第44章
一方、評議室では大論争が始まっていた。陪審席で黙想するように推測が重ねられたすべての論点が今、公然と議論されていた。
こういう事件で陪審がどのように迷ってあれこれ考えるのか――いわゆる考えを固める過程がどれほど奇妙で不確かなものなのか――を見るのは驚くほど興味深い。いわゆる真実は、贔屓目に見ても曖昧なものであり、事実は、誠実な場合もそうでない場合でも、こういう奇妙な反転や解釈できてしまう。陪審はとても複雑な問題を前にして検討に検討を重ねた。
陪審は、奇妙なやり方と奇妙な理由で、明確な結論、いや、評決にたどり着く。陪審はたびたび、個々の陪審員がろくに結論を出していないのに評決に達してしまうことがある。すべての弁護士が知っているように、これには時間が一役買っている。陪審は、集団としても個人としても、事件の判断に時間をかけるのを嫌がる。よほど魅力的でない限り、座って問題を審議することを楽しむことはない。三段論法の展開や謎が、疲労と退屈を生むからだ。評議室そのものが、鈍い苦悶の場になりかねず、なってしまうことがよくあるのだ。
一方で陪審は、満足の度合いがどれほどであれ、不一致で終わらすことは考えない。人間の心には本質的に建設的なところがあるので、問題を未解決のままにしておくことが明らかにみじめだからだ。このことは、他の未完成のままの重要な仕事と同じように、平均的な人にとりついて悩ませる。評議室にいる男たちは、科学者や哲学者が好んで考えたがる科学的に証明された結晶の原子と同じように、最終的には秩序正しい芸術的なひとつの全体形に自分たちを並べて、しっかりまとまった知的な面を前面に出し、何にせよ自分たちが適切に正しく目指したものに――しっかりまとまった分別のある陪審に――なりたがる。人は、これと同じ本能が自然界の他のあらゆる局面でも見事に示されるのを見ることがある――サルガッソー海に流れ出た流木の中で。静かな水面で気泡がつくる幾何学的な互いの位置関係の中で。数多くの昆虫や原子形態が作り出す、この世界の物質や質感の驚くべき人知を超えた構造の中で。生命の実体――目がとらえて実在と呼ぶ形状の幻影――は、秩序を愛し、それ自体が秩序である何かの巨大な精巧さに貫かれているように思える。いわゆる我々の存在を形づくる原子は、いわゆる我々の理性――気分の夢のようなもの――に左右されることなく、どこへ行き何をすべきかを知っている。それらは、我々のものではない秩序や知恵や意志を表していて、我々を差し置いて、秩序を作り上げる。陪審の潜在意識も同じである。同時に、ひとつの人格が別の人格に及ぼす奇妙な催眠効果や、さまざまなタイプの人格が互いに及ぼすさまざまな影響を、ひとつの解答――純粋に化学的意味でこの言葉を使うなら溶液――にたどり着くまで、忘れてはならない。評議室では、一人か二人か三人の考えや決意が十分に明確であれば、それが部屋全体に浸透して、多数派の理性や反対意見を征服しがちである。自分の中にある明確な考えのために〝立ち上がる〟人間は、従順な集団で勝利の指導者になるか、燃え盛る知的な集中砲火に無惨に打ちのめされる標的になるかのいずれかである。人は理由のない退屈な反対を軽蔑する。中でも評議室では――もし求められたら――人は自分が抱く信念に理由を述べることが期待される。「同意できない」では済まず、陪審員同士が喧嘩になったことが知られている。何年も続く激しい敵意が、この閉ざされた空間で生み出されてきた。頑なに反対する陪審員は、理由のない反対や結論のために、地元の社会でも商業的に追い詰められるのである。
クーパーウッドは間違いなく何らかの処罰に値すると結論が出た後、評決は起訴状にある四つの罪すべてを有罪にすべきかどうかで争われた。陪審員たちは個々の罪状の違いがよくわからなかったので、四つ全部を有罪にして情状酌量の勧告を付け加えることにした。しかしその後、この最後の一文は削除された。被告は有罪か無罪のいずれかだ。裁判官は陪審員と同じくらい――おそらくはそれ以上に――酌量すべき事情をすべて理解できる。その手を縛る理由があるだろうか? いずれにせよ、普通こういう勧告に注意は払われず、ただ陪審員を優柔不断に見せるだけだった。
