第42章
裁判は続いた。これでクーパーウッドの有罪を確定できる、とシャノンが納得するだけの立証作業を州側が完成させて、シャノンが終了を宣言するまで、検察側の証人は次から次へと現れた。シュテーガーがすかさず立ち上がり、これもあれもそれも証明するだけの証拠がないのだから、この起訴を取り下げるよう長い議論を始めたが、ペイダーソン判事は全く取り合おうとしなかった。彼はこの問題が地元の政界でどれほど重要かを知っていた。
「今、その全部を持ち出さない方がいいと思いますよ、シュテーガーさん」言わせるだけ言わせておいてからペイダーソンは疲れた様子で言った。「市の慣習なら私もよく知っていますが、ここでなされた起訴は市の慣習とは関係ありません。あなたの弁論は陪審にするものであって私にするものではありません。私は今それに立ち入ることができないんです。被告側の立証が終了した時点で新たに申し立てればいいでしょう。申し立ては却下します」
注意して聞いていたシャノン地方検事は席に着いた。議論で丸め込もうとしても裁判長の心をやわらげる余地がないと見て、シュテーガーがクーパーウッドのところに戻ると、クーパーウッドはその結果を笑顔で迎えた。
「陪審に賭けるしかありません」シュテーガーは言った。
「思ってたとおりだ」クーパーウッドは答えた。
それからシュテーガーは陪審に近づき、自分の視点から事件の概要を簡単に説明して、自分の視点から証拠が証明するであろうものを陪審に向かって説明しつづけた。
「実際のところはですね、みなさん、検察側が提出できる証拠と、我々弁護側が提出できる証拠に、本質的な違いはありません。我々だって、検察側が今主張しているように、クーパーウッドさんがステナーさんから六万ドルの小切手を受け取ったことや、その金額の、彼が代理人として支払いを受ける権利があった市債の証書を減債基金に納めなかったことに、異議を唱えるつもりはありません。しかし、彼が市の代理人として四年間市の財務局を通じて市と取引を行っていたときは、市財務官との合意に基づいて、いかなる取引であろうともすべての金銭の支払い及び減債基金への証書の預託を、その取引があった翌月の一日まで保留する権利を有していたことについても、合理的疑いの余地さえ残さないように主張し証明するつもりです。実際に、我々はこれを証明するために、過去にまさにこのやり方で市の財務局と取り引きした経験がある大勢の市場関係者や銀行家を連れてくることができます。そして連れてくるつもりでおります。検察側はみなさんに、クーパーウッドさんがこの小切手を受け取った時点で自分が破産することを知っていたとか、この証書を購入したのは彼が主張するような減債基金に納めるつもりではなかったとか、さらには自分が破産することや、後で証書を預けられないことを知りながら、計画的にステナーさんの秘書のアルバート・スターズさんのところに行って証書を購入した話をしたとか、もしくは実際には話さなくてもそうやってほのめかされた嘘をもとに、小切手を確保して、立ち去った、と信じさせようとしています。
さて、みなさん、事実がどうだったかは、すぐに証言が明らかにしてくれますから、現時点でこれらの点を長々と議論するつもりはありません。ここにはたくさんの証人がいますから、証人の話を聞くのが待ち遠しくてなりません。みなさんに覚えておいてほしいのは、クーパーウッドさんが市財務官を訪ねた時点で自分が破産しそうなのを知っていたとか、問題の証書を購入していなかったとか、月初にいつも市とやっていた収支決算のときまで、好きなだけ減債基金に納めずに保留しておく権利はなかった、などを証明するものは、おそらくジョージ・W・ステナーさんによってなされるかもしれない証言の他には、これっぽっちも証拠がないということです。前の市財務官ステナーさんはおそらくそう証言するかもしれませんが、クーパーウッドさんは自分の立場から、また違った証言するでしょう。そのとき、みなさんは二人のうちのどちらを信じるかを判断することになります――前の市財務官のジョージ・W・ステナーさん、クーパーウッドさんの元仕事仲間で、長年にわたって利益を得てきましたが、ただ一度の金融不安、火事、恐慌に見舞われただけで、その労働から多大な利益を受けていたかつての仲間を裏切った人物でしょうか、それとも、フランク・A・クーパーウッドさん、有名な銀行家にして資本家であり、この嵐を切り抜けるために孤軍奮闘し、市と交わしたすべての契約を履行し、火事と恐慌によって押し付けられたこの不当な財政的困難を是正しようとこのときまで多忙を極め、つい昨日も、市に対して、もし自分が事業を中断せずに管理を許されるなら、喜んで自分の負債を(実際には全額が彼の負債ではないのですが)彼とステナーさんと市との間で議論されている五十万ドルも含めて、喜んでできるだけ速やかに返済し、自分の動機に対するこの不当な疑いには何の根拠もないことを、口先ではなく、仕事によって証明する旨を申し出た人物でしょうか。