意向をうかがってくるよう頼まれたのです。ペイダーソン判事は、刑の宣告の時間を月曜日午前十時と定めました。いずれにせよ、彼が月曜日の八時前か日曜日の夜までここに来なくても、保安官はあまりお困りになりませんよね? ご存知のとおり、完全に信頼できる人物です」できれば百ドルの支払いを避けるために、シュテーガーはクーパーウッドの到着時刻をささいな問題にしようと、ジャスパースの出方を丁寧に探っていた。しかしジャスパースはそう簡単にあしらえる相手ではなかった。太った顔がかなり渋い顔になった。どうしてシュテーガーは報酬もちらつかせずにこんな頼みごとができるんだ?
「ご存知でしょうが、シュテーガーさん、それは法律違反ですよ」ジャスパースは慎重に不満をにじませて話し始めた。「他のことと同じように便宜を図りたいところだが、三年前のあのアルバートソン事件以来こっちもここの運営をもっと慎重にやらなくちゃならなくてね、それに――」
「ええ、わかってます、保安官」シュテーガーも形ばかりの愛想笑いを浮かべて口を挟んだ。「おわかりでしょうが、とにかくこれは普通の事情とは違うんです。クーパーウッドさんはとても重要な人物で、やらねばならないことをたくさんかかえてましてね。裁判所の事務官に納得してもらうというか罰金を払うのに、七十五ドルか百ドルで済む問題なら事は簡単なんでしょうが――」シュテーガーは言いよどんで巧みに顔をそむけた。ジャスパースの顔がたちまちゆるみ始めた。普段なら違反するのがとても難しい法律でも、もうそれほど重要ではなくなった。これ以上言う必要はないとシュテーガーは判断した。
「とても扱いにくい問題なんですよ、これはね、シュテーガーさん」保安官は譲歩しつつも声にかすかな泣き言じみた響きをにじませて言った。「何かあったら、こっちは職を失うんですからね。どんな事情でもそんなことはやりたくないし、やるつもりもないが、ただ私はたまたまクーパーウッドさんとステナーさんを知ってるし、二人とも好きですからね。こんなことをする権利が二人にあるとは思わんが、クーパーウッドさんがあまり大っぴらに行動しないのなら、この件は例外にしても構わないと思います。このことは地方検事局の人間には知られたくないんですよ。副保安官をどこか近くに常駐させて監視させる分には構いませんな。私も、まあ、法律はちゃんと守らないといけないんでね。副保安官が彼を煩わせることはありません。ただの見張りみたいなもんです」ジャスパースはにべもなく、してやったりと――状況に乗じてほとんどなだめるように――シュテーガーを見すえた。シュテーガーはうなずいた。
「ごもっともです、保安官、その通りです。あなたのおっしゃる通りです」保安官がとても警戒して書斎に誘導する間に、シュテーガーは財布を取り出した。
「ここで私が自分用にそろえた法律書をあなたにお見せしたいですね、シュテーガーさん」ジャスパースは穏やかな口調で言い、シュテーガーが差し出す十ドル札の小さな束をそっと握っていた。「見ての通り、ここでは時々こういう本を使うんですよ。こういうものを手元に置くのはいいことだと思いましてね」ジャスパースは州の判例書や改正法令集や刑務所規則などが並ぶ棚を網羅するように片腕を振りかざし、その間にお金をポケットにしまった。シュテーガーは眺めるふりをした。
「良いお考えです、保安官。実に名案です。では、クーパーウッドさんは月曜の早朝、八時か八時半にここに来ればいいとお考えですね?」
「そうだな」保安官は答えた。妙に緊張していたが、話には乗り気で、相手を喜ばせたがっていた。「それよりも早く身柄を必要とする事態が生じるとは思わんが、もしそうなったらあなたに知らせるから、あなたが連れて来てください。でもそんなことはないと思いますよ、シュテーガーさん。何も問題はないと思います」この時二人は再びメインホールにいた。「またお会いできてよかった、シュテーガーさん――本当によかった」保安官は付け加えた。「いつかまた来てください」
シュテーガーは保安官に手を振って気持ちよく別れると、クーパーウッド邸に急いだ。