そしてようやく、深夜十二時十分に陪審は評決の準備ができた。この事件に関心があって、自宅がそれほど遠くなかったことから、寝ずにずっと待つことにしていたペイダーソン判事が呼び戻された。シュテーガーとクーパーウッドが呼び出された。法廷には明かりが煌々と灯り、廷吏と事務官と速記がいた。陪審が入廷した。クーパーウッドは右にシュテーガーを従え、いつも被告人が立って評決と裁判官の言葉を聞く、柵で囲まれた場所に続く入口に立った。ひどく緊張している父親が付き添っていた。
クーパーウッドは生まれて初めて、夢遊病者の気分を味わった。これが二か月前――あれほど裕福で、進歩的な、自信に満ちていた――本物のフランク・クーパーウッドだろうか? 今はまだ十二月五日なのか、それとももう六日になっただろうか(真夜中は過ぎていた)? どうして陪審の評議はこんなに長引いたのだろう? このことは何を意味するのだろう? 陪審は今、起立した状態でここにいて、厳かに前方を見つめている。そして今度はここにペイダーソン判事が現れ、壇の踏み段をのぼっていく。縮れ髪が奇妙に魅力的に逆立っていた。馴染みの廷吏が秩序を求めて槌を打っていた。判事は――礼を失するだろうが――クーパーウッドには目もくれずに陪審を見て、陪審は判事を見返した。「陪審のみなさん、評決は出ましたか?」という事務官の言葉に、陪審長ははっきりと応じた。「出ました」
「被告人は有罪ですか無罪ですか?」
「被告人は起訴状の罪状どおり有罪です」
どういうわけでこの評決に至ったのだろう? 自分のものではない六万ドルの小切手を私が受け取ったからだろうか? 確かにあれは私のものだ。ああ、私とジョージ・W・ステナーの間を行き来したお金の総額からしたら、六万ドルが何だというんだ? ないも同然だ! そんなつまらないものが、それが、この粗末な取るに足らない小切手が、ここで立ち上がって、阻む山となり、石の壁となり、牢獄の壁となって私のさらなる前進を妨げている。驚くべきことだ。クーパーウッドはぐるっと法廷を見回した。何てだたっ広く、殺風景で、寒々しいのだろう! それでも、自分がフランク・A・クーパーウッドであることに変わりはない。何でこんな奇妙な考えに心を乱させねばならないんだ? 自由と特権と再起のための私の戦いは、まだ終わってはいない。何てことだ! 戦いは始まったばかりだ。五日もすれば保釈でまた外に出られるのだ。シュテーガーが控訴するだろう。保釈され、追加の戦いをする二か月が手に入る。私はまだ負けていない。自由を勝ち取るのだ。この陪審は完全に間違えている。上級審ならそう言ってくれるだろう。この評決を覆してくれるだろう。クーパーウッドにはそれがわかった。シュテーガーの方を向くと、シュテーガーは陪審員の誰かが無理やり説得されて、本人の意思に反する投票をさせられたことに期待して、陪審への聞き取りを事務官にさせていた。
「あれはあなたの評決ですか?」事務官が陪審員番号一番のフィリップ・モールトリーに尋ねるのをシュテーガーは聞いた。
「そうです」相手は厳かに答えた。
「あれはあなたの評決ですか?」事務官はサイモン・グラスバーグを指さしていた。
「そうです」
「あれはあなたの評決ですか?」事務官はフレッチャー・ノートンを指さした。
「はい」
こうして陪審員全員の聞き取りが終了した。ひょっとしたら、ひとりくらい考えを変えるかもしれないとシュテーガーはかすかに期待を抱いてみたが、全員が力強くはっきりと答えた。判事は陪審員たちに感謝の言葉を述べ、今夜の長時間役務に鑑みて任期の終了を告げた。今残された唯一のことは、シュテーガーがペイダーソン判事を説得して、州最高裁が再審請求の審理を終えるまで、判決の言い渡しを延期させることだった。
シュテーガーが正式にこの要請を行う間、判事はとても興味深そうにクーパーウッドを見た。この事件が重要であることや、この事件にある合理的な疑いを証明するとした申請を、最高裁はあっさり認めるかもしれないと自分でも感じていたことから、判事は同意した。こうしてクーパーウッドは、この遅い時刻に副保安官と郡刑務所に戻り、少なくとも五日――おそらくはもっと長く――そこにとどまるしかなかった。
