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資本家  作者: ドライサーの小説の翻訳作品です
27/59

第27章

 

 クーパーウッドは生まれて初めて、あの興味深い社会現象――親の怒りの感情――を目の当たりにした気がした。どうしてバトラーがあんなに激怒したのか完全にはわからなかったが、アイリーンに原因があることは感じた。クーパーウッド自身も父親である。息子のフランク・ジュニアはクーパーウッドにとってあまり注目すべき存在ではなかったが、華奢な小さいほっそりした体で、頭から明るいオーラを出している娘のリリアンは、いつも彼を魅了した。いつか魅力的な女性になると思い、無事に自立するまでたくさんのことをしてあげるつもりだった。よく娘に「ボタンのような目」「子猫のような足」、手は小さいから「五セントの価値」しかないねと話しかけた。子供も父親を慕い、書斎や居間では椅子、仕事部屋では机、食卓では席のそばに立ち、よく質問をした。

 

 自分自身の娘に対するこの態度は、バトラーがアイリーンにどういう感情を抱くかをクーパーウッドにはっきり理解させた。もしこれが自分の娘のリリアンだったらどう感じるだろうと考えたが、それでも娘がアイリーンと同じ年頃だったら、自分も娘もこの問題で大して騒がないだろうと思った。いずれにせよ、子供も子供の人生も、親の意思ではどうにもならない。子供が生まれつき素直で、進んで管理されたがらない限り、どんな親でも子供に言うことを聞かせるのは大変な事なのだ。

 

 運命がどれほど自分に困難を降り注いでいるかを知ると、クーパーウッドは改めて苦笑いするしかなかった。シカゴの火事、出だしのステナーの不在、ステナーと自分の運命に対するバトラーとモレンハウワーとシンプソンの無関心。そして今度はおそらくアイリーンと関係があるこの新たな展開。まだ確信は持てなかった。しかし、彼の鋭い直感は、これはきっとそういうことに違いないと告げた。

 

 もし突然、父親に証拠を突きつけられたら、アイリーンはどんな行動をとってどんなことを言うだろう、と彼は今、不安だった。せめてアイリーンに接触できればいいんだが! しかし、バトラーの預り金の返済要求や、今日明日にも押し寄せる他の催促に応じるなら、一刻の猶予もない。返済しなかったら、ただちに資産を譲渡しなければならないからだ。バトラーの怒りも、アイリーンも、自分の危機も、ひとまず脇に追いやられた。彼の思考はすべて、どうすれば財務面で自分を救えるかに集中した。

 

 急いでジョージ・ウォーターマン、妻の兄で今はかなり順調にやっているデビッド・ウィギン、過去に取引をしたことがある裕福な日用雑貨店主のジョセフ・ジマーマン、かなり裕福な一介の相場師のジャッジ・キッチン、地元の路面鉄道株などに関心を持つ州財務官のフレデリック・ヴァン・ノーストランドなどを訪ねた。当たってはみたものの、一人は到底彼のために何かをする状態にはなく、もう一人は恐れをなし、三人目は熱心に計算してとことん値切ろうとし、四人目はあまりにも慎重でたっぷり時間をほしがった。全員がクーパーウッドの状況の本当の価値を嗅ぎつけ、考える時間をほしがったが、クーパーウッドに考える時間はなかった。ジャッジ・キッチンは三万ドル貸すことに同意した――全然足らない。ジョセフ・ジマーマンは二万五千ドルのリスクしか負うつもりはなかった。株の総額の二倍を担保にすれば、全部で七万五千ドル調達できるかもしれないとわかったが、それでも全然足らない。もう一度一ドルに至るまで計算した。現在の保有資産よりも少なくともさらに二十五万ドルを手に入れなければならない。さもなければ店を閉めるかだ。明日の二時には判明する。もし金ができなければ、フィラデルフィア中の元帳に〝回収不能〟と記載されるのだ。

 