その晩、事務所から帰ってきたクーパーウッドがきちんとした灰色のスーツと仕立てのいいオーバーコートを着て、立派な邸宅の正面の階段をのぼる姿を見たら、これがここでの最後の夜になるかもしれないと彼が考えていたとは誰も思わなかっただろう。彼の態度や歩き方からは、気が弱くなっている様子はまったくうかがい知れなかった。早めに灯されたランプが煌々と輝く玄関に入ると、年寄りの黒人雑用係のウォッシュ・シムズが、暖炉にくべる石炭の入ったバケツを持って地下室から上がってくるところだった。
「今夜外はひどく寒いですね、クーパーウッドさま」ウォッシュは言った。彼にとって、華氏六十度以下はとても寒かった。彼が唯一悔やんでいるのは、フィラデルフィアが故郷のノースカロライナにないことだった。
「身にしみるね、ウォッシュ」クーパーウッドは生返事をした。ジラード・ストリートを西に家に向かう間、家のことや家の様子について――近所の人が時々窓からこっちを見ながら自分をどう考えているかも――少し考えていた。澄み切っていて寒かった。困難が始まってから、葬式のように陰鬱な雰囲気がここに居座るのをクーパーウッドが許さなかったので、応接間と居間には明かりが灯されていた。通りの西の果ての道路の冷たい白い雪をおおうように、薄紫とスミレ色がその日の終わりを鮮やかに彩っていた。明かりの灯った窓にクリーム色のレースのカーテンがかかった灰緑色の石造りの家は、ひときわ魅力的に見えた。ここにこれだけのものを築いて、概観を飾って細部まで飾りつけた誇りを一瞬思い返して、いつかまたこれを自分のために手に入れられるだろうかと考えた。「家内はどこにいる?」思い出したように、ウォッシュに尋ねた。
「居間にいらっしゃると思います、旦那様」
すべての残務整理の中からクーパーウッド夫人が、やりそうもない彼の雇用の継続を選択しない限り、ウォッシュはすぐに失業だな、と奇妙なことを考えながらクーパーウッドは階段をのぼった。居間に入ると、夫人は長方形のセンターテーブルのそばに座って、娘のリリアンのペチコートにホックと留穴を縫い付けていた。夫の足音に気づくと顔をあげて、近頃見せる妙に不安げな微笑み――苦痛、恐怖、疑念の表れ――を浮かべて尋ねた。「あら、何かあったの、フランク?」彼女の微笑みは、自在に取り外せる帽子かベルトかアクセサリーのようだった。
「特に何もないよ」とそっけなく答えた。「敗訴が判明したくらいだ。じきにシュテーガーがここに報告に来る。彼から連絡があったんだ。そのことについてだと思う」
はっきり負けたと言いたくなかった。様子から妻が十分に悩んでいるのがわかったし、今は唐突すぎる発表は避けたかった。
「まさかそんな!」リリアンは驚きと恐怖が入り混じった声で答えると、立ち上がった。
刑務所のことなどほとんど考えられたことのない世界、裁判所や拘置所などの悩ましいものが目立って入り込む余地のない物事が日々順調に進む世界、にずっと慣れ親しんでいたので、この数か月間は彼女をほとんど狂わんばかりに追い詰めていた。クーパーウッドはリリアンに目立たないでいるようにきっぱりと言っておいた――妻にはほとんど何も話さなかったので、リリアンは全体の流れがよくわかっていなかった。彼女が知識として持っていたものは、自分の両親とアンナから聞いたことと、新聞を綿密に、ほとんど人目を忍ぶようにして読んで知り得たものだった。
夫が郡刑務所に入ったときさえ、夫の父親が法廷と刑務所から戻って知らせるまで、そのことについて何も知らなかった。リリアンにとっては恐ろしい衝撃だった。これを予期して毎時間恐れていたとはいえ、突然この事実をこんなにもぞんざいに突きつけるのは、あんまりだった。
クーパーウッドが三十五歳でリリアンは四十歳でも、娘の服を手に持って立っている姿は今でも明らかに魅力的だった。リリアンはかつての繁栄が生んだもののひとつ、縁取りが濃い茶色の、高級シルクのクリーム色のガウンをまとっていた――これはリリアンを魅力的にする組み合わせだった。目が少しくぼんでふちが赤くなっていたが、それ以外に深刻な精神的苦悩の兆候はなかった。十年前に彼を魅了したかつての穏やかな魅力の痕跡はかなり残っていた。