おそらくみなさんが推測するとおり、市は彼の申し出を受け入れませんでした。後ほどみなさんにその理由をお話しします。今は証言を進めていきます。弁護側としては、今日ここで証言されるすべてのことに細心の注意を払うよう、みなさんにお願いします。W・C・デービソンさんが証言台に立ったら、よく注意して話を聞いてください。クーパーウッドさんが証言に立ったら、同じように注意して話を聞いてください。他の証言もよく聞いてください。そうすればみなさんがご自身で判断できるはずです。この起訴に正当な動機が見出せるか、確かめてください。私は見出せませんね。みなさん、ご清聴いただき、どうもありがとうございました」
それから恐慌のときに取引所でクーパーウッドの特別代理人として行動していたアーサー・リヴァースを証人に呼んで、マーケットを支えるために彼が大量の市債を購入したことを証言させ、次にクーパーウッドの弟、エドワードとジョセフが、その時に市債の売買――主に買い付け――に関してリヴァースから受けた指示について証言した。
次の証人はジラード・ナショナル銀行のW・C・デービソン頭取だった。体の大きな男で、丸々としているというより、がっしりして横幅のある体型だった。肩と胸に厚みがあり、大きな金髪の頭には、高潔で健全そうに見える広い額がある。太いずんぐりした鼻をしているが、そこには力強さがあり、唇は薄く、引き締まって、均整が取れていた。その鋭い青い目には時折、皮肉なユーモアのかすかな気配が浮かぶが、概ね親しみやすくて、油断のない、穏やかな表情であり、これっぽっちも感傷的なところがなく親切にさえ見えなかった。誰の目にも明らかなように、デービソンの仕事は、金融に関する厳しい事実を述べることだった。彼がフランク・アルガーノン・クーパーウッドに精神的に支配されたり、動揺させられたりせずに、クーパーウッドに自然に惹かれていく様子も見て取れた。デービソンがとても静かに、しかしあえて言うなら大物然とした態度で席に着いたとき、自分がこの種の法律や金融について延々と語ったところで、普通の人間には理解できないし、本物の資本家にすれば沽券に関わる――つまり面倒だ、と感じているのは明らかだった。彼に宣誓させるためにその横で聖書を掲げている眠たそうなスパークヒーバーなどは、さながら木の塊に過ぎす、宣誓は彼の個人的な問題だった。時には真実を語るのが、都合がいいこともある。デービソンの証言はとても率直で単純明快だった。
彼はフランク・アルガーノン・クーパーウッド氏とは十年来の知り合いだった。その間ほぼずっと、彼と、あるいは彼を通じて取引をしていた。ステナーとのクーパーウッドの個人的な関係については何も知らなかったし、ステナーとは個人的な面識はなかった。問題になっている六万ドルの小切手に話が及ぶと――はい、以前にそれを見たことがあります。これは十月十日に、クーパーウッド商会の当座貸越を相殺するために、他の担保と一緒に銀行に持ち込まれたものだった。銀行の帳簿ではクーパーウッド商会の貸方に記載され、銀行は手形交換所を通じて現金を確保していた。その後クーパーウッド商会が銀行から資金を引き出して、当座貸越を発生させることはなかった。銀行側のクーパーウッドの口座が清算されたからだ。
それでも、クーパーウッドが多額の引き出しをしたとしても、そのことは検討されなかっただろう。デービソンはクーパーウッドが破産しそうだったことを知らなかった――こうもあっけなくするとは思わなかった。クーパーウッドは銀行の自分の口座で頻繁に当座借越をしていた。実際に、当座借越は彼の事業では定期的に行われていることだった。それは資産の積極的活用がつづいていることであり、優れた経営の極みだった。しかしクーパーウッドの当座借越は担保で保護されており、担保や小切手、あるいはその両方を束にして送るのが習慣だった。そういうものがいろいろな形で配分されて物事を立ち行かせていた。クーパーウッドさんの口座は銀行でも最大で最も活発でした、とデービソン氏は親切にもわざわざ口添えしてくれた。クーパーウッドが破産したとき、銀行にはクーパーウッドが担保として送った市債の証書が九万ドル以上あった。シャノンは反対尋問で、陪審員への影響を考えて、デービソン氏は何か下心があってクーパーウッドに特別好意的だったのではないかと探りを入れようとしたが果たせなかった。シュテーガーはその後を受けて、デービソン氏がクーパーウッドのために述べてくれた有利な点を、彼に繰り返し説明させることで、陪審員に完全に理解させようと全力を尽くした。シャノンは当然、異議を唱えたが無駄だった。シュテーガーは何とか自分の目的を果たした。