地元ではモヤメンシング刑務所として知られる問題の刑務所は、十番街とリード・ストリートの角にあり、建築的・美術的観点から見ても実際、見苦しくはなかった。そこは、中央部――刑務所と保安官居住区の三階建てで、胸壁のコーニスと、高さが中央部の三分の一ほどの円形の胸壁塔があるもの――と、二つの翼棟部――それぞれが二階建てで、両端に胸壁の小塔があり、かなり城郭風の外観で、アメリカ人の目にはいかにも刑務所らしく見えるもの――とで構成されていた。刑務所の正面は、中央部が高さ三十五フィートを超えないように、翼棟部は二十五フィートを超えないように、通りからは少なくとも百フィート後退して建てられ、両端は翼棟から街区の端まで高さ二十フィートの石の壁が続いていた。この建物には刑務所のような厳つさはなかった。というのも、中央部は上から二つの階にかなり大きな、鉄格子のない窓が設置されて、カーテンがかかっていたので、正面全体をかなり快適な住居風に見せていたからだ。通りから見て右側の翼棟は郡刑務所として知られる区画で、何かの司法命令を受けた短期受刑者の管理にあてられ、左側の翼棟はもっぱら未決囚の管理と監督にあてられた。建物全体が滑らかな淡色の石造りだったので、こういう雪の夜は、内部で使われる数少ない灯りが暗闇でかすかに光ると、不気味で、幻想的、ほとんど超自然的な様相を呈した。
クーパーウッドがやむなくこの施設に向かったのは、風が激しく吹きすさぶ夜だった。風がその前の雪を吹き飛ばして奇妙な興味深い渦をつくっていた。四季裁判所で警備を務める保安官代理のエディ・ザンダースがクーパーウッド親子とシュテーガーに同行した。ザンダースは小柄で、色黒、短くて太い髭をはやし、抜けめないが知性は高くなかった。自分の評価ではとても重要な地位である保安官代理としての威厳を保つことを第一に考え、次に、できれば真面目にこつこつ稼きたいと考えた。彼は、法廷と刑務所の間を往復するときに囚人に同行して囚人が逃亡しないように見張ることで成り立つ、小さな世界の細かいこと以外をほとんど知らなかった。特定のタイプの囚人――金持ちやそこそこ裕福な囚人――にはつれない態度をとらなかった。その方が得なのを随分前に学んでいたからだ。今夜も彼は二言三言愛想よく言葉をかけた――かなり荒れた天候だとか、刑務所はそれほど遠くないから歩いていけるとか、ジャスパース保安官はおそらくその辺にいるとか起こせばいい、などと。クーパーウッドはろくに聞きもせず、母親と妻とアイリーンのことを考えていた。
刑務所にたどり着くと、中央部に連れていかれた。保安官のアドレイ・ジャスパースの事務所がそっちにあったからだ。ジャスパースは最近選出されたばかりだった。職務の適切な遂行に関しては、外見上はすべて従っているように見せかけてはいても、内心では実は従っていなかった。彼が自分の安月給を増やす方法として、代償を支払えるお金のある囚人に個室を貸して、特別扱いの特典を与えていることは、政治家の間で広く知られていた。前任の保安官たちもやっていた。実際、ジャスパースが就任したとき、すでに数名の囚人がこの特権を享受していたし、その者たちの邪魔をする考えはなかった。彼がいつも言っていた〝ふさわしい相手〟に貸す部屋は、刑務所の中央部にあり、そこは彼自身の私的な居住区画だった。鉄格子がなく、独房らしさが全然なかった。収容者全員の動きから〝目を離さない〟よう指示された看守が私室の入口に常に立っていたから、脱獄の危険は特になかった。便宜がはかられた囚人は多くの点でかなり自由な人間である。望めば個室で食事をとることができた。読書、トランプ、面会者を自室に招き入れることができ、好きな楽器があれば禁止されなかった。守らねばならない規則が一つだけあった。もしその囚人が公人で、報道関係者が訪ねてきたら、その者が他の囚人のように独房に収容されていないことを相手に知られないために、下の階の専用の面会室まで連れて行かれなければならなかった。
こういう事実のほぼすべてが事前にシュテーガーからクーパーウッドに伝えられていた。しかしそれでも、刑務所の敷居をまたぐと、奇妙な違和感と敗北感が襲ってきた。クーパーウッド一行は入口の左側にある小さな事務所に案内された。そこは机が一つと椅子が一つあるだけで、弱火のガス灯に薄暗く照らされていた。丸々太った血色のいいジャスパース保安官が出迎え、かなり親しげに挨拶した。ザンダースは役目を解かれ、さっさと自分の仕事に戻った。
「ひどい夜ですね?」ジャスパースはそう言ってガスを強め、囚人の登録手続きの準備にかかった。シュテーガーが近寄って、部屋の隅で机越しに短い内緒話を交わすと、すぐに保安官の顔が明るくなった。