 最近あんなに期待が高まっていた人が大変なことになったものだ! ジラード・ナショナル銀行から十万ドル借りていて、これだけはどうしても返済したかった。この銀行はこの街で最も重要な銀行だ。ここの融資をすみやかに返済して銀行の好意をつなぎとめることができれば、何が起ころうと将来の引き立てを期待できるかもしれない。しかし、このときはどうすれば自分にそれができるかわからなかった。しかし考えた末に彼は、ジャッジ・キッチンやジマーマンたちが引き受けることに同意した株を引き渡し、今夜中に小切手か現金を受け取ることにした。それから、今朝、取引所で購入した市債六万ドル分の小切手を渡すよう、ステナーを説得するつもりだった。そこからその銀行に返済する二万五千ドルを差っ引いても、まだ手もとに三万五千ドルを残こすことができる。

 

 この取り扱いには難点が一つある。これをやることによって、クーパーウッドはこの同じ証書でかなり複雑な状況を作りあげていた。午前中に購入して(午後一時までには彼の事務所に届けられていた)のに、彼はそれを本来あるべき減債基金に預けず、それどころかすぐに別の融資を守るための担保に使っていた。破産する恐れがあり、期日内に回収できる絶対の自信がないことを考えれば、これをやったのは危険だった。

 

 しかしクーパーウッドの理屈でいくと、彼には市財務官と結んだ(もちろん違法な)業務の取り決めがあって、これがこういう取り扱いをまかり通らせ、たとえ彼が破産してもほとんど問題にならなくした。さらに、会計は月末まで清算される必要がないとされた。もし彼が破産して証書が減債基金になくても、ありのままに、自分は時間をかける習慣があるので失念していたと言えばよかった。したがって、この未納証書の小切手の受領が、法的、道徳的に正しくなくても、技術的にはできてしまう。市の損失が六万ドル増えるだけだ――全部で五十六万ドルになる。五十万ドルの損失が見込まれることを思えば、そう大差はない。しかし今回、彼の慎重さは必要性と折り合わなかった。ステナーが最終的に三十万ドルの追加支援を拒まなければ、小切手の代金は請求せず、拒めば権利として請求することに決めた。どうせステナーはこの証書が減債基金に入っているかどうかを尋ねようとは考えないだろう。もし尋ねたら、嘘をつくしかない――それだけのことだ。

 

 急いで事務所に戻ると、予想したとおりバトラーのメモを見つけたので、父親の銀行宛に、愛する父親がせっかく口座に入金してくれた十万ドルを振り出す小切手を書いて、バトラーの事務所に届けた。もう一通は、ステナーの秘書のアルバート・スターズからの、今後一切市債を売買するな――追って通知があるまでこうした取引には応じられないと通知する文書だった。クーパーウッドはすぐにこの警告の出所を察知した。ステナーは、バトラーかモレンハウワーに相談して、警告を受け、恐れをなしたのだ。それでも、クーパーウッドは再び馬車に乗り込み、市の財務官事務所に直行した。

 

 クーパーウッドの訪問後に、ステナーはセングスタック、ストロビク、他の人たちとさらに話し合った。全員が、財務関連事項について適切な恐怖が植えつけられたことを確認するために派遣された。その結果は、明らかにクーパーウッドと対立するものだった。

 

 ストロビクはかなり心中穏やかではなかった。ストロビクとウィクロフトとハーモンも市の公金を使っていた――クーパーウッドのような金の使い方を思いつかなかったから、もちろんもっと額は少なかった――嵐が始まる前にどうやって自分たちが借りたものを返そうか悩んでいた。もしクーパーウッドが破産して、ステナーが自己勘定で不足金を出せば、予算全体が調査されるかもしれない。そうなれば自分たちが借りた金も明るみに出てしまう。やるべきことは自分たちが借りたものを返すことだ。そうすれば少なくとも不法行為で罪に問われることはない。

 

 クーパーウッドがステナーの事務所を出た直後にストロビクは忠告した。「モレンハウワーのところに行ってすべてを話してこい。彼がお前をここに就任させたんだ。お前の指名を強く後押ししてな。自分の立場を説明してどうすればいいのか聞いてみろ。多分教えてくれるだろう。自分の持ち株を差し出して助けてもらうんだな。そのくらいのことはしないと。自分じゃ、どうにもならないんだろ。どんなことがあってもクーパーウッドにはもうびた一文貸すんじゃないぞ。あいつがお前を深みにはめたんだ。抜け出すことが到底望めないほどのな。クーパーウッドがあの金を戻すよう口添え願えないかモレンハウワーに頼んでみろ。モレンハウワーならあいつに影響力を及ぼせるかもしれないぞ」