シュテーガーはここでクーパーウッドを証言台に立たせようと決心した。この流れで彼の名前が出ると法廷全体がざわめいた。
クーパーウッドはきびきびと素早く前に出た。とても冷静で、陽気で、人生に挑戦的でありながら、人生に礼儀正しく向き合っていた。この弁護士たちも、この陪審も、この藁とも水ともつかぬ裁判官も、運命のいたずらも、彼を根本的に動揺させたり、おとなしくさせたり、弱気にさせたりはしなかった。クーパーウッドは陪審員の精神的素養をすぐに見抜いた。彼は自分の弁護士がシャノンを動揺させ、混乱させるのを手伝いたかったが、理性が彼に、それをなすのは、事実またはもっともらしく見えるもので構成された、破壊できない構造の論理だけだ、と告げた。彼は自分のしたことは、経済活動として正しいと信じていた。自分にはこれをする権利があった。人生は戦争だ――特に金融に関わる人生は。戦略はその基本であり、義務であり、必然だった。そんなことも理解できない、ちっぽけな、つまらない考えの持ち主たちに、どうして煩わされねばならないのだろう? クーパーウッドは、シュテーガーと陪審員のために自分の経歴を説明して、自分にできるこの上なく健全で、この上なく感じのいい印象を与えた。そもそも私からステナーさんに近づいたのではありません――クーパーウッドは語った――私は呼ばれたんです。私は何もステナーさんに勧めてはいません。私はただステナーと彼の友人たちに、彼らが飛びつきたくなるような投資の可能性を示しただけで、それに彼らが飛びついたんです。(シャノンはこの時点で、クーパーウッドがどれほど巧妙に路面鉄道会社を組織していたかを見抜けなかった。その巧妙さはステナーと彼の友人たちに一言の抗議もさせないで〝振り落とす〟ことができるほどのものだった。そこでクーパーウッドは、これを自分がステナーと彼の友人たちに作ったチャンスとして語った。シャノンもシュテーガーも金融は専門ではなかった。部分的に――特にシャノンは――疑ってはいたが、二人とも一応信じるしかなかった。)市財務官の事務所で慣習がまかり通っていることについては自分の責任ではないと証言した。彼は一介の銀行家でありブローカーにすぎなかった。
陪審はクーパーウッドを見て、六万ドルの小切手の問題以外すべてを信じた。話がその件に及ぶと、クーパーウッドはすべてをもっともらしく説明した。この最後の数日間にステナーさんに会いに行ったとき、私は自分が本当に破産するとは思っていませんでした。私はステナーさんにお金を用立ててほしいと頼みました。それは事実です――それほど多くではありません、総額は――十五万ドルです。しかし、ステナーが証言しておくべきでしたが、私は動揺なんかしませんでした。ステナーさんは私の一つの資金源にすぎなかったからです。あの時は他にも頼む当てはたくさんあると確信していました。パニックに陥ったり、追加融資を控えるのは間違いだとステナーさんに指摘したことはありましたが、ステナーさんが言ったような強い言葉は使わなかったし、切羽詰まった訴えなどはしておりません。ステナーさんが最も簡単で手っ取り早い資金源だったことは事実ですが、唯一の資金源ではありませんでした。実際のところ、必要なら、主だった金融の仲間たちが私の信用枠を拡大してくれたでしょうし、時間はたっぷりあるだろうから、嵐が通り過ぎるまでは行き当たりばったりでつないで仕事をつづけていけるだろう、と考えていました。恐慌初日のマーケットを維持するために、市債の購入規模を拡大したことと、自分が六万ドルを負担している事実をステナーさんに伝えました。ステナーさんは何も反対しませんでした。ちょうどその時ステナーさんは精神的にかなり動揺していたので細心の注意を払えなかったのかもしれません。