「それってひどく悪いことじゃない?」両手を神経質に震わせながら、リリアンは弱々しく言った。「恐ろしいことじゃない? もうあなたにできることは本当にないんですか? 本当に刑務所に行かなければならないんですか?」クーパーウッドはリリアンが悲嘆に暮れて神経質に怖がるのが嫌いだった。もっと強くて自立したタイプの女性の方が好きだったが、それでも彼女は自分の妻であり、かつてはとても愛していたのだ。
「そうなりそうなんだ、リリアン」クーパーウッドは、久しぶりに本物の同情の響きをにじませて言った。このときは彼女が気の毒に思えたからだ。同時に、この流れでこれ以上踏み込む気にはなれなかった。基本的に無関心というリリアンに対する今の自分の態度を誤解させるかもしれないと恐れたからだ。しかしリリアンは、夫の声にある思いやりが、夫の敗北、つまりは自分の敗北でもあるもの、によってもたらされたのを理解できないほど鈍くなかった。リリアンは少し息が詰まったが――それでも心は動かされた。ほんのわずかな同情の示唆が、永遠に失われた昔の日々をよみがえらせた。あの日々を取り戻せたらいいのに!
「私のことできみに心配をかけたくないんだ」クーパーウッドはリリアンが何かを言う前に続けた。「私の戦いはまだ終わっていない。私はこれを切り抜けるつもりだ。物事のけじめをつけるために、どうやら刑務所に行かなくてはならないようだ。きみにお願いしたいんだが、残された家族、特に父と母の前では明るさを絶やさないでほしい。元気づけてあげないとね」クーパーウッドは一度リリアンの手を取ろうと思ったが、やめにした。リリアンは夫がためらったのにも、今の夫の態度と十年から十二年前の夫の態度との大きな差にも、内心気づいていた。今はもう、以前なら思ったであろうほど、傷つかなかった。リリアンは何を言っていいのかほとんどわからないまま、夫を見た。実際、話すことがあまりなかった。
「行かねばならないとしても、すぐに行かなくちゃいけないんですか?」リリアンは疲れた様子で思い切って尋ねた。
「まだわからない。今夜かもしれないし、金曜日かもしれない。月曜日まで平気かもしれない。シュテーガーからの連絡を待っているんだ。じきにここに来ると思う」
刑務所に行く! 刑務所に行く! 私のフランク・クーパーウッドが、私の夫が、二人の家庭の支え――二人の魂を破滅させるものが、刑務所に行く。しかも、未だに理由がよくわからない! 自分に何ができるのかを考えながら、リリアンはその場に立ち尽くした。
「何か持ってきましょうか?」まるで夢から覚めたように体を乗り出して尋ねた。「何かしてほしいことはありますか? もしかしたら、フィラデルフィアを離れた方がいいんじゃないですか、フランク? 行きたくなければ、刑務所に行く必要なんてないわよ」
生まれて初めて、死ぬほどの平穏が破られたショックで、リリアンは少し取り乱していた。
クーパーウッドは話をやめ、少しの間、遠慮のない取り調べでもしているような目で相手を見た。厳しい実業家の判断力が瞬時に戻った。
「それじゃ罪を認めることになるんだ、リリアン、私は罪を犯してはいないからね」クーパーウッドはほとんど冷淡に答えた。「私は逃亡だとか刑務所行きになるようなことは何もしていない。今はただ時間を節約するためだけにそこに行くんだ。こんな裁判をいつまでも続けてはいられないからね。どうせ出てくるんだ――それなりの時間はかかるが、恩赦か訴訟でね。だったら、今すぐ行った方がいいと思う。私はフィラデルフィアから逃げ出すつもりはない。五人の判事のうち二人が判決で私を支持してくれた。これは私を訴える決め手を州が持っていないかなり確かな証拠だよ」
リリアンは自分が間違っていたことを悟った。おかげで瞬時に判断がついた。「そんなつもりじゃなかったのよ、フランク」リリアンは申し訳なさそうに答えた。「私がそんなつもりじゃなかったってわかるわよね。もちろん、あなたが有罪でないことはわかってるわ。よりによって私がどうしてあなたを有罪だと思わなければならないの?」