 

 この会話には同じ趣旨の内容がもっとあった。それからステナーはモレンハウワーの事務所に一目散に駆け出した。呼吸もままならないほど怯え、このドイツ系アメリカ人の資本家である指導者の前にすっかりひざまずく覚悟でいた。ああ、もしモレンハウワーさんが私を助けてさえくれたら! もし刑務所に行くことなくここから抜け出せたら! 

 

「ああ、主よ! ああ、主よ! ああ、主よ!」ステナーは歩く間に何度も自分に言い聞かせるように繰り返した。「私はどうすればいいのでしょうか?」

 

 恐ろしい政界のボス、ヘンリー・A・モレンハウワーの態度――過酷な集団で培われたもの――は、まさにこういうすべての厳しい環境にいるすべての人が持つ態度だった。

 

 バトラーが話してくれたことを念頭に置いて、彼はこの状況をどれだけ自分に有利にできるか考えていた。できれば、ステナーが今持っている路面鉄道株を何でもいいから、いかなる形であれ自分の評判を傷つけずに掌握したい。ステナーの株はモレンハウワーのブローカーを通じて取引所で簡単にダミーの名義に変更することができ、最終的にダミーがそれを自分(モレンハウワー)の名義に変更するのだ。しかしステナーは今日の午後、徹底的に締め上げないとならない。市への五十万ドルの彼の負債については何ができるか、モレンハウワーにはわからなかった。クーパーウッドが金を払えなかったら、市は損害を被らなければならなくなる。しかしこのスキャンダルは選挙が終わるまで、隠蔽されなくてはならない。党のいろいろな指導者たちがモレンハウワーが想像する以上に寛大でない限り、ステナーは摘発、逮捕、裁判、財産没収の憂き目にあい、おそらくは刑務所に送られるかもしれないが、いったん世間の騒ぎが収まれば、簡単に知事に減刑させられるかもしれない。クーパーウッドが犯罪に関与しているかどうかは、わざわざ考えなかった。百に一つも関与していまい。ああいう抜け目のない男は、保身は万全だ。しかし、もしクーパーウッドに責任を負わせて、財務官と党関係者の汚名をそそぐ方法が何かあるなら、それに反対するつもりはない。まずはステナーとブローカーの関係の全容を聞きたかった。その間にやるべきことは、ステナーが差し出さねばならないものを没収することだ。

 

 モレンハウワー氏の前に案内されたこの困り果てた市財務官は、たちまち力なく椅子に沈み込んで崩れ落ちた。精神が完全にまいっていた。神経はすり減り、勇気は一息つくのと同じように抜けてしまった。

 

「どうしました、ステナーさん?」モレンハウワー氏は相手が何の用件で来たのかわからないふりをして、印象強く尋ねた。

 

「クーパーウッドさんに貸したお金の件で参りました」

 

「ほお、それはどういうことですか?」

 

「実は、彼は私に、いえ、市に五十万ドルの負債があるのですが、破産しそうで返済できないことが判明したのです」

 

「誰があなたにそんなことを言ったんですか?」

 

「セングスタックさんです。その後、クーパーウッドさんが私に会いに来ました。もっとお金が必要だ、さもないと倒産する、あと三十万ドル借りたいと私に言うんです。彼が言うにはそれがなくてはならないそうです」

 