「ああ、もちろん、もちろんです! それで結構ですよ、シュテーガーさん! 確かに! ええ、もちろんでとも!」
クーパーウッドは自分のいるところから太った保安官を見て状況をすべて理解した。持ち前の批判的な態度と、冷静で知的な落ち着きを完全に取り戻していた。ここは刑務所であり、これが自分を担当することになる太った凡庸な保安官だ。よし、ならばこれを最大限に活用するまでだ。これから検査をされるのだろうか、とクーパーウッドは考えた――普通、囚人はされるものだ――しかしされないことがすぐにわかった。
「大丈夫ですよ、クーパーウッドさん」ジャスパースは立ち上がりながら言った。「それなりに快適な環境を用意できると思います。おわかりでしょうが、我々はここでホテルを経営しているわけじゃない」――一人悦に入った――「でも快適にはできると思いますよ。ジョン」ジャスパースは、目をこすりながら別の部屋から現れた眠そうな雑用係に声をかけた。「六号室の鍵はあるか?」
「はい」
「持ってくるんだ」
ジョンは姿を消して戻ってきた。その間にシュテーガーはクーパーウッドに、衣類など欲しいものは何でも持ち込めると説明した。シュテーガーは翌朝、自ら立ち寄って、クーパーウッドの相談に乗るつもりであり、クーパーウッドが面会を望む家族は誰もがそのつもりだった。クーパーウッドはすぐに父親に、これについてはできるだけ控えてほしいと説明した。ジョセフかエドワードが翌朝、下着類を詰めた手荷物を持ってくれば十分で、他の者は、出所かずっと勾留かが決まるまで待たせておけばいいからだ。アイリーンに手紙を書いて、何もするなと注意しようと考えていると、保安官が手招きしたのでおとなしく従った。父親とシュテーガーに付き添われて自分の新しい部屋に上がった。
そこは簡素な白い壁の部屋で、広さは十五フィート×二十フィート、天井はやや高く、備品は高い背もたれの黄色い木製のベッド、黄色い書き物机、模造桜材の小さなテーブル、彫刻入りのヒッコリー材の背もたれがついている桜色に染めたごく普通の藤椅子が三脚だった。ベッドと同じ黄色に塗られた木の洗面台には、洗面器、水差し、蓋のない石鹸入れ、そして他のものと合っていないおそらく十セントくらいの、小さな安物のピンクの花柄の歯ブラシと髭剃りブラシ用のマグカップがあった。ジャスパース保安官にとってこの部屋には、こういう場合に得られる賃料――一週間で二十五ドルから三十五ドル――の価値があった。クーパーウッドは三十五ドルを払うことになった。
クーパーウッドは足早に歩いて窓辺に行った。窓の前の芝生はもう雪に埋もれていた。これで大丈夫だと思うと言った。父親もシュテーガーも彼が望めば何時間でも相談に応じるつもりだったが、話すことは何もなかった。クーパーウッドは話をしたくなかった。
「朝のうちにエドに新しい下着をいくつかとスーツを二着持って来させてください。それで十分です。ジョージなら僕の荷物をそろえられます」身の回りの世話から他のことまでこなしてしまう家の使用人の名前をあげた。「リリアンには心配しないよう伝えてください。僕なら大丈夫です。五日で出られるのに、わざわざこんなところに来ることはない。出られなかったら、そのときに来ればいい。僕に代わって子供たちにキスしてあげてください」そして気持ちよく微笑んだ。
この予備審問の結果についての予想が外れてから、シュテーガーは州最高裁判所が何をして何をしないかを自信をもって口にするのをほとんどはばかっていたが、何かを言わなければならなかった。
「控訴の結果については心配する必要はないと思います、フランク。合理的な疑いは証明できるでしょう。これで二か月、ひょっとしたらそれ以上引き延ばせるかもしれません。保釈金は多くても三万ドルを超えることはないでしょう。何が起ころうと、五、六日もすれば再び外に出られますよ」
クーパーウッドはそう願いたいものだと言って今夜はこの辺にしておこうと提案した。無駄なやりとりを少ししてから、父親とシュテーガーはようやく別れの挨拶を告げ、ひとりで考え事ができるようにクーパーウッドを残して帰った。しかしクーパーウッドは疲れていたので、服を脱ぎ捨て、平凡なベッドにもぐり込み、すぐに眠ってしまった。