リリアンは何らかの反論、さらなる議論――もしかしたら優しい言葉の一つ――を期待して口をつぐんだ。かつての不可解な愛情がほんの少しだけうかがえはしたが、クーパーウッドは静かに机に向かって他の事を考えていた。
この時、自分の状態の異常さが、再びリリアンを襲った。すべてがとても悲しくて絶望的だった。自分はこれから先どうすればいいのだろう? フランクはどうするつもりかしら? リリアンは半ば震えていたが、それでも決意した――一風変わった抵抗しない性格だったからだ――なんで夫の時間を邪魔するの? どうして煩わせるの? そんなことしたってどうにもならないのに。現にフランクはもう私のことなど気にかけていないのだ――これは事実だった。彼を動かせるものは何もなく、何も、この悲劇でさえでも、二人を再び結びつけることはできないのだ。別の女性――アイリーン――に関心が移ってしまい、妻の愚かな考えや説明、恐怖、悲しみ、苦悩は、彼にとって重要ではないのだ。夫の自由を求める妻の苦悶の声を、自分の有罪の可能性を取り沙汰すもの、自分の無実を疑うもの、自分への非難と受けとめたのかもしれない! リリアンがちょっと背を向けると、クーパーウッドは部屋を出て行こうとした。
「またすぐに戻って来る」わざわざ一声かけた。「子供たちはうちにいるのか?」
「はい、子供部屋にいます」リリアンは悲しそうに、完全に途方に暮れ、取り乱して答えた。
「ねえ、フランク!」と叫ぼうと口まで出かかったが、声にできないうちに、彼は階段を駆け下りて行ってしまった。リリアンはテーブルに向き直って、左手を口にあてた。目は奇妙にかすみ、陰鬱な霧がかかっていた。まさか人生がこんなことになるなんて――愛がこんなにも完全に、徹底的に、死ぬなんてあり得るのかしら? 十年前にあった――でも、なぜそこへ戻るの? 確かに、ありえることだわ。今そんなことを考えても仕方がないのに。これで人生で二度、私の生活は崩れ去ったようだ――一度目は最初の夫が死んだとき、そして今度は二番目の夫が自分を裏切って別の女性と恋に落ち、刑務所に送られようとしているとき。自分の何がこんなことを引き起こすのかしら? 自分に何か落ち度があるのかしら? これからどうすればいいかしら? 私はどこへ行けばいいの? 当然、夫がどれくらい長い期間刑務所に送られるのかリリアンは知らなかった。一年かもしれないし、新聞に書いてあったように五年かもしれない。なんということだ! 五年もかかったら子供たちは父親をほとんど忘れてしまうかもしれない。リリアンはもう片方の手も口にあてて、それから額にあてた。そこに鈍い痛みがあった。さらにその先を考えようとしたが、どういうわけか、今はそれ以上考えが進まなかった。突然、自分の意志に関係なく、そうするつもりはなかったのに、胸が波打ち始めて、喉が四、五回短く鋭い痛みを伴う痙攣を起こして収縮し、目が燃えるように熱くなった。リリアンは、激しく、苦しそうに、絶望的に、涙が出ていないと言われてもおかしくない泣き方で泣きながら、震えた。涙はとても熱くて少なかった。しばらくはとめられず、その場に立って震えるだけだった。そのあと鈍い痛みが取って代わり、元の状態に戻った。
「どうして泣くの?」急に矛先を自分に向けて詰問した。「どうしてこんな無駄な大泣きをするの? これが役に立つの?」
しかし、自分を思索的、哲学的に問い詰めたにもかかわらず、自分の魂の中の嵐の反響を、遠くで轟く響きのようなものを、リリアンはずっと感じていた。「どうして泣くの? どうして泣いちゃいけないの?」と言ってもよかったかもしれないが――言うつもりはなかった。つい最近自分を襲ったこの嵐は、今はただ自分の魂の地平線をぐるぐる回っているだけだが、再び打ち砕きに戻って来ることを、リリアンは知るはずがないのに、彼女が論理的に考えたところでわかるはずがないのに、知っていた。