「ほお!」モレンハウワー氏は印象深く、驚いてもいないのに驚いた様子で言った。「まさか、そんなことをしようとは思っていませんよね。あなたはこのとおり深く関わっているんですよ。もし彼が理由を知りたがったら、私の名前を出しなさい。もう一ドルだって彼に貸してはいけません。もしそんなことをして、この件が裁判になったら、あなたに慈悲を与える裁判所はなくなりますよ。今のあなたのために何かをするのは難しいですね。しかし、もしあなたがこれ以上彼に肩入れしなければ――様子を見るとしましょう。やりようがあるかもしれない、断言はできませんが。しかしいずれにせよ、今後一切この悪業を支えるために市の金を注ぎ込んではいけません。今でさえ手に負えないんですから」モレンハウワーは警告するようにステナーを見つめた。ステナーは体が震えて気分が悪かったが、それでもモレンハウワーの言葉にはどこか慈悲をかすかにほのめかすものがあったため、椅子から滑り落ちるようにしてひざまずき、聖像を前にした信者のような感情を高ぶらせた態度で両手を組んだ。

 

「ああ、モレンハウワーさん」ステナーは息をつまらせて泣き出した。「私は何も悪いことをするつもりはありませんでした。ストロビクとウィクロフトが大丈夫だと言ったんです。そもそもあなたが私をクーパーウッドのところへ行かせたんですよ。私はただ、他の人たちがやってきたと思ったことをやっただけなんです。ボーデさんは、私がやっていたのとまったく同じようにやりました。取り引きした相手はティグ商会です。私には妻と四人の子供がいるんです、モレンハウワーさん。一番下の子はまだ七歳です。家族のことを考えてください、モレンハウワーさん! 私が逮捕されたら家族がどうなるか、考えてください! 刑務所に行くなんてご免です。自分がそんな悪いことをしているとは思わなかったんです――正直、思わなかったんです。手に入れたものはすべて手放します。もし私をこの窮地から救っていただけるのでしたら、株も家も土地も――何もかも――すべて差し上げます。まさか私を刑務所に送らせたりはしませんよね?」

 

 ステナーの分厚い真っ白な唇が震えていた――ぶるぶると――大粒の熱い涙が、さっきまで青白かったのに今は紅潮している頬を伝っていた。ステナーはほとんど信じられない光景を見せたが、それでもこれはとても人間的でありリアルだった。一度でいいから政財界の大物が、自分たちの生活の詳細をつまびらかにしてくれたらいいのだが! 

 

 モレンハウワーは冷静に、深々と考えながら、相手を見た。自分と同じように正直者ではない、勇気も知恵もない弱者が、このようにして、正確には膝をついていないが知的にはひざまずいて、自分に嘆願する姿を何度見ただろう! モレンハウワーにとって人生は、幅広い実用的知識と洞察力を持つ他のすべての人たちと同じように、不可解なもつれだった。いわゆる世の中の道徳や戒律についてはどうだろう? このステナーという男は、自分は正直ではない、モレンハウワーは正直である、と考えた。しかもここで、自分の罪を認めて、まるで正しい汚れなき聖人に行うようにモレンハウワーに懇願している。実際、モレンハウワーは、自分はただ相手よりも抜け目なく、先が見えて、打算的なだけであり、正直者でないことに変わりはないことを知っていた。ステナーに欠けているのは力と知力であってモラルではない。この欠落が彼一番の罪だった。正しいことについてのある種の難解な基準――実生活から完全にかけ離れたある種の行動の理想――を信じる人たちがいる。しかし彼は、そういう人たちがそれを守って自分たちの経済的(道徳的ではない――彼ならそうは言わない)破滅をまぬがれるのを見たことがなかった。彼らはこういう愚かな理想に執着があっても決して重要な現実的人間ではない。常に貧しい、何の特徴もない、取るに足らない夢想家なのだ。たとえそうしたくても、これをステナーに理解させることはできなかったろうし、もちろんやりたくもなかった。これはステナーの妻子にとってあまりにも不幸な出来事だった。夫人だって世の中で成功して何か――惨めな貧乏人よりほんの少しましなもの――になるために、ステナーと同じように懸命に働いたに違いない。そして今、この不幸で複雑な事態が持ち上がって彼らを振り出しに戻さなければならなくなった――このシカゴの火事で。何とも不思議なことだ! もし彼に慈悲深く支配的な神の存在を疑わせる特別なものがあるとすれば、それは晴れ渡った空から予告もなく襲来する嵐――経済、社会、何を例にあげてもいいが――大勢の人たちに破滅と災厄をちょくちょくもたらすもの、だった。