私も驚いたんですが、その後、予想もしなかった方向から予想もしなかった圧力がかかって、大手の金融機関はやりたくてそうしたのではないでしょうけど、残念なことに私に厳しい態度をとるようになったんです。翌日この圧力が一気に押し寄せて、店を閉めざるを得なくなりましたが、最後の瞬間まで本当に予想していませんでした。その時、六万ドルの小切手を取りに行ったのは、まったくの偶然です。もちろん、そのお金は必要でしたが、それは支払われて当然のものであり、うちの事務員はみんな多忙を極めていたので、ただ時間を節約するために、私が自分で頼んで、受け取ったに過ぎません。もしこれが拒まれたら、私が訴訟を起こすだろうとステナーさんは知っていました。市のために購入されたときに、市債の証書を預ける件については、私の完全な不注意によるものです。簿記係のスタプレイさんがこの件をすべて担当していたものですから。実を言いますと、証書が預けられていなかったことを私は知りませんでした。(これは真っ赤な嘘だった。彼はちゃんと知っていた。)その小切手がジラード・ナショナル銀行に渡されたのは偶然で、状況が違っていたら、どこかの別の銀行に引き渡されたかもしれなかったのだ。
こうしてクーパーウッドは、シュテーガーとシャノンの厳しい質問に、この上なく魅力的な率直さで答えていった。彼がそのすべてに対してとった真面目な態度――その真剣な、やるべきことに向ける注意力――を見れば、彼はいわゆる商人の鑑である、と断言できただろう。そして、本当のところを言えば、クーパーウッドは、自分がしてきて今説明していることは、すべて必要であり重要であったのと同時に、正当であったと信じていた。陪審には自分が見たとおりのままに、これを見てほしかった――自分の立場に立って自分に共感してほしかった。
クーパーウッドはようやく証言を終えた。彼の証言と彼の人柄が陪審に与えた印象は独特だった。陪審員番号一番のフィリップ・モールトリーは、クーパーウッドが嘘をついていると判断した。自分が破産しそうなのが前日にわからないなどということが、どうしてありえるのか彼には理解できなかった。クーパーウッドは知っていたにちがいない、と思った。いずれにせよ、クーパーウッドとステナーの間であった一連の取引全体は、何かの処罰に値するように思えた。この証言の間ずっと彼は陪審室に入ったら、どういう理屈で有罪に一票投じたものか、と考えていた。クーパーウッドが有罪だと他の人たちに納得させるために用いる論点をいくつか考えてさえいた。かと思えば陪審員二番、洋服屋のサイモン・グラスバーグはすべての経緯を理解したと考え、無罪に投票することに決めた。クーパーウッドが無実だとは思わなかったが、処罰には当たらないと思った。陪審員三番、建築家のフレッチャー・ノートンは、クーパーウッドは有罪だと思ったが、その一方では、あまりに才能があるから刑務所に送るのは惜しいと考えた。陪審員四番、アイルランド人の請負業者チャールズ・ヒレガンはやや信心深い考え方をする人で、クーパーウッドは有罪であり罰せられるべきだと考えた。陪審員五番、石炭商のフィリップ・ルカッシュは、クーパーウッドは有罪だと思った。陪審員六番、鉱山技師のベンジャミン・フレイザーは、おそらく有罪だと思ったが確信は持てなかった。陪審員七番、小柄で現実的で心の狭い三番街のブローカー、J・J・ブリッジスは、どうしようか決めかねていたが、クーパーウッドは狡猾で、有罪であり、処罰に値すると考え有罪に投票するつもりだった。陪審員八番、小さな蒸気船会社の総支配人ガイ・E・トリップは決心がつかなかった。陪審員九番、引退した接着剤製造業者のジョセフ・ティスディルは、クーパーウッドはおそらく起訴内容どおりに有罪だとは思ったが、ティスディルにすればそんなものは犯罪ではなかった。クーパーウッドには、あの状況下で行ったとおりのことを行う権利があった。ティスディルは無罪に投票するつもりだった。陪審員十番、若い花屋のリチャード・マーシュは感情に左右されてクーパーウッドを支持した。実際のところ、彼に確たる信念はなかった。陪審員十一番、懐は軽いが体重は重い食料雑貨商のリチャード・ウエバーは、クーパーウッドの有罪を支持した。彼は有罪だと思った。陪審員十二番、小麦粉の卸売商のワシントン・B・トーマスは、クーパーウッドは有罪だと思ったが、有罪を宣告した上で情状酌量を勧めたいと信じた。人は更生させるべきである、が彼のモットーだった。
一同は立ち上がった。自分の証言が少しでもいい影響を与えたかどうかを考えながら、クーパーウッドはその場を離れた。