 

「立つんだ、ステナー」しばらくしてから、モレンハウワーは静かに言った。「こうやって感情に流されちゃいけませんよ。泣いてちゃいけません。泣いたって、この問題は決して解決しませんから。少しは自分で考えなければいけません。もしかしたら、あなたの状況はそんなに悪くはないかもしれませんよ」

 

 モレンハウワーが話す間、ステナーは椅子に座り直して、ハンカチを取り出し、絶望に暮れて泣きじゃくっていた。

 

「できる限りのことはしますよ、ステナー。何も約束はしませんがね。結果はどうなるかわかりません。この街には変わった政治勢力がたくさんありますから。あなたを救うことはできないかもしれないが、全力でやってみますよ。あなたは完全に私の指揮下に入らなくてはいけません。まず私に相談しないで何かを言ったりやったりしてはいけませんよ。時々そちらに私の秘書を行かせましょう。何をすべきかは秘書があなたに指示します。私が使いを出さない限り、あなたはここへ来てはいけません。これを完全に理解しましたか?」

 

「はい、モレンハウワーさん」

 

「さあ、涙をふきなさい。泣きながらこの事務所を出て行ってほしくはないですから。自分の事務所に戻ってください。セングスタックを派遣してあなたに会わせます。やるべきことは彼があなたに指示します。きちんと彼の指示に従ってください。そして、私が呼び寄せたら、すぐに来るように」

 

 モレンハウワーは立ち上がった。豪放で、自信満々の、よそよそしい態度だった。ステナーは、相手の言葉の微妙な請け合いのひびきに元気づけられ、ある程度平静を取り戻した。モレンハウワーさんが、あの偉大な実力者のモレンハウワーさんが、この窮地から私を助け出してくれるんだ。結局、刑務所には行かずにすむかもしれない。ステナーはしばらくしてから立ち去って事務所に戻った。泣いたから顔は少し赤いがその他には目立った痕跡はなかった。

 

 四十五分後に、セングスタックがその日二度目の来訪をした。アブナー・セングスタックは小柄で、顔の色が黒く、内反足の短い萎えた右足の下に厚さ三インチの大きな革の靴底を仕込んでいた。少しスラブ系で、知性の高そうな顔には、二つの鋭い、射抜くような、底知れない黒い目が燃えていた。セングスタックはモレンハウワーにぴったりの秘書だった。セングスタックならモレンハウワーの言うがままにステナーを動かせることがひと目でわかる。彼の仕事は、ステナーを誘導して彼の路面鉄道株をすぐに手放させ、バトラーのブローカーのティグ商会を通してそれらを最終的にモレンハウワーの名義に書き換える政治活動の周旋人に引き渡すことだった。ステナーがそれと引き換えに受け取ったわずかばかりのものが、市の金庫に入るのだろう。ティグ商会は、他の誰にも競り合うチャンスを与えずに、この〝取引〟の複雑な問題をうまく処理し、同時に公開市場での取引であるように装うのである。セングスタックはこのとき一緒に、主人のために財務官事務所の内情を入念に調べた――ストロビク、ウィクロフト、ハーモンが借りた金で何をしていたのかを突き止めていた。彼らは別口からも直ちに返済するよう命じられていて、しなければ起訴だった。彼らはモレンハウワーの政治組織の一部だった。そしてセングスタックはステナーに、残りの財産を誰にも渡すな、誰の言うことにも耳を貸すな、中でも特にクーパーウッドの口車には乗るな、と警告して立ち去った。

 

 言うまでもないが、モレンハウワーはこの事態の展開に大喜びだった。クーパーウッドは今、自分に会いに来なければならない状況に陥っている可能性が高い。そうでなくても彼が管理している資産の大半はすでにモレンハウワーの手中にある。もし何らかの手段で残りも確保できれば、シンプソンとバトラーがこの路面鉄道事業のことで自分に相談に来るかもしれない。最大ではないにしても、彼の持ち株は今や誰とでも張り合えるほど大量だった。

 


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